The National(ザ・ナショナル)をレコードで聴く:アルバム別おすすめ盤とプレス・購入チェックガイド
はじめに — The National と「レコード」で聴く意味
The National(ザ・ナショナル)は、繊細なバリトン・ボーカル、陰影のあるアレンジ、緻密なリズム感で知られるアメリカのインディー・ロック・バンドです。彼らの楽曲は音場の広がり、低域の深さ、アンサンブルの細かなニュアンスが重要であり、これらはアナログ・レコードで聴くことで一層際立ちます。本稿では、The National の作品の中から「レコードでの再生に特に向く」おすすめアルバムを中心に、盤選びのポイント、プレス/マスタリングに関する注意点、そして中古・新品で良い個体を見つけるための実践的なアドバイスまで詳しく解説します。
レコードで聴くべき理由 — 音のディテールと空間表現
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ダイナミクスの再現:The National の楽曲は静かなパートから大きなビルドアップまで振れ幅が大きいため、針を通したアナログのダイナミックレンジで感情の起伏が伝わりやすい。
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低域の自然さ:ベースやキックはレコードの再生で自然な弾力や余韻が出やすく、楽曲の骨格が明瞭になる。
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定位と空間情報:弦楽器やアンビエントなシンセ、リバーブの残響はアナログ再生で「空間感」として感じやすい。
おすすめレコード(アルバム別の解説とレコード選びのポイント)
Alligator(2005)
オルダーポップ期から脱皮し、The National を広く知らしめた転機的作品。リズム隊の押し出しとマット・バーニーのドラミングがアルバム全体を牽引します。レコードで聴くと、ギターの歪みの粒立ちや歌の息づかいが非常によく出ます。
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おすすめプレス:初回プレス(ファーストプレス)は当時のミックス/マスタリングをそのまま反映しており「オリジナルの空気感」を重視するなら狙い目です。一方、後年のリイシューで 180g の重量盤やリマスター盤が出回っていることもあり、盤質やコンディションを重視するなら良好なリイシューも選択肢。
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中古での注意点:初回盤は経年でノイズが出ることがあるため、盤面のノイズチェック(視覚的なスリキズ/カビ)を忘れずに。
Boxer(2007)
The National の代表作のひとつ。構成美とメロディの確かさ、そして陰影の深いプロダクションが特徴です。レコードで聴くと、マット・バーニーの低域の存在感やブライアン・デヴォートのギターの余韻が豊かに再生されます。
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サウンドの特徴:中低域に情報が多く、アナログの密度感が楽曲の持つ切なさを増幅します。
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プレス選び:盤反りやノイズを避けるため、封入物(インナー・スリーブ)の有無やジャケットのコンディションもチェックを。高音域の艶やかさを重視するなら良好な盤面の 180g 再発を検討。
High Violet(2010)
よりスケール感のある編曲と、メランコリックながら壮大なサウンドが特徴の作品。ストリングスやアンビエント処理が多用され、空間表現が鍵になります。アナログ再生では残響の広がりやステレオイメージの膨らみを味わえます。
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注目点:ストリングスや重ね録りの細部は、針とカートリッジの解像度がものを言うため、良好な針先(スタイラス)と適切なトラッキングフォースが重要。
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盤の選び方:マスタリング違い(オリジナル vs リマスター)がある場合はソースを確認。オリジナルのアナログ感を重視するか、ノイズ低減や音像の整ったリマスターを選ぶかで好みが分かれます。
Trouble Will Find Me(2013)
成熟したバンドの技巧と落ち着いた表現が光るアルバム。音像がやや乾いており、ボーカルのディテールとプレイの隙間が魅力。レコードではボーカルの前後感がより自然に感じられます。
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おすすめプレス:サードパーティによる再発ではなく、オリジナル・マスターからのプレスや公式の重量盤が音質的に安心。盤面の静粛性(バックグラウンドノイズの少なさ)を重視するなら状態の良いプレスを選びましょう。
Sleep Well Beast(2017)
エレクトロニクスやサウンドデザインの比重が上がった作品。アンビエントな層やサイドチェイン的な処理が多く、音像の描写力が試されます。レコードで聴くとサウンドスケープの立体感が増します。
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再生のコツ:深い低域や複雑なレイヤーを正確に出すには、低域の処理が得意なスピーカーと適切なターンテーブル設定が重要です(サブソニックフィルターやターンテーブルのトーンアーム調整など)。
I Am Easy to Find(2019)
コラボレーションとオーケストレーションが前面に出た大作性の高いアルバム。ゲストVo.やクワイア的な表現が増え、音場の広がりが作品の魅力です。レコードでは各声部の距離感やハーモニーの重なりが分かりやすくなります。
デラックス/限定盤、カラーヴァイナルの扱い方
近年は限定カラー盤やボーナストラックを収録したデラックス盤が出回ります。コレクション性は高いですが、音質はプレス毎にばらつきがあるため「見た目」と「音」のどちらを優先するかを明確にしましょう。見た目重視なら限定カラー盤、音質重視なら重量盤や良好なオリジナル盤(状態良し)を狙うのが定石です。
レコード購入時のチェックリスト(中古/新品ともに)
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盤面の視覚チェック:目立つスクラッチや反り(warping)がないか。
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マトリクス/ランアウト:プレスごとのエディション確認に使える(Discogs 等で照合)。
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プレス重量:180g 表示の盤は一般的に歪みが少なく安定する傾向。ただし一概に音が良いとは限らない。
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付属物:内袋(antistatic sleeve)、歌詞カード、ダウンロードコードの有無も確認。
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試聴可能なら短時間でも試聴する:ノイズ、チャンネルバランス、ターンオーバー時のポップノイズ等をチェック。
保管・再生のコツ — 長く良い音で聴くために
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直射日光・高温多湿を避ける:盤反りやジャケットの劣化を防ぐ。
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立てて保管:重ね置きを避けることでプレッシングの変形を抑制。
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定期的なクリーニング:ブラシ/レコード洗浄液で埃を落とす。新しい盤でも工場由来の微小な粉やオイルが残ることがある。
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針・カートリッジのメンテナンス:針先の摩耗は音質低下・盤損傷の原因。
どの版を買うべきか?:実用的な優先順位
1) 音質第一なら「良品のオリジナル・プレス」または公式リマスターの 180g。2) 見た目・コレクション性なら「限定カラー盤」。3) 予算重視なら状態の良い中古の一般プレス。各アルバムごとに市場に出回るプレスが異なるため、購入前に Discogs や各ショップの出品情報でマトリクス番号やプレス年を確認する習慣をつけると良い結果を得られます。
購入場所と相場感
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新品:公式ショップ、インディー・レコード店、国内の輸入盤ショップ。限定盤は早期に枯渇することがある。
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中古:ディスクユニオン、レコードショップの委託棚、オンラインのマーケットプレイス(eBay、Discogs 等)。盤のグレード(Mint, Near Mint, Very Good+)を必ず確認。
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相場は盤の状態、エディション、希少性で大きく変動。人気作(Boxer、Alligator、High Violet)では良品のファーストプレスが高値になる傾向。
まとめ
The National の作品は楽曲のディテールと空間表現が魅力であり、レコードで再生することでその良さがより明瞭になります。各アルバムごとに「どの要素を重視するか」(オリジナルの空気感/音の静粛性/見た目の限定性)を決めて、マトリクスやプレス情報、盤の状態をチェックして購入するのが最善です。また、再生機材と保管環境を整えることが、アルバム本来の音を長く楽しむための鍵になります。良いプレスに出会えれば、The National の繊細で力強い音世界をアナログならではの温度感で堪能できるはずです。
参考文献
- The National - Wikipedia
- Alligator (The National) - Wikipedia
- Boxer (The National) - Wikipedia
- High Violet - Wikipedia
- Trouble Will Find Me - Wikipedia
- Sleep Well Beast - Wikipedia
- I Am Easy to Find - Wikipedia
- The National - Discogs
- Official website — The National
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