ロッド・スチュワート名曲をアナログで楽しむ|初版7インチ・LPの見分け方とコレクター必携盤
はじめに — ロッド・スチュワートと「レコードの時代」
ロッド・スチュワートは1960年代末から現在に至るまでロック/ポップ/ソウルの境界を横断して活躍してきたシンガーであり、そのキャリアは“レコード(アナログ)”の黄金期と深く結びついています。本稿では代表的な名曲を中心に、歌の由来や録音エピソードのみならず、当時のシングル/アルバムのレコード・リリース状況、コレクター視点の盤情報に重点を置いて語ります。CDやストリーミングよりもレコード(主に7インチシングル、LP、プロモ盤、12インチなど)の物的情報を優先して解説します。
Maggie May — 生々しさが刻まれた一枚(1971)
「Maggie May」は1971年に発表され、ロッド・スチュワートを国際的なスターに押し上げた代表曲です。曲はロッドとマーティン・クイッテントン(Martin Quittenton)の共作で、フォーク/ロック寄りのアレンジにレイ・ジャクソン(Lindisfarne)のマンドリンが印象的な彩りを与えています。シングルは当時の45回転7インチでリリースされ、B面にはティム・ハーディンのカバー「Reason to Believe」が収められている代表的なA/Bサイド仕様でした。
レコード面で注目すべき点:
- 初期の英国プレスは一般的な黒盤7インチ(45 RPM)で、レーベルは発売国によって異なります。UKでは当時の配給/契約先の表記があるため、それぞれの国別プレスを比較する楽しさがあります。
- オリジナルのプロモーショナル(モノラル)盤やラジオ局配布用の「promo」スタンプ入りはコレクターズ・アイテムとして人気があります。
- マンドリンの音色やギターのニュアンスが豊かに収録されているため、オリジナル・マスター盤や初期の良好な溝が残るプレスを聴くと録音の空気感がより鮮明に味わえます。
You Wear It Well / オリジナル・シングルの魅力(1972)
「You Wear It Well」は1972年に発表され、英国で高い評価を得たシングルです。ロッドの語りかけるようなボーカルと、控えめながら堅実なバンド演奏が特徴で、当時のロック/フォーク・シーンの流れを汲んでいます。7インチでのシングル流通が基本で、ジャケット(ピクチャー・スリーブ)の有無が価格差に影響します。
レコード・コレクションの実戦ポイント:
- UKオリジナル・スリーブ(ピクチャー・スリーブ)付きは流通量が限られ、保存状態によっては中古市場での評価が高くなります。
- プレスのプラッター(label)デザインやマトリクス(runout)刻印をチェックすると、初期プレスか再発かが判別できます。初期マトリクスは音の解像感が高いことが多いです。
Handbags and Gladrags / 初期カヴァーとLP発掘の面白さ
「Handbags and Gladrags」はマイク・ダーボ(Mike d'Abo)作の曲で、ロッドは1969年のソロ・デビュー期に取り上げました。収録されたアルバムは1969年のデビュー作(英題:An Old Raincoat Won't Ever Let You Down/米題:The Rod Stewart Album)で、LPとしての入手価値が高い一枚です。
LP特有の楽しみ:
- 初期LPのオリジナル・ジャケットはアートワークやインナースリーヴの状態が評価に影響します。海外初版の帯(日本盤なら帯付き)があると更に価値が上がります。
- プレス国によって音質傾向が異なり、英国初版、米国初版、日本盤(しばしば高音質カッティング)を聴き比べるのもコレクションの醍醐味です。
Sailing — カバー曲が大ヒットに(1975)
「Sailing」はスコットランドのSutherland Brothers(サザーランド・ブラザーズ)による曲のカバーで、ロッドのバージョンは1975年に発表されました。シンプルで壮大なアレンジが特徴で、海を想起させるような歌唱表現が広く支持されました。シングルと同時にラジオ向けプロモ盤や、後年のコンピレーションLPやリイシューでも頻繁に再登場しています。
盤としての見どころ:
- 当時のシングルは通常7インチでリリースされましたが、長尺のオーケストレーションを活かす目的でアルバム収録音源の評価が高く、オリジナルLPの良好なプレスは音場が広く感じられます。
- 海にまつわる歌詞のため、アートワークで海やヨットをあしらったピクチャー・スリーブがあるプレスは視覚的にもコレクタブルです。
Tonight's the Night (Gonna Be Alright) — 大ヒットとプロモ盤(1976)
「Tonight's the Night (Gonna Be Alright)」は1976年発表のシングルで、特にアメリカで大ヒットしました。セクシャルな内容や夜の雰囲気を抑えたメッセージ性が話題となり、当時のラジオで頻繁に流されました。7インチシングルでの流通が主でしたが、米国ではステレオ/モノラルのプレス差により放送回路向けのモノラル盤も見られます。
コレクター注意点:
- 初期の米国盤プロモは「For Promotional Use Only」等の表記が入り、流通量が少ないため価値が出やすいです。
- 曲の長さの違い(シングル・エディット/アルバム・バージョン)を確認すること。7インチでは短めに編集されたものが一般的です。
Da Ya Think I'm Sexy? — ディスコ時代の12インチ(1978)
1978年の「Da Ya Think I'm Sexy?」は、ロッドがディスコ要素を大胆に取り入れた曲で、世界的ヒットとなりました。ディスコ・フロア対応として12インチ・シングルが作られ、ダンス用のロング・ヴァージョンやリミックスが収録されたプレスが流通しました。12インチはDJ需要に応えたフォーマットで、アナログならではの重低音再生が生きる一方、初期プレスのサウンドが好まれています。
レコード収集の視点:
- 12インチのオリジナル・プロモ(ダブル・ヴァージョン、カッティング・エディット含む)はクラブDJやコレクターに人気があります。
- 派手なディスコ期のアートワークや見開きスリーブ、インサートが付属することがあり、状態次第でプレミアムがつきます。
Baby Jane 〜 80年代のヒットと音作り(1983)
「Baby Jane」は1983年のシングルで、ロッドにとって80年代の代表的なポップ・チューンの一つです。アナログLPや7インチとして流通し、80年代ならではのプロダクション(シンセサイザーや打ち込み的なリズム)をアナログで聴く楽しさがあります。日本盤の帯付きLPやシングルは、当時の国内流通仕様として品質や付属物が充実し、コレクション性が高いです。
レコードで楽しむための実践的ガイド
ロッド・スチュワートの作品をアナログで楽しむ/収集する際のポイントをまとめます。
- 初版の見極め:ジャケット、レーベル、マトリクス刻印(runout)を確認。初期プレスは音のダイナミクスが豊かなことが多い。
- プロモ/DJ盤の存在:ラジオ局配布のプロモ盤やディスコ期の12インチは流通量が少なく、状態次第で高値になりやすい。
- 国別プレスの違い:英国盤、米国盤、日本盤でカッティング傾向が異なる。日本盤はしばしばマスターの作りが丁寧で「帯」や歌詞カードが付くことが多い。
- 保存のコツ:内袋を交換し、針圧やクリーニングに気をつければオリジナルの音質を長く維持できる。アナログは目に見えるメンテナンスが効く点が魅力です。
- 再発と見分ける:リマスター/再発盤は音の傾向が異なる場合がある。再発表記や年号、カタログ番号をチェック。
収集の楽しみと歴史的文脈
ロッド・スチュワートの名曲群は、歌詞や歌い方、編曲の変遷を通じて1970年代のロック〜ソウル〜ディスコの流れを可視化してくれます。シングルのA面/B面を順に聴くことで、当時のラジオ局やレコード店の流通文化、リスナーの楽しみ方が見えてきます。また、オリジナルの7インチやLPを手に取る経験は、デジタル配信では得られない物理的な「歴史の手触り」を与えてくれます。
おすすめの探し方
- ディスコグラフィ・サイト(Discogsなど)でマスター番号やリリース年を確認し、オリジナル盤の写真と照合する。
- 国内の中古レコード店や海外のオークション、レコード・フェアで実盤をチェック。表面の状態(キズ、ノイズ)とジャケットの状態は必ず現物で確認する。
- オリジナル・ピクチャー・スリーブやプロモ盤は希少性が増すため、予算に応じて狙うとコレクションの満足度が高まる。
おわりに — レコードを通じて聴くロッド・スチュワート
ロッド・スチュワートの楽曲は、アーティストの声質や表現力が前面に出るため、アナログレコードというフォーマットと非常に相性が良いです。シングルのA/BサイドやLPの並び、初版プレスの音色を意識して聴くことで、楽曲の新たな側面や当時の制作背景がより鮮明になります。レコード収集は「所有する喜び」と「音を通じた時間旅行」の両方を提供してくれます。ぜひオリジナル・プレスを探し、迷宮のように広がるロッドのディスコグラフィをアナログで辿ってみてください。
参考文献
- Rod Stewart Official Site
- Rod Stewart — Wikipedia
- Maggie May — Wikipedia
- Sailing — Wikipedia
- Da Ya Think I'm Sexy? — Wikipedia
- Tonight's the Night (Gonna Be Alright) — Wikipedia
- Rod Stewart Biography — AllMusic
- Rod Stewart — Discogs(ディスコグラフィ/盤情報)
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っておりますので是非一度ご覧ください。
https://everplay.base.shop/
また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery


