ボブ・ブルックマイヤーの代表曲と名盤LPで味わうモダンジャズの真髄
ボブ・ブルックマイヤーとは
ボブ・ブルックマイヤー(Bob Brookmeyer)は、ジャズ界において特にユニークな存在感を放ったトロンボーン奏者および作編曲家です。1929年アメリカ・カンサス州生まれ、2011年に惜しくも亡くなりましたが、彼の残した音楽は今なお多くのジャズファンやミュージシャンに愛されています。彼の代表的なスタイルは、ヴァルヴトロンボーン(バルブトロンボーン)を用いた独特の柔らかくクリアな音色と、革新的な作編曲にあります。
なお、今回のコラムではボブ・ブルックマイヤーの代表曲を中心に、特にレコードでのリリースに焦点を当てて解説を進めます。CDやサブスクリプションの音源サービスではなく、オリジナルのLPレコードやアナログ盤での代表作を探求することで、当時のジャズシーンをリアルに感じ取っていただきたいと思います。
ボブ・ブルックマイヤーの代表曲とレコード情報
1. 「Blues Suite」
「Blues Suite」は、ボブ・ブルックマイヤーの作曲力とバンドリーダーとしての腕前がよく示された作品で、1950年代後半のモダンジャズの重要な一片です。この曲は、彼が率いたセクステットやビッグバンドで演奏され、ブルースを基調としながらも複雑なハーモニーとリズム変化が組み合わさっており、深い充実感を与えます。
この「Blues Suite」は、特に1957年にリリースされたLP『The Dual Role of Bob Brookmeyer』(Vik Records, VLP 201)に収録されています。本アルバムは彼のトロンボーンとピアノの二刀流をフィーチャーした名盤であり、ハードバップとモーダルなイディオムを織り交ぜたサウンドが特徴です。ヴィンテージのオリジナルプレスは米国盤で、現代のジャズバイヤーにとっては貴重なコレクションアイテムとされています。
2. 「Open Country」
ボブ・ブルックマイヤーのキャリア中期の傑作に「Open Country」があります。この作品は彼の作編曲能力が高度に結実し、当時のジャズビッグバンド編成の可能性を拡げた作品として評価されています。
「Open Country」は、1960年代にヴァーヴ・レコードからリリースされたアルバム『Brookmeyer』に収録されています。特にこのアルバムは、ブルックマイヤーのヴィンターフェルトのメンバーやローランド・カークらと共に収録され、彼のモダンジャズ寄りながらもドラマティックな編曲が堪能できる一枚です。原盤はヴァーヴのオレンジレーベルで希少価値が高く、コレクター筋に人気です。
3. 「The Summary」
「The Summary」はボブ・ブルックマイヤーの代表的大作の一つであり、彼のカウント・ベイシー・オーケストラでの活動と並行して制作されました。クラシック的な構成美とジャズの即興性を融合したこの作品は、ブルックマイヤーの作編曲家としての優れたセンスが光っています。
この曲が含まれるアルバム『7 x Wilder』(Mercury Records, MG 20749)は1961年にリリースされ、ブルックマイヤーがあのアレグザンダー・ワイルダーの曲をテーマにしたアレンジ集です。このレコードはモノラル・プレスとステレオ・プレスの両方が存在しており、アナログファンの間でも人気が高い作品です。オリジナルUK盤や国内盤は特に価値が高く、状態の良いものは高額取引されることもあります。
4. 「Spring is Here」
スタンダード曲の一つ「Spring is Here」では、ブルックマイヤーの編曲によるバージョンが特筆されます。彼はこの曲を自身のアルバム『The Dual Role of Bob Brookmeyer』の中で演奏しており、そのトロンボーンの軽やかな響きと細やかなアレンジが際立っています。
この曲のオリジナルレコードは冒頭で触れたVikレコード盤に収録され、1957年のアナログ盤で聴く際の音質の温かさと自然な響きは格別です。シンプルながら高度なジャズ理論に基づくブルックマイヤーのアプローチが感じられ、多くのジャズ愛好家にとっては必携のディスクといえます。
5. 「My Funny Valentine」
ボブ・ブルックマイヤーは「My Funny Valentine」も美しくアレンジしています。彼の作品の多くがそうであるように、オリジナルのメロディを尊重しつつ、自身のジャズ的解釈を加えることで、新しい息吹を吹き込んでいます。
この録音が聴けるのは、1955年にリバーサイド・レコードからリリースされたアルバム『Bob Brookmeyer Quartet』です。トロンボーンとピアノが絡み合う落ち着いたバラード調のアレンジは、意外なほどオーセンティックでありながら、どこか新しく感じられます。このLPのオリジナルプレスはジャズのマニアの間で高く評価されています。
ボブ・ブルックマイヤーのレコード収集の魅力
ボブ・ブルックマイヤーのレコードは、ジャズの歴史的側面と音楽的価値を兼ね備えています。彼の作品は1950年代から1960年代にかけてのモダンジャズの黄金期と重なり、当時のアナログ録音ならではのダイナミックレンジや音の暖かさが存分に楽しめます。
また、彼の作品は複数の大手レーベルからリリースされているため、ラベルデザインやマトリクス番号、プレス国による違いなど、レコード収集の面白みを最大限に味わうことができます。特にビニールの状態やオリジナルジャケットの保存状態がプレミアム価値に直結するため、ジャズコレクターには長く愛される存在となっています。
まとめ
ボブ・ブルックマイヤーの代表曲は、「Blues Suite」「Open Country」「The Summary」「Spring is Here」「My Funny Valentine」など、多彩で奥深いジャズの世界を開いてくれます。これらの曲は主に1950年代末から1960年代初頭にかけてのLPレコードで楽しむことができ、ジャズ史における重要な位置を占めています。
彼のトロンボーンの音色やユニークな作編曲を味わう上で、オリジナルのレコードで聴くことは特別な体験です。音楽そのものの魅力はもちろんのこと、当時のジャズシーンの情熱や空気感を感じ取りたい方には、ぜひボブ・ブルックマイヤーのアナログレコードを探してみることをお勧めします。


