キヤノン EOS M6 Mark II 徹底レビュー:高解像度APS-Cミラーレスの実力と使いこなし

イントロダクション

キヤノン EOS M6 Mark II は、2019年に発表されたAPS-Cセンサー搭載のミラーレスカメラで、高画素化と高速連写、洗練されたAFを両立した点が特徴です。コンパクトなボディに32.5メガピクセルの高解像度センサーと最新世代の画像処理エンジンを備え、スチルから動画まで幅広い用途で高いポテンシャルを発揮します。本コラムではスペックの解説から実写上の長所短所、具体的な運用のコツや競合機との比較まで、実用視点で深掘りして解説します。

主な仕様の概要

主な仕様を簡潔にまとめると以下のとおりです。

  • センサー:APS-Cサイズ CMOS 32.5メガピクセル
  • 画像処理エンジン:DIGIC 8
  • オートフォーカス:Dual Pixel CMOS AF、最大5481選択点相当のAFカバレッジ
  • 連写性能:最大約14コマ/秒(AF/AE追従、機械シャッター/電子シャッター時)および最大約30コマ/秒(電子シャッターの固定AF RAW連写モード)
  • 動画:4K UHD 30p、フルHD 120p(ハイフレーム撮影)対応
  • シャッター速度:メカシャッター最高1/4000秒、電子シャッター最高1/16000秒
  • 手ぶれ補正:ボディ内手ぶれ補正は非搭載(レンズ内ISに依存)
  • 液晶:3.0インチタッチ式チルト液晶、約104万ドット、上方180度可動
  • 内蔵フラッシュとホットシュー、外付け電子ビューファインダー装着可能(EVF-DC2)
  • 接続:Wi-Fi、Bluetooth、USB-C、マイク入力あり(ヘッドホン端子は非搭載)
  • バッテリー:LP-E17(CIPA基準でおおむね300枚程度)

センサーと画質の実力

32.5メガピクセルという高画素センサは、APS-Cサイズの限られた面積のなかで高精細な描写を可能にします。風景やスタジオ撮影でのトリミング耐性に優れ、細部描写の要求が高い作例にも対応できます。DIGIC 8の処理によりノイズリダクションや色再現が改善され、ISO感度は通常の撮影範囲で十分良好な画質を得られます。ただし高感度域では同等画素数のセンサーと同様にノイズが増えるため、長秒露光や高ISOの条件ではノイズ対策(NR、露出優先の適正化、RAW現像時のノイズ処理など)が必要です。

オートフォーカスと連写性能

Dual Pixel CMOS AF は位相差に近い高速で滑らかな被写体追従を実現し、人物の顔や目の検出もサポートしています。最大5,481点相当のAF領域で画面ほぼ全域をカバーするため、画角内の被写体を逃しにくいのが利点です。

スチル撮影における連写は2モードの使い分けが有効です。AF/AE追従で実用的に使える約14コマ/秒はスポーツや動体撮影でも威力を発揮します。一方で最高約30コマ/秒の電子シャッター連写はAFが固定されるモードですが、決定的瞬間を高確率で捕えるのに便利です。電子シャッター使用時はフリッカーや速い動きでローリングシャッター歪みが出る点には留意してください。

動画機能と実用性

動画機能では4K UHD 30pに対応し、高解像度での動画撮影が可能です。フルHDでは最大120pのハイフレームレート記録ができ、スローモーション表現にも対応します。マイク入力を備えているため外部マイクで音質を向上させられますが、ヘッドホン端子がないため録音のモニタリングは外部レコーダーや別途工夫が必要です。またボディ内手ぶれ補正は搭載していないため、動画撮影時は手持ちではジンバルやレンズ内ISの活用を推奨します。

操作性と筐体設計

EOS M6 Mark II は操作系がコンパクトにまとまっており、グリップは小型ながら保持性は良好です。チルト式のタッチ液晶は自撮りやローアングル撮影に便利で、タッチ操作でのAF選択やメニュー操作も直感的です。ボタン配置やダイヤルは撮影派向けの基本を押さえており、カスタマイズボタンも複数用意されています。

ただし防塵防滴の本格的なシーリングは期待できないため過酷な環境下での使用には注意が必要です。外付けの電子ファインダーを装着することで一眼ライクな運用が可能になりますが、EVFを内蔵していない点は好みが分かれます。

レンズシステムと拡張性

EOS MシリーズのマウントはEF-Mで、コンパクトで質の高い単焦点や広角ズームがラインナップされています。しかし主要メーカーのラインナップと比べると数は限定的で、特に望遠や特殊な光学系で選択肢が少ないのが現実です。その点はEF/EF-Sレンズ用のマウントアダプターを介して既存のキヤノンEF資産を活用できる点でカバーできます。将来的にレンズを拡充したい場合は、アダプターでの運用やサードパーティ製のレンズ選びが重要になります。

実写で感じる長所と短所

  • 長所
    • 高画素センサーによる高解像度描写でトリミング耐性が高い
    • Dual Pixel AF と高速連写で動体撮影にも対応できる柔軟性
    • コンパクトなボディと上方180度チルト液晶で旅行やスナップに向く携帯性
    • 4K動画とフルHD 120pを備え、静止画と動画の両立が可能
  • 短所
    • ボディ内手ぶれ補正がないため手持ちでの安定撮影に不利
    • EF-Mレンズ群は充実度で他社に劣り、将来の拡張に制約がある
    • 防塵防滴性能が限定的で悪天候下での使用に注意が必要
    • ヘッドホン端子がないため動画収録の音声モニタリングに工夫が必要

シーン別の使い方と設定のコツ

以下は実運用で効果的な設定や撮影方法です。

  • 風景・高解像度撮影:三脚を使用して低ISOでRAW撮影。高画素を活かして絞りは被写界深度と回折のバランスを考えF8前後が狙い目。シャープネスはRAW現像で微調整。
  • ポートレート:目の検出AFを活用して瞳にしっかりピントを合わせる。背景ボケを重視するなら単焦点の明るいレンズを使用。高解像度は肌のディテールまで拾うためレタッチ時にノイズや肌処理に注意。
  • スポーツ・動体:AF追従の14コマ/秒を活用。動きの速い被写体は連写で決定的瞬間を狙う。電子シャッター30コマ/秒はAF固定なので状況で使い分け。
  • 動画:外部マイクで音質を補強、手持ち撮影時はジンバルやレンズISを併用。4K撮影時は発熱やカード書き込み速度を考慮し、長時間録画は計画的に。

競合機との位置付け

E M6 Mark II の主な競合はソニーや富士フイルムのAPS-Cミラーレス機です。高画素と高速AFのバランス、コンパクトさを重視するユーザーには魅力的な選択肢です。一方でレンズ資産の豊富さやボディ内手ぶれ補正、カラープロファイルの好みなどで他社機を選ぶ理由もあります。目的と撮影スタイルに応じて選定するのが良いでしょう。

まとめとおすすめのユーザー像

EOS M6 Mark II は高解像度と高速連写、優れたAFをコンパクトなボディで実現したバランスの良いAPS-Cミラーレスです。風景やポートレート、ハイレゾを活かしたトリミング撮影を重視する写真愛好家や、4K動画も併用したいハイブリッドユーザーに特に向いています。逆にボディ内手ぶれ補正や豊富なレンズ群、防塵防滴性能を重視するプロ用途では注意が必要です。

参考文献