有圧扇とは?仕組み・用途・選び方を建築設備の視点からわかりやすく解説
有圧扇とは
有圧扇(ゆうあつせん)とは、モーターと羽根(プロペラ)の間に強度の高いフレーム構造を持った、工場・倉庫・厨房などの換気に使われる産業用換気扇のことです。
一般家庭の換気扇よりも強力な風量を出すことができ、
熱気・煙・湿気・粉じんなどが多い環境でも安定して換気できるように設計されています。
正式には「有圧換気扇」と呼ばれ、建築・設備図面では「有圧扇」と略されることが多いです。
有圧扇の特徴
有圧扇は一般的なプロペラファンとは構造・強度が大きく異なります。
1. 大風量・大静圧に対応
「静圧(空気を押し出す力)」が高いため、
フィルターやダクトがある環境でも換気性能が落ちにくいのが特徴。
2. 強固なフレーム構造
モーターと羽根を頑丈なフレームで接続しており、
振動や外力に対して安定性が高い。
3. 過酷な環境でも使用可能
高温・湿気・油煙・粉じんが多い場所でも耐久性がある。
4. メンテナンスがしやすい
構造がシンプルでパーツ交換もしやすいため、工場現場で重宝されます。
どんな場所で使われるのか(主な用途)
有圧扇は、一般住宅ではほとんど必要なく、産業用・業務用として使用されます。
- 工場(製造ラインの換気・排熱)
- 倉庫(熱気・湿気の排出)
- 商業施設のバックヤード
- 厨房(高温・油煙の排気)
- ビル地下機械室
- 駐車場の換気補助
- 発電機室・ボイラー室の空気補給
- 工事現場の仮設換気
特に、熱がこもりやすい空間や、大量の空気を入れ替える必要がある場所に最適です。
有圧扇の仕組み
有圧扇は、強力なプロペラにより外気と室内空気を入れ替える「軸流ファン」に分類されます。
構造は以下の通りです。
- プロペラファン(羽根)
- フレーム(強化構造)
- モーター(単相または三相)
- シャッター(風圧式や電動式)
- ガード(安全カバー)
- 壁面取付用フランジ
これらにより高い静圧と耐久性を実現しています。
有圧扇の選び方(建築設備のポイント)
1. 必要風量(m³/h)で選ぶ
室内の体積 × 必要換気回数から算出します。
工場では10~20回/h程度が目安。
2. 静圧の確認
ダクトやフィルターが多い場合、静圧の高いモデルを選択する必要があります。
3. 設置場所の環境
- 高温 → 耐熱タイプ
- 油煙が多い → 厨房対応モデル
- 粉じん → 防塵タイプ
- 屋外雨掛かり → 防滴タイプ
用途で選定が大きく変わります。
4. 電源(単相/三相)
工場・倉庫では三相200Vが一般的。
5. 騒音レベル
大風量=騒音増となるため、周辺環境に応じて選定。
有圧扇と一般換気扇の違い
| 項目 | 有圧扇 | 一般家庭用換気扇 |
|---|---|---|
| 風量 | 非常に大きい | 小さめ |
| 静圧 | 高い | 低い |
| 耐久性 | とても高い | 標準 |
| 設置場所 | 工場・倉庫・厨房 | 住宅 |
| 価格 | 高め | 安価 |
目的に合わせて性能が大きく異なります。
まとめ
有圧扇は、工場・倉庫・厨房などの現場に欠かせない、大風量で高静圧の業務用換気扇です。
熱気や油煙、粉じんなど過酷な環境でも安定して換気できるため、建築・設備工事では非常に重要な機器となっています。
適切な風量・静圧・環境に合わせた選定を行うことで、建物全体の換気性能と作業環境が大きく向上します。
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