Sun City:アパルトヘイトに抗議するアーティスト連合が刻んだ歴史的アンセム

概要
1985年10月25日にEMIマンハッタン・レコードからリリースされた『Sun City』は、スティーヴン・ヴァン・ザント(リトル・スティーヴェン)を中心に結集した「Artists United Against Apartheid」による唯一のアルバムです。
本作は南アフリカの人種隔離政策アパルトヘイト下にあるリゾート「サンシティ」での公演を拒絶する声明として制作され、ロック、ヒップホップ、ジャズ、レゲエなど多彩なジャンルのアーティスト約50名以上が参加している点が最大の特徴です。タイトルナンバー「Sun City」はスティーヴン・ヴァン・ザント作詞・作曲、ヴァン・ザントとアーサー・ベイカーによるプロデュースのもと、強いメッセージ性を帯びたプロテストソングとしてシングルカットされました。
背景と結成
アパルトヘイトへの国際的非難
1980年代中盤、南アフリカ共和国では「アパルトヘイト」と呼ばれる合法的な人種隔離政策が極限まで推し進められ、国際社会からの文化的・経済的制裁が強まっていました。特に、政府が設置したバントゥスタン(黒人居留地)の一つであるボプタツワナのサンシティは白人観光客向け高級リゾートとして批判の的となり、多くのアーティストが同地でのコンサート出演を自粛する動きが広がっていました。
アーティストの連帯
こうした流れを受け、スティーヴン・ヴァン・ザントはジャーナリスト兼映像作家のダニー・シェクター、プロデューサーのアーサー・ベイカーらと共に「Artists United Against Apartheid」を結成しました。ブルース・スプリングスティーン、ボブ・ディラン、ボノ、マイルス・デイヴィス、ピーター・ガブリエル、ジミー・クリフなど、70名近い著名アーティストが参加し、音楽を通じて政治的メッセージを発信することを目指しました。
制作とトラック構成
楽曲の意図とメッセージ
リード曲「Sun City」は「I… I… I… Ain’t gonna play Sun City!(俺たちはサンシティでは演らない)」という決然としたコーラス・フックが特徴的な抗議ソングです。他にも、ピーター・ガブリエル&シャンカールによる「No More Apartheid」、ラップとジャズを融合させた「Revolutionary Situation」、ボノとローリング・ストーンズのキース・リチャーズ&ロン・ウッド共演による「Silver and Gold」など、多彩なサウンドを収録した全7トラック構成となっています。
参加アーティストの顔ぶれ
本プロジェクトにはロックからワールドミュージックまで計50名以上のアーティストが参加しています。ブルース・スプリングスティーンやボブ・ディラン、ジャクソン・ブラウン、Run-D.M.C.、ルー・リード、マイルス・デイヴィス、ジミー・クリフらがレコーディングに名を連ね、ジャンルや世代を超えた連帯感を音楽で表現しています。
レコード仕様とビジュアル
フォーマットとプレス
オリジナルLPは33回転12インチステレオ仕様で、カタログ番号062-2404671としてアメリカをはじめとする各国で発売されました。初回プレスにはアフリカ大陸をバックに「Sun City」を大きくあしらったインサートが封入されており、コレクターズアイテムとしても高い価値を誇ります。
ジャケットデザイン
ジャケットは黒を基調にオレンジと緑のアクセントを配し、アフリカ大陸のシルエットを背景に用いることで「サンシティ拒否」の強い意志をビジュアルに表現しています。
反響とチャート成績
英国シングルチャート
リードシングル「Sun City」はイギリスOfficial Singles Chartで最高21位を記録し、8週間にわたりチャートインしました。ミュージックビデオはMTVやBETで頻繁に放映され、抗議のメッセージを大衆に広く届ける手段として大きな役割を果たしました。
文化的ボイコット運動への貢献
本作は売上の一部をアパルトヘイト反対運動に寄付しており、その音楽的影響力によって「文化的ボイコット」の機運をさらに高めるきっかけとなりました。
後年の評価とレガシー
音楽史への位置づけ
『Sun City』はリリース後も反アパルトヘイト運動の象徴として語り継がれ、Rolling Stone誌の「1980年代ベスト100アルバム」リストにも選出されています。音楽を通じた政治的メッセージ発信の先駆例として、文化研究や教育現場で取り上げられ続けています。
ドキュメンタリーと振り返り
1985年に制作されたドキュメンタリー『The Making of Sun City』では、レコーディングの舞台裏や参加アーティストの思いが詳細に映像化されました。近年ではHBOドキュメンタリー『Stevie Van Zandt: Disciple』で当時の政治的決断や活動家としての歩みが語られ、音楽と政治の融合が持つ普遍的意義が改めて評価されています。
以上のように、『Sun City』は当時の国際世論を動かした象徴的なプロジェクトであり、アーティストたちの連帯が放った強烈なメッセージは、今日においても「声を上げること」の重要性を問い続けています。
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