Fairport Conventionの歴史と名盤『Liege & Lief』:英国フォーク・ロックの金字塔を聴く

Fairport Conventionとは?

Fairport Convention(フェアポート・コンヴェンション)は、1967年にイギリスで結成されたフォーク・ロックバンドです。英国の伝統的なフォーク音楽とロックの要素を融合させる先駆的な存在として知られており、フォーク・ロックのジャンルを確立したバンドの一つとされています。特に1970年発表のアルバム『Liege & Lief』は、ブリティッシュ・フォーク・ロックの金字塔と呼ばれており、多くのミュージシャンに影響を与えました。

結成と初期の活動(1967年~1969年)

Fairport Conventionは、ロンドン出身のシンガーソングライターであるリチャード・トンプソンとシンディング・グループのメンバーだったサイモン・ニコルによって結成されました。初期のメンバーにはリチャード・トンプソン(ギター、ボーカル)、シモーヌ・ドゥモーリ、レイ・プラウト、アシュレイ・ハッチングスなどがいました。彼らはアメリカのフォークやブルースに影響を受けつつも、イギリスの伝統音楽に根ざした独自の音楽スタイルを模索し始めます。

1968年、デビューアルバム『Fairport Convention』をリリース。続く2ndアルバム『What We Did on Our Holidays』(1969年)、そして3rdアルバム『Unhalfbricking』(1969年)でも、彼らはロックとフォークの融合を試みました。特に、『Unhalfbricking』には後にフォーク・ロックの名曲となる「A Sailor's Life」が収録されており、この曲をきっかけに彼らの音楽はより伝統的な英フォークに寄っていくことになります。

伝統英フォークへの回帰と『Liege & Lief』(1969年)

1969年、バンドはメンバー交代を経て、デイヴ・スワブリック(フィドル)、リチャード・トンプソン、サンディ・デニー(ボーカル)、アシュレイ・ハッチングス(ドラム)、サイモン・ニコル(ベース)という布陣に落ち着きます。このラインナップでは、イギリスの伝統的なフォークソングを積極的に取り入れ、ロックバンドとして演奏するスタイルが確立されました。

この変化は同年末の4thアルバム『Liege & Lief』で結実します。このアルバムは、バンジョーやフィドル、ハードなギターリフを駆使しながら、英国の古いバラッドやダンス曲を大胆にアレンジした内容で、その革新性と完成度の高さから「トラディショナル・ブリティッシュ・フォーク・ロック」の金字塔とされます。代表曲「Matty Groves」「Tam Lin」などは、今日でもフォークロックの名演として語り継がれています。

レコード時代の主要作品とその特徴

Fairport Conventionのレコード作品は、バンドの音楽性の変遷を追ううえで重要な意味を持ちます。以下は、彼らのレコード時代における代表作とその特徴を紹介します。

  • Fairport Convention (1968)
    デビュー作。アメリカンフォークやカントリー音楽の影響を感じさせる内容で、バンドが模索の段階にあったことが伺えます。カバー曲が多く、自作曲は少なめ。
  • What We Did on Our Holidays (1969)
    ジョニ・ミッチェルの「Flying on the Ground Is Wrong」などを収録。バンドのフォーク寄りの姿勢が強まりつつも、まだアメリカンフォークに影響されたロックバンド色が濃く残っています。
  • Unhalfbricking (1969)
    フォークとロックが最も自由に融合された作品で、サンディ・デニーの加入によって歌唱力が飛躍的に向上。リチャード・トンプソン作の楽曲や伝統曲のアレンジが並び、世界観が深化しています。
  • Liege & Lief (1969)
    フィドルやバンジョーを大々的に取り入れた英国伝統音楽回帰の代表作。現在もヴィニールとして高く評価される、英国フォーク・ロックを象徴するレコードです。
  • Full House (1970)
    リチャード・トンプソンが脱退した後の作品。バンドはこの時期も伝統曲のカバーを中心に、ライブ感溢れる演奏を特徴としています。
  • Angel Delight (1971)
    バンドの音楽から主導的なフィドルサウンドが一旦減少し、よりバンドのオリジナリティが出た作品。アシュレイ・ハッチングスのドラムプレイが目立ち始めました。

レコードの人気やコレクター市場での評価

Fairport Conventionの初期レコードは、今日でもヴィンテージレコードとして高い人気を誇ります。特に1969年の『Liege & Lief』は英国フォークの名作として、オリジナル盤はコレクターの間で非常に希少価値が高いです。ジャケットのデザインも当時のフォーク・ロックレコードの中で非常に特徴的で、オリジナルのリムショット盤やステレオ・モノラル盤の違いによって価格差が出ることもあります。

また、初期のLPレコードは録音の質やマスタリングも大きく異なるため、ヴィニール愛好家の間では音質にも注目が集まっています。特に1970年代初頭の英Elektraレーベル盤は、サウンドの透明感が高く評価され、欧米のみならず日本のフォーク・ロックファンにも多く流入しました。

レコード収集のポイントと注意点

Fairport Conventionのレコードを収集する際にはいくつかのポイントがあります。特に初期のアナログ盤においては、市場に流通している盤の状態にばらつきがあるため、以下の点を確認するとよいでしょう。

  • 盤質のチェック: スクラッチやノイズの有無を注意深く見極めること。ヴィンテージ盤は経年劣化もあり、音質に大きく影響します。
  • ジャケットのオリジナリティ: 特に初期プレスの紙質や印刷の鮮明さで、その盤が「ファーストプレス」かどうかを区別可能です。初版はしばしば限定的な部数しか存在しません。
  • モノラル盤とステレオ盤の違い: 初期作品はレコードの仕様としてモノラル盤とステレオ盤が存在。音の広がりや聴きごたえが違うため、好みや収集目的に応じて選びましょう。
  • レアなシングルやEP: フェアポート・コンヴェンションはアルバム以外にも、レコードシングルやEPを一部リリースしています。これらはアルバム収録曲の異なるバージョンや、未収録曲を含むこともあるため、マニアの間で注目を浴びています。

まとめ

Fairport Conventionは、英国フォーク・ロックの歴史において欠かせない存在であり、そのレコード作品は現在でも音楽ファンから高い評価を受けています。特にレコード(ヴィニール)での鑑賞は、当時の録音の雰囲気をリアルに体感できるため、音楽史に興味を持つ人やヴィンテージ盤を楽しむリスナーにお勧めです。彼らの代表作『Liege & Lief』をはじめとする数々のLPは、単なる音楽作品以上に文化遺産としての価値も持っており、今後も世界中のコレクターや音楽愛好家に支持され続けることでしょう。