ケニー・ドーハム完全ガイド|代表名盤とアナログレコード購入の極意

ケニー・ドーハムとは?ジャズ界の隠れた名トランペッター

ケニー・ドーハム(Kenny Dorham、1924年8月30日 - 1972年12月5日)は、アメリカのジャズ・トランペッターであり、ハードバップを代表する名プレーヤーの一人です。ビバップ後期からハードバップ、さらにはモード・ジャズの発展期に活躍し、多くの名盤に参加、リーダー作も高く評価されています。

彼の演奏は繊細かつリリカルで、バディ・リッチやジーン・クルーパ、チャーリー・パーカーといった巨匠たちと共に活動した経験を持ちながらも、あえて自己主張を控えめにすることで独自の味わいを表現してきました。評価はやや地味ながらも、ジャズ・ファンの中では根強い支持を得ています。

レコード中心に振り返るケニー・ドーハムの代表的な名盤

ケニー・ドーハムの作品は数多くありますが、レコードで楽しむ際に特に注目される「名盤」と呼ばれる作品を中心に、その魅力を解説します。現在サブスクリプションやCDでの再発も多いものの、原盤のアナログレコードでの音質やジャケットの雰囲気は格別です。

1. Aface(1960年、Blue Note)

ケニー・ドーハムの代表作として最も名高い一枚です。Blue Noteレーベルからリリースされたこのレコードは、モダンジャズの先端を行くハードバップの名品として評価されています。メンバーは以下の通りで、黄金期Blue Noteらしい強力なラインナップとなっています。

  • ケニー・ドーハム(トランペット)
  • ジョー・ヘンダーソン(テナーサックス)
  • ハーランド・パーケンス(ピアノ)
  • ピーター・ロウヴェンソン(ベース)
  • ロイ・ヘインズ(ドラムス)

収録曲の中では「Una Mas」や「Wishing-Well」などが特に人気。キャッチーなメロディと絶妙なアレンジが楽しめる一枚です。音質に定評のあるオリジナルプレス(STレーベルのBlue Note)を探すジャズ・コレクターも多く、音の暖かみがよく伝わってきます。

2. Whistle Stop(1961年、Blue Note)

こちらもBlue Noteからのリリース。ドーハムの作曲能力と演奏の両方が堪能できるバンドリーダー作で、ビリー・ハーパー(テナーサックス)やショーン・バベット(ピアノ)が参加。全体にアグレッシブでありながらチャーミングな作品です。

  • ケニー・ドーハム(トランペット)
  • ビリー・ハーパー(テナーサックス)
  • ショーン・バベット(ピアノ)
  • パーシー・ヒース(ベース)
  • アート・テイラー(ドラムス)

オリジナルのヴァイナルは、「Blue Note 4000シリーズ」の一枚として今も人気で、特にマトリクス番号やカッティングの違いに詳しいコレクターから高値で取引されます。

3. Quiet Kenny(1960年、New Jazz / Prestige)

Blue Note以外のレーベルであるNew Jazz(Prestige傘下)からのリリース。タイトルの通り、ドーハムの「控えめで繊細」な一面を掘り下げた一枚として知られています。このアルバムは音楽的に洗練されており、またレコードジャケットのシンプルさも魅力。

  • ケニー・ドーハム(トランペット)
  • トミー・フラナガン(ピアノ)
  • スコット・ラファロ(ベース)
  • バディ・リッチ(ドラムス)

とりわけトミー・フラナガンのピアノとスコット・ラファロのベースが絡み合う静謐な雰囲気はアナログレコードで聴くと引き立ちます。オリジナル盤のマトリクス違いは、音の厚みや定位の違いがファンの間で議論されるところです。

4. Matador(1962年、Uptown Records)

名盤ながらもBlue Note以外のレーベルからのリリースとなった意欲作。ケニー・ドーハムがTODD・カウフマンらとともに制作し、ややラテン音楽の影響を強く感じさせるトラックが多いのが特徴です。サウンドには熱気と深みがあり、当時の録音技術の落ち着いた音質も魅力です。

  • ケニー・ドーハム(トランペット)
  • ワイク・フリード(ピアノ)
  • チャーリー・ワッツ(ベース)
  • ロイ・ヘインズ(ドラムス)

非常に入手が難しいオリジナルレコードとして知られ、コレクターの間で価値が高まっています。ジャケットも独特で、ビジュアル面でもジャズとしての芸術性が感じられます。

ケニー・ドーハムのレコード購入時のポイント

ケニー・ドーハムの名盤はレコード市場で人気が高まっているため、購入の際にはいくつかのポイントに気をつけたいです。

  • オリジナルプレスを狙うこと:録音の温度感や深みはオリジナル盤のアナログサウンドならでは。Blue NoteのSTレコードやNew Jazzのオリジナル盤は特に価値があります。
  • ジャケットのコンディション確認:ヴィンテージ盤はジャケットにダメージが出やすいので、購入前に状態をよくチェックしましょう。ジャケットの良し悪しで相場が変わることも珍しくありません。
  • マトリクス番号やプレス情報に注意:マトリクス違いのプレスが複数あることも多いため、音質にこだわる場合は細かい情報を確認しましょう。マトリクス番号やプレス先の刻印はレコードのラベルやインナーに記載されています。
  • 信頼できるショップやコレクターから購入する:レコードの状態や真贋を見極められる店舗や専門のコレクターと繋がりを持つことも大切です。

まとめ:ケニー・ドーハムのアナログレコードが持つ音楽的・文化的価値

ケニー・ドーハムは、その演奏も作曲も洗練されたジャズミュージシャンとして、いまなお多くのジャズ愛好家に愛され続けています。彼のレコードは、音質の良いオリジナルプレスで聴くことにより、その繊細かつ複雑なトランペットの響きが生き生きと蘇り、当時のジャズシーンの息吹を感じることができます。

また、ケニー・ドーハムのレコードジャケットやアートワークも、ジャズの歴史の一片として文化的価値を持っています。収集の醍醐味は単に音を聴く楽しみにとどまらず、当時の時代背景や音楽業界の動きも同時に学べる点にあります。

ぜひ、アナログレコードを通じてケニー・ドーハムの世界に触れ、その奥深いジャズの世界を堪能してみてください。彼の名盤は単なる音楽作品を超え、ジャズの黄金時代を象徴する貴重な遺産として、今後も輝き続けることでしょう。