デイヴ・クラーク・ファイヴ(The Dave Clark Five)レコード完全ガイド:名シングル・英米盤の見分け方とコレクター必携ポイント
はじめに — 「デイヴ・クラーク・ファイヴ」とレコード文化
デイヴ・クラーク・ファイヴ(The Dave Clark Five、以下DC5)は、1960年代の英国ビート・ムーヴメントを代表するバンドの一つです。ビートルズと並び称されるほどの人気を誇り、特にシングル中心の活動でヒットを重ねました。本稿ではCDやサブスクではなく、当時のレコード(シングル盤、LP)を中心に、名盤・名シングルの魅力、レーベルやプレスの違い、コレクターとして押さえておきたいポイントを詳しく解説します。
バンド概要と「トッテナム・サウンド」
DC5はデイヴ・クラーク(ドラム、バンド主宰)、マイク・スミス(ボーカル/キーボード)、レニー・デイヴィソン(ギター)、デニス・ペイトン(サックス/ギター)、リック・ハクスリー(ベース)という編成で知られます。特徴はドラムが前面に出る力強いリズムと、ペイトンのサックスを含めた厚みのあるアレンジ。しばしば「トッテナム・サウンド」と呼ばれる彼ら固有の音像は、シングルの短いフォーマットでも強烈に表現されていました。
名シングル/名曲(レコード収集の出発点)
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Glad All Over(1964) — DC5を一躍トップに押し上げた代表曲。英国のコロンビア(EMI)からリリースされたオリジナル・7インチは、当時の紙スリーブやプロモ盤などバリエーションがあり、初期プレスの状態次第でコレクター価値が高くなります。
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Bits and Pieces(1964) — 短く切れの良いリフとコール&レスポンスが印象的。英盤・米盤でのラベルデザインやB面の組み合わせが異なるため、目録確認が重要です。
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Can't You See That She's Mine(1964) — メロディックなポップ・チューン。プロモ盤や初回盤の有無、そしてモノラル盤のサウンドの方が人気が高い傾向があります。
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Over and Over(1965) — 米国市場で大ヒット(全米チャート1位を獲得)。米エピック(Epic)からのシングルは米盤コレクターの格好の対象です。米盤はジャケットやラベルの仕様で価値が変わります。
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Catch Us If You Can / Having a Wild Weekend(1965) — 映画『Catch Us If You Can』(英題)/『Having a Wild Weekend』(米題)の主題歌にあたる楽曲。サウンドトラックLPやシングルは、映画関連ということでコレクション性が高く、特にオリジナル・サウンドトラックLPは注目されます。
代表的LPとヴァイナル事情(英国盤・米国盤の違い)
60年代の英国バンドは、英盤LPと米盤LPでトラックリストやジャケットが大きく異なることが多く、DC5も例外ではありません。収録曲の選定、モノラル/ステレオの違い、さらに米国では独自に編集されたベスト的なLPが流通していたため、同じアルバムタイトルでも中身が異なるケースが多数あります。
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Glad All Over(LP) — 英盤と米盤で異なるカットが混在。英コロンビア(EMI)初期プレスのモノラル・マスターは音質やミックスの面で評価が高く、コレクター需要も高いです。
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Having a Wild Weekend / Catch Us If You Can(サウンドトラックLP) — 映画のバージョンやインストゥルメンタルの差異、さらにはサントラLPが米盤で編集されたものはレア度が上がります。映画関連のプロモ盤や写真が使われたジャケットも存在します。
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各国プレスの違い — 英国(Columbia/EMI)、米国(Epic)、日本(当時は東芝音楽工業など)といった各国プレスはプレス品質、マトリクス、ラベルデザインが異なります。日本盤は歌詞カードや帯(OBI)が付くケースがあり、コレクターの人気が高いです。
プレス/音質で注目すべきポイント
レコード・コレクターとしてDC5の盤を評価するとき、以下の点をチェックしてください。
- モノラル vs ステレオ:60年代のオリジナル録音は多くがモノラルミックスを重視して作られていました。初期のシングルやLPのモノ盤は、ステレオ化された再発盤より音像が自然で評価されます。
- ラベルとレーベル表記:英Columbiaや米Epicのラベルカラーやロゴの違い、カタログ番号の書き方で初回プレスか再発かを判断できます。プロモ盤(白ラベルや「Not For Sale」表記)の存在も確認しましょう。
- ジャケットのバリエーション:写真やコピーの違い、内袋やインナーの有無、映画サントラならフィルム写真が使用されたバージョンなど、ジャケット違いが価格に影響します。
- マトリクス/ランアウトコード:盤のランアウト(溝外側)に刻まれたマトリクスやカッティング番号は非常に重要です。初期カッティング、リマスタリング、後期のプレスの識別に使えます。
プロモ盤・特殊盤・海外プレスの探し方
コレクターが狙うのは単なる「曲」だけでなく、当時の流通状況を反映した希少盤です。米国のプロモ盤(白ラベルやスリップ)や、各国限定ジャケット、日本プレスの帯付き、さらにオランダやドイツなどの欧州盤はデザインが独自で、コレクション性が高いものがあります。特に映画関連のサントラLPは、プロモや劇場配布盤が存在する場合がありますので要チェックです。
デイヴ・クラークとマスター所有の問題 — 再発事情
DC5の音源は長年にわたりデイヴ・クラーク自身がマスター音源と権利を管理しており、そのためCD化やデジタル配信が限定的だった時期があります。これはコレクターにとって複雑な事情を生み、オリジナル・アナログ盤の価値を相対的に高めました。近年は再評価や断続的な再発もありますが、オリジナル・プレスのオリジナル・サウンド(当時のモノミックス)にしかない魅力は依然としてコレクターの中心的な価値です。
保存・再生の注意点(レコードに優しい取り扱い)
- 長期間の保存は直射日光・高温多湿を避け、立てて保管する。
- 古い盤は表面ノイズや微細なチリがたまりやすいので、プレイ前に専用のレコードクリーナー/ブラシでの清掃を推奨。
- プレーヤーのカートリッジや針圧設定を適正に保つことで針飛びや摩耗を抑え、盤面を保護する。
おすすめの「集めるべき」レコードリスト(入門〜中級)
コレクションのテコ入れにおすすめの盤を用途別に挙げます。
- 入門(名曲を楽しむ):英Columbiaのオリジナル7インチ「Glad All Over」/「Bits and Pieces」などのモノ盤。
- 中級(音質・盤質重視):英盤オリジナルLPのモノカッティング(ジャケット良好)。
- 上級(希少性を狙う):米エピックのプロモ盤、映画サントラのオリジナル・プレス、帯付き日本盤など。
まとめ — レコードで感じる「60年代の力」
デイヴ・クラーク・ファイヴの魅力は、短い楽曲に凝縮されたエネルギーと、レコードというメディアが最も映える瞬間にあります。シングル主体でヒットを連発した彼らの作品は、オリジナル・アナログ盤で聴くことで当時の空気感(ミックスの鮮度、モノラルの定位感、ジャケットのアートワーク)をより深く味わえます。コレクターとしては、盤の状態とラベル・マトリクスの確認が最重要。英盤・米盤・日本盤の違いを楽しみながら、自分だけの「名盤」を見つけてください。
参考文献
- The Dave Clark Five — Wikipedia
- The Dave Clark Five — Discogs(ディスコグラフィ、リリース情報)
- The Dave Clark Five — AllMusic(バイオグラフィ、レビュー)
- Rock & Roll Hall of Fame — The Dave Clark Five(殿堂入り情報)
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