筑紫歌都子:伝統を革新した箏曲の女流先駆者

本記事では、筑紫歌都子(本名・坂本カツノ、1904年7月30日–1984年10月28日)がいかに伝統箏曲の枠を越え、多彩な作品群と教育活動を通じて戦後日本の箏曲界に革新をもたらしたかを詳述する。彼女は14歳で箏を学び始め、西洋楽器や作曲技法も修得した上で、18歳からの作曲活動を経て1949年に「筑紫会」を設立、生涯で300曲以上を生み出し、そのうち170曲を1969年までに作品化した。箏のみならず尺八や多重奏を駆使した多様な編成、さらにレコード11集をリリースしたレコーディング活動を通じ、箏曲の近代化に大きく貢献したのである。

生涯と歩み

幼少期と音楽教育

1904年、山口県都濃郡鹿野町(現・周南市鹿野)に竹田カツノとして生まれる。5歳で三味線を手にし、「天才少女」と称されて早くも音楽的才覚を示したと言われる。14歳で箏に本格的に取り組み、並行してバイオリン・大正琴・ピアノも習得し、西洋音楽と邦楽双方の素養を身につけた。

作曲家としての出発

18歳の頃から箏の作曲を開始し、戦前の伝統的レパートリーに留まらない独創的な作品を次々と発表。戦中・戦後の混乱期にも創作を続け、1949年に福岡市を拠点として箏曲団体「筑紫会」を創設し、自身の作品と指導者を全国へ派遣するプラットフォームを築いた。

筑紫会の設立と活動

「筑紫会」は創設から数年で福岡市南区若久に本部を構え、北海道から沖縄、さらには海外支部も展開。会員数はのべ約5万人に及び、伝統箏曲の普及・技術継承において国内最大級の規模を誇る。師範免状制度には歌都子自身の小曲(15曲)を修得し合格した者に交付されるコースも設けられ、その教育メソッドは今日まで受け継がれている。

創作活動と代表作

多彩な曲目と編成

生涯で300曲以上を作曲し、その一部は邦楽Wikiに一覧化されている(例:「藍と紫」「青い熱帯魚」「秋風の歌」「川霧」「雲」ほか数百曲)。箏ソロのみならず、十七絃や尺八を含む合奏、さらには現代的な多重録音技法を用いた作品にも挑戦した。

主要作品の特徴

  • 「流れ」:箏と尺八の清冽な重奏で清流を描写し、様々な演奏会でも取り上げられている。高等学校の邦楽部門全国大会では「流れ」を演奏し、優秀賞を獲得するなど教育現場でも定番となっている。
  • 「落葉する頃」:箏2重奏で秋の寂寥感を表現した名曲。楽譜は「筑紫歌都子作品集 巻二」に収録され、多くの邦楽アンサンブルでも演奏されている。

レコード作品とディスコグラフィー

1969年以降、キングレコードなどから11集のレコードをリリースし、自作曲を広く普及。Discogsにはアルバムやシングルの詳細情報が掲載され、現代でもコレクター間で高い評価を受けている。

受賞と栄誉

1972年に藍綬褒章を受章し、1976年の日米文化交流ではサンフランシスコ市より「友好の鍵」を贈られた。1979年には福岡市文化賞を受賞し、地方文化振興への貢献を高く評価された。

遺産と現代への影響

歌都子の作品は今なおコンサートで演奏され続け、2022年には鹿野の漢陽寺で「筑紫歌都子先生のふるさとで奏でる琴・尺八コンサート」が開催された。彼女の楽曲は邦楽検定や師範免状の試験曲、各地の邦楽部演奏レパートリーとして定着し、その音楽教育的価値は揺るがない。


参考文献

  1. https://hougaku.ohju.net/wiki/song/composer_dtl.html?composer=%E7%AD%91%E7%B4%AB%E6%AD%8C%E9%83%BD%E5%AD%90
  2. https://www.chikushikai-koto.jp/

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