圧送ポンプとは?仕組み・用途・メリットを建築設備の視点からわかりやすく解説
圧送ポンプとは
圧送ポンプとは、汚水や雑排水を圧力をかけて遠方または高所へ送り出すためのポンプシステムです。
重力では流せない現場で使用され、建築・土木の分野では非常に重要な設備のひとつです。
一般的な排水は「自然流下(勾配で流す)」が基本ですが、
地下階や長距離排水、建物奥の厨房などでは勾配を確保できないため、
機械的に圧力をかけて排水を送る=圧送方式が必要になります。
圧送ポンプの構造と仕組み
圧送ポンプは、以下の要素で構成されています。
- ポンプ本体(ボルテックス、渦巻、カッターポンプなど)
- 圧送管(VP・HIVP・耐圧ホースなど)
- 逆止弁(逆流防止)
- フロートスイッチまたは液面センサー
- 槽(汚水槽・雑排水槽)
- 制御盤(自動運転・異常警報)
仕組みとしては、
- 槽内に汚水・排水が貯まる
- 液面が一定レベルに達するとポンプが自動起動
- ポンプが圧力をかけて排水を上方向・遠方向へ送る
- 一定の液面まで下がると停止
というサイクルで動作します。
圧送ポンプが使用される主な場所
建築・土木では、以下の場面で圧送ポンプが必須となります。
- 地下1階以下のトイレ・厨房・浴室
- 地下ピットの雨水・湧水排水
- 自然流下できない敷地の排水処理
- 勾配が確保できない長距離排水
- 狭小地の住宅排水(圧送式トイレ)
- マンションの汚水・雑排水槽
- 工事現場の仮設排水
特に商業施設やマンションでは、
地下階のトイレ・厨房排水に圧送方式が一般的です。
圧送ポンプの種類
用途に応じて複数のタイプがあります。
1. ボルテックスポンプ
固形物に強く、汚水圧送に最適。
2. カッターポンプ
刃付きで固形物を細かくカットして圧送。
詰まりやすい現場向け(厨房など)。
3. 渦巻ポンプ
雑排水向けで、比較的清水に近い排水に使用。
4. 二重槽・二台交互運転タイプ
24時間稼働する建物で安全性を確保。
用途ごとに適正を見極めることが重要です。
圧送ポンプを使うメリット
1. 勾配を気にせず配管できる
建築計画の自由度が大幅に向上します。
2. 地下階でもトイレや厨房が設置できる
商業施設で必須のメリットです。
3. 排水管の敷設距離を伸ばせる
離れた場所の設備でも排水可能に。
4. 配管の小口径化が可能
圧送方式は細い配管でも排水でき、施工性も向上します。
圧送ポンプの注意点(デメリット)
1. 停電時は排水できなくなる
バックアップ(逆止弁+非常用電源)が必要。
2. メンテナンスが必要
固形物が多い現場では詰まり・故障リスクがある。
3. 騒音・振動対策が必要
住宅などでは防振架台や防音対策が求められる。
4. 設備コストが上がる
自然流下よりイニシャルコストは高くなります。
圧送ポンプと自然流下の違い(比較表)
| 項目 | 圧送方式 | 自然流下方式 |
|---|---|---|
| 配管勾配 | 不要 | 必須 |
| 排水の自由度 | 高い | 低い |
| 設備コスト | やや高い | 安価 |
| 停電時 | 排水不可 | 流れる |
| 詰まりやすさ | 運転条件による | 基本的に低い |
| 主な用途 | 地下・長距離排水 | 一般排水 |
建築計画で圧送ポンプを選ぶポイント
- 必要揚程(上げたい高さ)
- 必要流量(使用設備の数・種類)
- 排水種(汚水/雑排水/厨房排水)
- 流路の固形物サイズ
- 停電対策(非常電源)
- メンテ頻度とアクセス性
- 二台交互運転が必要かどうか
これらを適切に選定することで、
トラブルの少ない排水設備を計画できます。
まとめ
圧送ポンプとは、自然流下できない場所でも排水を可能にする重要な建築設備で、地下階のトイレ・厨房・ピット排水などに欠かせません。
建物計画の自由度を大幅に高める一方、停電や詰まりリスクへの対策が必要な設備でもあります。
用途に応じたポンプの種類・能力・運転方式を適切に選ぶことが、長期的な安心・安定運用のカギとなります。
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