安全衛生推進者とは?選任基準・役割・必要資格をわかりやすく解説|小規模事業場における安全管理の要


安全衛生推進者とは

**安全衛生推進者(あんぜんえいせいすいしんしゃ)**とは、
労働安全衛生法に基づき、労働者数が一定規模未満の小規模事業場において、
安全・衛生に関する取り組みを推進するために選任される担当者のことです。

労働安全衛生法では、原則として事業場の規模に応じて
「安全管理者」や「衛生管理者」を選任する義務がありますが、
常時労働者が50人未満の事業場では、代わりに安全衛生推進者を置くことが認められています。

中小企業や建設・製造・運送・清掃業など、小規模事業場における安全管理の中核的存在です。


法的根拠

安全衛生推進者は、労働安全衛生法第12条および労働安全衛生規則第12条の2で定められています。

これらの法令では、
常時使用する労働者の数が一定数に満たない事業場においても、
労働者の安全と健康を確保するため、
安全衛生推進者または衛生推進者を選任する義務があると定めています。


選任が必要な事業場

安全衛生推進者が必要となる事業場の基準は以下の通りです。

区分業種労働者数選任すべき者
製造業・建設業・運輸業・電気・ガス・熱供給・水道業など常時 10人以上50人未満安全衛生推進者
商業・金融・保険・サービス業など常時 10人以上50人未満衛生推進者

つまり、労働者が10人以上50人未満の事業場では、安全衛生推進者の選任が必要となります。
(10人未満の場合は法的義務はありませんが、任意で選任することが望ましいとされています。)


安全衛生推進者の主な役割

安全衛生推進者は、事業場における安全衛生活動の中心として、
**「安全衛生管理者が行う業務を代行または補助する役割」**を担います。

1. 安全管理に関する業務

  • 作業手順書の整備・安全点検の実施
  • 労働災害防止のための**危険予知活動(KY活動)**の推進
  • 機械設備・保護具などの安全使用の指導
  • 災害発生時の原因究明と再発防止策の立案

2. 衛生管理に関する業務

  • 作業環境の点検(照度・換気・温湿度など)
  • 健康診断の実施および結果管理の補助
  • 労働者の健康保持・メンタルヘルス対策の推進
  • トイレ・休憩室など職場衛生施設の整備点検

3. 教育・啓発活動

  • 新入社員への安全衛生教育
  • 月例安全ミーティングの企画・運営
  • 労働者への安全意識向上活動の実施

4. 労働基準監督署との対応補助

  • 労働安全衛生関係の書類整備・提出
  • 行政指導・監査時の対応補助

選任できる人の条件

安全衛生推進者に選任できるのは、次のような条件を満たす人です。

  • 事業場の実務に精通していること(現場責任者・主任クラスなど)
  • 安全衛生に関する基礎知識を有していること
  • 社内で他の従業員に対して指導・助言ができる立場であること

特別な国家資格は不要ですが、厚生労働省や労働局が実施する
「安全衛生推進者養成講習」(2日間程度)を受講しておくと、より実務に役立ちます。

また、建設業や製造業では、安全衛生推進者が現場代理人や職長と兼任しているケースも多く見られます。


選任手続きと届出

安全衛生推進者を選任した場合、
労働基準監督署への届出は不要ですが、社内で選任記録を残すことが望まれます。

選任日、氏名、職位、業務内容などを社内文書として明示し、
安全衛生活動計画とあわせて保管しておくとよいでしょう。


建設業における安全衛生推進者の役割

建設業では、現場ごとに作業内容や協力会社が異なるため、
安全衛生推進者は現場環境に応じた安全衛生管理の実務担当として重要な存在です。

具体的には次のような活動を行います。

  • 各作業前のKYミーティングや安全集会の主導
  • 作業員の安全装備(ヘルメット・安全帯など)の点検
  • 現場内の危険箇所の巡視と改善指導
  • 労働災害発生時の初期対応と報告

現場代理人や元方安全衛生管理者と連携し、
「現場レベルでの安全文化」を形成するキーパーソンとなります。


違反した場合の罰則

安全衛生推進者を選任しなければならない事業場で
これを怠った場合、労働安全衛生法第120条に基づき、

  • 50万円以下の罰金

が科される可能性があります。
特に労働災害が発生した際には、管理体制の不備として行政指導の対象となることがあります。


まとめ

安全衛生推進者とは、小規模事業場における安全衛生活動を推進する中心的な存在です。
労働者が10〜50人規模の事業場では、法律により選任が義務付けられており、
安全管理者や衛生管理者がいない職場の安全・健康管理を担います。

現場の安全衛生意識を高めるには、
経営者・現場責任者・安全衛生推進者の三位一体での活動が不可欠です。
小さな現場であっても、安全対策の基本は同じ――
安全衛生推進者の存在が、労働災害ゼロへの第一歩となります。