ヒープとは?仕組み・種類・使われるアルゴリズムを初心者にもわかりやすく解説【優先度付きデータを高速処理】

データ構造の中でも、特に「優先度をつけたデータ管理」に強いのが ヒープ(Heap) です。
ヒープは最小値や最大値を効率よく取り出すことができ、ソートアルゴリズム、タスクスケジューリング、最短経路探索など、ITシステムの内部で大活躍します。

この記事では、ヒープとは何か、その仕組み、種類、実際にどう使われるのかを初心者向けにわかりやすく解説します。


◆ ヒープとは?

ヒープ(Heap)とは、
優先順位付きのデータを効率的に扱うための木構造を使ったデータ構造
です。

ヒープには 2種類あります。

● 最小ヒープ(Min Heap)

  • 親ノードの値が子ノードより常に小さい
  • 最小値をすぐに取り出せる

● 最大ヒープ(Max Heap)

  • 親ノードの値が子ノードより常に大きい
  • 最大値をすぐに取り出せる

この「親が常に優先度の高い値を持つ」という性質がヒープの核です。


◆ ヒープの特徴

● 1. 完全二分木で構成される

ヒープは「完全二分木」という構造を持ちます。
つまり、左から順にノードが詰められていく形。

● 2. 優先度の高い値を高速に取り出せる

ヒープの最大の強みは、
最小値(または最大値)を O(1) で取得できる
ことです。

取り出し(pop)や追加(push)でも
O(log n) の高速処理が可能です。


◆ ヒープと他のデータ構造の違い

データ構造特徴
配列(Array)ランダムアクセスは速いが、最小値検索は遅い
リスト(List)探索は遅い
スタック(Stack)LIFOで優先度管理には向かない
キュー(Queue)先入れ先出し(FIFO)
ヒープ(Heap)最小・最大値の取得が高速で、優先度管理に最適

ヒープは 「優先度順にデータを扱いたい」場面で最強です。


◆ ヒープの主な用途

● 1. 優先度付きキュー(Priority Queue)

最も一般的な用途です。
タスクに優先度をつけて取り出す処理などで利用。

例:

  • OSのタスクスケジューリング
  • イベント処理
  • 優先度の高い要求から実行したい時

● 2. ダイクストラ法(最短経路探索)

地図アプリや経路探索で使われる最短経路アルゴリズム。
探索する候補ノードをヒープで管理することで高速化できます。


● 3. ヒープソート(Heap Sort)

ヒープを使ったソートアルゴリズム。

  • 計算量 O(n log n)
  • 最悪ケースでも速度が落ちない
  • メモリ消費が少ないのが特徴

● 4. k番目に小さい値/大きい値の探索

「配列の中で3番目に大きい値を探したい」
といった処理でヒープが活用されます。


● 5. スケジューリングや予約管理

優先度や期限の早いものを取り出す用途に最適。


◆ 最小ヒープと最大ヒープの違い

種類親ノードの値用途
最小ヒープ子より小さい最短経路探索、優先度が小さい順の処理
最大ヒープ子より大きい最大値の高速取得、ランキング処理

◆ ヒープの構造(イメージ)

(例:最小ヒープ)

        1
      /   \
     3     5
    / \
   7   9
  • 親が必ず小さい
  • 左から順に詰められる完全二分木

◆ ヒープのメリット

  • 最小・最大値の取得が高速
  • 優先度キューとして使える
  • ソートや探索アルゴリズムで必須
  • データ量が増えても効率が良い

◆ ヒープのデメリット

  • 任意の値を探すには向かない(線形探索になる)
  • データの並びはソートされていない
  • ランダムアクセスには弱い

ただし、最小値・最大値を扱う用途では非常に強力です。


◆ まとめ:ヒープは“優先度の高いデータ管理”に最適なデータ構造

ヒープ(Heap)は、

  • 最小・最大値を高速に取り出せる
  • 完全二分木を利用するデータ構造
  • 優先度付きキューの中心技術
  • ソートや最短経路探索で活躍
  • 大規模データでも高速処理が可能

という特徴を持ち、アルゴリズムやシステム内部で欠かせない重要な存在です。