アップライトベース(コントラバス)完全ガイド:構造・奏法・メンテナンス・選び方
アップライトベースとは
アップライトベース(コントラバス)は弦楽器ファミリーで最も低音域を担当する大型の弦楽器で、クラシック楽壇ではコントラバス、ジャズやポピュラー音楽の文脈ではアップライトベースやダブルベースと呼ばれます。主にピッツィカートでリズムとベースラインを支えたり、アルコで旋律や長い音を奏でる役割を担います。
歴史の概略
コントラバスは17世紀末から18世紀にかけて現代の形に発展しました。楽器構造や弦の技術、弓の形状は時代と地域で差があり、ドイツ式とフレンチ式の楽器・奏法の分化がみられます。19世紀から20世紀にかけてオーケストラの低音基盤として確立され、20世紀にはジャズやロックabillyでのピッツィカートやスラップ奏法の普及により演奏技法が拡張されました。
基本的な構造と素材
主な構成要素は胴体(表板、裏板、側板)、ネック、指板、駒、サウンドポスト、テールピース、エンドピン、弦、弓です。表板はスプルース、裏板や側板にはメイプルが多く用いられますが、材質や厚み、アーチの設計が音色を決定します。サウンドポストは内部の短い木材で、音の伝達と構造を支える重要な位置にあります。駒の形状と高さ、サドルの位置も音色と弦高に直接影響します。
サイズとスケール長
コントラバスには複数のサイズがあり、フルサイズでもプレイヤーや地域により差があります。標準的なスケール長は約41インチから43インチ程度(約1040mmから1100mm)で、4弦が一般的です。プロや特殊用途では5弦やCエクステンション付きの楽器も使われ、より低い音域を得るために選ばれることがあります。
弦の種類と音の違い
弦は大きく分けてガット弦、スチールコア弦、合成繊維コア弦に分類されます。ガット弦は温かみのある音色だが湿度や温度に敏感でチューニングが不安定になりやすい。スチールコア弦は耐久性と音のレスポンスに優れ、パンチのある音を出しやすい。合成コア弦はガットの音色に近く、安定性も備えるためクラシックとジャズの両方で人気があります。弦のテンションや巻き材によって音色は大きく変わるため、用途に応じた選択が重要です。
弓とロジン
弓には大きくドイツ式とフレンチ式があり、形状や握り方が異なります。クラシックのアルコ奏法では弓の種類が表現に影響を与えます。ロジンは弓毛と弦の間に摩擦を作り音を出すための必需品で、種類によって粘性やトーンへの影響が異なります。弓の毛替えは定期的に行い、弓の調整は専門家に依頼することが望ましいです。
代表的な奏法とテクニック
- ピッツィカート:親指や指で弦をはじいて低音ラインを演奏する基本技術。ジャズではウォーキングベースラインを作る際に重要。
- アルコ:弓で音を出す奏法で、長い音や表情豊かなフレーズが求められる。ボウイングの位置や圧力、スピードで音色が大きく変わる。
- スラップ奏法:ロックabillyやブルーグラスで用いられる打弦と弦を本体に当てることで打楽器的な効果を生む奏法。
- サムポジションとシフト:高音域では親指を指板上に置くサムポジションや、シフトしてポジションを移動する技術が必要。伝統的にSimandlメソッドやRabbathメソッドなどの体系が用いられる。
ジャンル別の使われ方
クラシックではオーケストラと室内楽の低音基盤として、ジャズではウォーキングベースやソロ、スラップやスラッピングでグルーヴを作る役割で重要です。ポップスやフォークではアコースティックな温かみを加えるために使われます。現代音楽ではエフェクトやマイク録音を併用して新しい音色を追求するケースも増えています。
収音とアンプの実務
収音はピエゾタイプのピックアップ、コンデンサーマイク、ダイナミックマイクなどが用いられます。ピエゾはダイレクトで取り回しが良い反面、低域のピークや不自然さが出やすいことがあるためプリアンプやEQで整える必要があります。マイクは自然な音を拾えるが、フィードバック対策やステージの音量管理が必要です。DIやアンプの選び方は使用場所やジャンルによって変わります。
セッティングとメンテナンス
弦高の調整、駒とサウンドポストの位置、ネック角、指板の磨耗チェックなどが定期的に必要です。特にサウンドポストの位置は音色に大きく影響するため、信頼できるリュートや専門工房での調整を推奨します。保管は湿度管理が重要で、極端な乾燥や多湿は接着部の不具合や割れの原因になります。弦は定期交換し、ボウの毛替えやロジンの選定も怠らないようにしましょう。
練習方法と上達のコツ
スケール練習、アルペジオ、ウォーキングベースのパターン、ピッツィカートとアルコを交互に練習することが基礎になります。メトロノームを用いたタイム練習、ハーモニクスを使って正しい音程を確認する方法、録音して自分のサウンドを客観視することも有効です。移動やシフトの練習はゆっくり正確に行い、段階的に速度を上げていくことが鍵です。
購入時のチェックポイントと価格帯
初めての一本なら楽器の状態、ネックまっすぐ性、駒の高さ、サウンドポストの位置、フレット代わりに磨耗がないか、及び修理履歴を確認しましょう。中古市場では良い個体が比較的手に入りやすいですが、信頼できるショップやリュートの診断を受けることが安全です。価格帯は初心者向けのエントリーモデルからプロ用のハンドメイドまで幅広く、用途や予算に応じて選ぶ必要があります。
代表的な奏者
フランソワ・ラバット、ゲーリー・カー、エドガー・マイヤーはクラシックとクロスオーバーの分野で高く評価されています。ジャズではレイ・ブラウン、ロン・カーター、クリスチャン・マクブライド、ニールス=ヘニング・オルステッド・ペデルセンなど多くの名手が独自のスタイルを確立しています。これらの演奏を参考に音色やフレージングを学ぶとよいでしょう。
よくあるQ&A
- Q. エレキベースと比べて何が違うか? A. 単純な違いは音域と発音原理で、アップライトは共鳴胴により豊かな倍音を持つ一方で、演奏姿勢や物理的負担、アンプ収音の取り回しが異なります。
- Q. 5弦は必要か? A. 楽曲によるが、低い音域が頻繁に必要なら5弦やCエクステンションが有利です。
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参考文献
- Double bass - Wikipedia
- Double bass - Encyclopaedia Britannica
- International Society of Bassists
- François Rabbath official site
- Strings Magazine
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