イエス(Yes)1970年代の名盤をレコードで聴く:初期プレスの見分け方とコレクター必携盤ガイド
イントロダクション — レコードで聴く「Yes」の名盤
イエス(Yes)はプログレッシブ・ロックを代表する英国のバンドであり、1970年代に発表した一連のアルバムは今なお多くのファンやレコード・コレクターにとって「必携」の名盤です。本稿では、とくにレコード(アナログ)に焦点を当てて、代表的なアルバム群の音楽的意義、オリジナル盤や初期プレスにまつわる情報、ジャケットやマスタリングの特徴、コレクター向けのチェックポイントなどを詳述します。音源としてのCDやサブスクよりも、レコードという物理媒体での体験を優先して扱います。
The Yes Album(1971) — ブレイクスルーとアナログの魅力
リリース年:1971年。通算3作目となる『The Yes Album』は、イエスが商業的・音楽的に大きな飛躍を遂げた作品です。ジョン・アンダーソン(Vo)、クリス・スクワイア(B)、スティーヴ・ハウ(G)、トニー・ケイ(Key)→(本作ではケイが一部貢献)、ビル・ブラフォード(Dr)といったメンバー構成が確立し、「Yours Is No Disgrace」「Starship Trooper」などが収録されています。
レコード面での特徴としては、オリジナルの英国/米国初期プレスが入手困難で、初期のプレスはダイナミックレンジと低域の安定感が良いと言われます。ジャケットは比較的シンプルで、米英でのプレス違い(ラベルデザインやインナースリーブの有無など)が存在するため、コレクターはラベル表記とプレス国を確認することが重要です。
Fragile(1971) — Roger Dean とバンドの黄金期の始まり
リリース年:1971年。『Fragile』はバンドとしての完成度が高まり、短いソロ曲群と組曲的な楽曲が共存する作風で知られます。アルバム・アートワークはロジャー・ディーン(Roger Dean)が手掛け、以降のイエス作品のヴィジュアル・アイデンティティを確立しました。代表曲「Roundabout」はシングルカットされ、FMラジオやステレオ放送で多用されました。
アナログに関しては、初回プレスのジャケットは折り返し(gatefold)ではなくスリーブ形態の違いや、ポスター/歌詞カードの有無などバージョン差が存在します。英国初期盤は音場の広がりが良いとの評価が多く、ドラムやベースの定位感、アコースティック楽器の立ち上がりが自然に聴こえるため、アナログ・マニアには人気です。
Close to the Edge(1972) — プログレの金字塔をレコードで聴く
リリース年:1972年。収録時間が長い組曲(Side A 全体がタイトル曲)と2曲の大作で構成される本作は、楽曲の構造美と演奏技術、音響的な深みを兼ね備えた名盤です。制作ではイージー・オッフォード(Eddie Offord)がエンジニア/共同プロデューサーとして携わり、バンドの音像を的確に捉えました。
アナログ・リスナーにとって『Close to the Edge』は特に魅力的です。長尺の組曲をLPの片面に収めるためのカッティング(カッティング・エンジニアの技術)が音質に大きく影響します。オリジナルの初期プレスはダイナミックなピーク処理と豊かな中低域を保っている例が多く、後年のリマスター盤や再発と比べて「エネルギー感」が優れると評価されることがあります。ジャケットはロジャー・ディーンの描く幻想的な風景が活きており、ゲートフォールド仕様でアートを大きく楽しめる点もアナログならではです。
Tales from Topographic Oceans(1973) — 賛否を呼んだ二枚組の物語
リリース年:1973年。4曲から成る2枚組アルバムで、ジョン・アンダーソンの宗教的・哲学的テーマが全面に出た作品です。音楽的には壮大で瞑想的なパートが多く、ライブ再現の難しさもあって評価が分かれる作品ですが、レコードでの体験は格別です。
アナログでは当時の二枚組LPという物理的制約の中で曲間や音圧がコントロールされており、オリジナル盤は立体的なサウンドステージと深い低域を示すことが多いです。豪華なゲートフォールドとロジャー・ディーンの大判アートワークはコレクション価値を高めています。初期盤にはライナーノートや歌詞カードが封入されていることがあり、付属品の有無で評価が分かれます。
Relayer(1974) — キーボードの変化とジャズ寄りのアプローチ
リリース年:1974年。リック・ウェイクマン脱退後、パトリック・モラーツ(Patrick Moraz)がキーボードに加入した時期の作品で、ジャズ的な要素やリズムの複雑性が増したのが特徴です。代表曲「The Gates of Delirium」などはドラマティックで長尺、アナログでのダイナミクス再現が重要となります。
アナログで聴く際は、モラーツのピアノやシンセの表情、パーカッションの余韻がしっかり出るプレスを選ぶと良いでしょう。オリジナルのジャケット・アートもロジャー・ディーン作品で、ビジュアルと音の両方でコレクター心を刺激します。
レコード(アナログ)収集の実務的アドバイス
- オリジナル初期盤を狙う理由:初期マスターや初期カッティングは当時のアナログ機器で直接処理されたため、ある種の「勢い」が残っていると評価されることが多い。ただし経年劣化で盤の状態は個体差が大きいため、盤質(VG+/NMなど)を必ずチェックする。
- 盤・ジャケットの確認ポイント:レーベル(英国盤と米国盤でデザイン差がある)、マトリクス/ランアウト(刻印番号)、ゲートフォールドやインナーの有無、付属のポスターや歌詞カードの有無を確認する。これらは再発との識別に有効。
- サウンド比較:同タイトルでも再プレスやリマスターにより音像が変わる。一般に「初期オリジナル盤」「24bitリマスター」「アナログ・リマスター(高品質カッティング)」など、志向に応じて選ぶと良い。事前にYouTubeの比較やオーディオ専門サイトのレビューを参照するのが有効。
- クリーニングと再生機器:良好な針先(コンディション)、適切なターンテーブル速度、アームのバランスとアンチスケート調整はイエスの複雑なアレンジを忠実に再生するために重要。静電気除去やレコード洗浄も音質向上に寄与する。
なぜ「レコード」で聴くべきか
Yesの1970年代作は楽器のアタックや残響、そしてミックスの立体性が楽曲の魅力と直結しています。CDやデジタルは利便性やノイズ面で優れる場合もありますが、アナログLPは音の「温度感」や微小な歪みが音楽表現としての深みを与えることがあり、とくに組曲的・牧歌的なパートのあるイエス楽曲との相性は良好です。また、ロジャー・ディーンの大判アートワークを手に取り、ジャケットを開いてレコードを針で再生するという物理的な儀式自体が、アルバムを深く味わう行為になります。
コレクター向けの具体的推奨盤(入手の優先順位)
- Close to the Edge(英国オリジナル初期プレス)— 音像の密度とダイナミクスが魅力で、コレクター人気が高い。
- Fragile(初期プレス、付属ポスターや歌詞カードがあるもの)— シングル「Roundabout」の存在も価値を後押し。
- The Yes Album(初期プレス)— バンドの代表曲が集中し、歴史的価値が高い。
- Tales from Topographic Oceans(二枚組初期盤、付属品完備)— アートワークとスリーヴの状態が重要。
- Relayer(初期プレス)— パトリック・モラーツ期のサウンドを聴くには最適。
ファクトチェックと参考情報の活用法
盤の真贋や初期盤の特定には、Discogsのマトリクス情報や写真、各国のレーベル差異の記録が有用です。リマスターや再発の音質比較はオーディオ専門サイトやオーディオファイルのレビュー記事を参照すると良いでしょう。また、ジャケット・アートやクレジットの正確な情報は公式発表やアルバムのライナーノート、Roger Deanの公式サイトなどで確認するのが確実です。
まとめ
イエスの1970年代に残した名盤群は、レコードという物理媒体で聴くことで楽曲の構造美や音場の広がり、アートワークの価値までもが一体となって体験できます。オリジナル初期盤はコレクションとしての価値が高く、それぞれのプレスや付属品の違いを把握することで、より充実したアナログ体験が得られます。購入前には必ず盤の状態、マトリクス刻印、付属品の有無をチェックし、可能であれば視聴やレビュー比較を行うことをおすすめします。
参考文献
- The Yes Album — Wikipedia
- Fragile — Wikipedia
- Close to the Edge — Wikipedia
- Tales from Topographic Oceans — Wikipedia
- Relayer — Wikipedia
- Roger Dean Official Site — Art and Covers
- Yes — Discogs(プレス情報・写真)
- Yes — AllMusic Biography
- Vinyl LP Mastering Guide — Sound On Sound(マスタリングとカッティング解説)
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