My Bloody Valentineをアナログで聴く理由と選び方:Isn't Anything・Lovelessのオリジナル盤 vs リイシュー完全ガイド
序文 — レコードという媒体とMy Bloody Valentineの関係
My Bloody Valentine(以下MBV)は、その音響美学と革新的なギターワークによって、1980年代後半から1990年代にかけて「シューゲイザー(shoegaze)」というジャンルを代表する存在になりました。CDやデジタル音源でも名作として語られますが、MBVの音楽はアナログ・レコードという媒体と非常に相性が良く、原盤の厚みやヴィニール特有の倍音、針を通した際の物理的な情報量が作品のテクスチャーを豊かに感じさせます。本稿では特に「レコード」に焦点を当て、主要リリースのヴィニール事情、オリジナル盤とリイシューの違い、コレクター向けの見分け方・保存・再生のポイントなどを深掘りします。
バンドの簡単な沿革(レコード文脈での要点)
MBVは1980年代半ばに結成され、初期にはポストパンク寄りの音作りをしていましたが、徐々に独自のノイズ/ドローンとメロディが融合するサウンドにシフトしていきます。重要なのは、彼らがEPやシングルという短尺の形態で断続的に発表を続け、特に12インチや7インチの形で磁場を拡げていった点です。これらの当時のヴィニール・リリースは、音楽誌やライヴでの評判と相まってレコード市場での価値を築いていきました。
主要レコード作品とそのヴィニール事情
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初期:ミニアルバムとシングル(評価と希少性)
MBVの初期リリースは少数プレスで出されたものも多く、ラベルやプレス工場の違いによりサウンドや流通量に差が生じています。初版のマスタリングやカッティングは録音状況と密接に結びついており、後年のリイシューとは音像の輪郭や帯域バランスが異なることが多いです。コレクターはオリジナル・バーコードの有無、レーベルのロゴ差異、ジャケットの紙質・印刷の濃淡を確認します。
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Isn't Anything(1988) — ヴィニールで聴く意味
1stフルアルバムとなるIsn't AnythingはCreation Recordsからリリースされ、オリジナルのアナログ盤は曲間の呼吸感やヴィニール上のサチュレーションが音圧感を生み出すため、とくに現場での評価が高い作品です。初版プレスはジャケット・スリーブのフォントやカラーバランスに微妙な個体差があり、プレス番号やランアウト(runout)刻印を確かめることでオリジナルかリイシューかを判別できます。
音質面では、オリジナルLPはアナログ・マスターの特性を忠実に伝えるため、シューゲイザー特有の曖昧で密度の高いギター群が前へ出すぎずレイヤーを感じさせる傾向があります。反対にCDや後年のデジタル・リマスターでは帯域が整えられ過ぎることがあり、ヴィニールでしか得られない「揺らぎ」を好むコレクターがいます。
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Loveless(1991) — レコード史に残るアルバムとオリジナル盤の価値
Lovelessは制作に多大な時間とコストをかけて作られ、リリース当時からサウンド面での完成度の高さが叫ばれました。ヴィニールでの再生は、Kevin Shieldsによる独特の“グライド・ギター”や巨大な音の塊感を物理的に体感しやすく、針が溝を辿るたびに楽器群の重なりや残響のニュアンスが再現されます。
オリジナル・プレスはCreation(UK)とSire(US)など国ごとのプレスが存在し、ジャケットの紙質、インナーの有無、センターラベルのデザイン、マトリクス(runout)刻印の差異がコレクション価値に直結します。Lovelessはリリース当時の高コスト故に初版プレスも相対的に多くはないため、状態の良いオリジナルLPは中古市場で高値がつくことがある点に注意が必要です。
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EP/シングル群(You Made Me Realise、Feed Me With Your Kiss 等)
MBVはEPや12インチシングルで重要な作品群を発表しました。例えばYou Made Me Realise(タイトル曲自体はライヴの伝説も多い)は12インチ仕様で出回り、Bサイド/リミックス違いが存在する場合もあります。これらはしばしば限定カラー盤やプロモ盤が存在するため、盤種による希少性が高まりやすいジャンルです。
オリジナル盤とリイシュー盤の見分け方(基本チェックリスト)
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ランアウト刻印(runout/matrix)を確認する
ランアウトにはカッティングエンジニアのイニシャルやカタログ番号などが刻まれていることが多く、オリジナルかリイシューかを判別する上で最も信頼できる指標の一つです。 -
レーベルとカタログ番号
レーベルのロゴ位置やフォント、カタログ番号の細かな差異はリイシュー判別に有効です。特にCreation、Sire、国内流通盤などレーベル別に版が分かれるため、写真や信頼できるデータベース(後述)で照合します。 -
ジャケットの紙質・印刷
初版は特定の紙厚や印刷の色味を持つ場合があり、後年の再販では紙質が薄くなったり色味が変わったりします。背表紙やインサートの有無(歌詞カード、ライナーノーツなど)も重要です。 -
重量とセンターホール
180gプレスなど厚手のプレスは近年のリイシューで採用されることが多く、軽いヴィニールはオリジナルである可能性がある(ただし例外も多い)ため、重量だけで判断しないこと。 -
付属物(インナースリーブ、ポスター、折込)
日本盤ならば帯(obi)や解説書が付属することがあり、これらが揃っているか否かで価値が変わります。
コレクターズ・ポイント:本当に買うべき盤はどれか
「オリジナル盤を持つこと=正義」ではありません。音質と所有欲の両方を満たすためには目的を明確にしましょう。以下は典型的な選択基準です。
- 音質重視:高品質の再プレス(アナログ・リマスターや高重量盤、日本盤のハイファイプレスなど)を選ぶほうが満足度が高い場合があります。最近の公式リイシューは、オリジナルの音像を尊重しつつノイズ処理やラッカーカッティングを改善していることもあります。
- コレクション重視:初回プレス、プロモ盤、限定カラーなどの希少盤を狙う価値があります。これらは流通量が少なく、将来的に評価が上がる可能性があります。
- 価格とのバランス:状態(VG++〜MINT)によって価格が大きく変わるため、盤質とジャケットの両方を妥協せずに選びましょう。中古市場での信頼できるショップや出品者の評価も判断材料です。
再生と保管のポイント(ヴィニールならではのメンテ)
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ターンテーブルのセッティング
シューゲイザーの密な音像を再現するには正確なトラッキングと適切な針先(カートリッジのタイプ)選びが重要です。針圧やアンチスケーティング、カートリッジの出力などを調整してください。 -
クリーニング
浸透性のあるブラシやレコード洗浄機を使い、ホコリや静電気を取り除くことで高域の伸びと低域の安定感が改善します。MBVの微細なディテールはノイズに埋もれやすいため、クリーニングは必須です。 -
保管方法
直射日光や高温多湿を避け、帯電防止内袋(anti-static inner)に入れて縦置きすること。ジャケットの変形や色あせを防ぐため、外箱や収納ケースを検討してください。
コピー盤・海賊盤とそのリスク
人気盤の初版や限定盤は海賊盤やブートレグが出回ることがあります。表面的な印刷は高品質になってきており、見た目だけで判断するのは危険です。前述のrunout刻印やマトリクス、ラベルのインクの質感、盤の重さなど複数の指標を照合することが重要です。また、信頼できる販売店で買うか、写真を多く掲載している出品から状態を吟味するのが安全です。
MBVのレコード文化的意義とサウンドの再現性
MBVの音は「揺らぎ」と「密度」によって特徴づけられます。アナログ盤はデジタルよりも倍音の減衰や位相のゆらぎを自然に表現しやすく、彼らの曖昧かつ分厚いギターサーフェスを聴き分けるのに適しています。Kevin Shieldsは制作過程でテープのストップ・スタートやエフェクトの微調整を重ねたと言われており、そのテクスチャーの多くはアナログ媒体の方が忠実に伝わる場合があります。
日本盤事情:帯・解説・プレス品質
日本盤は通常、帯(obi)や日本語解説、独自のカタログ番号が付くため国内コレクターから非常に人気があります。多くの場合、日本盤はより良質なプレス工場で作られることがあり、マスタリングやラッカーからの差異が出ることもあります。また、国内流通限定の初回特典(ポスターや解説書)が付属していることが多く、コンディションが良好なものは海外よりも高く評価されることがあります。
購入先・相場観(一般的な指針)
MBVのヴィニールは状態、版、帯の有無、付属品で価格が大きく変動します。相場を把握するには以下を参考にしてください。
- ディスクユニオン、タワーレコードの中古・委託棚や信頼できる専門店での購入が安心。
- オンラインではDiscogsやeBay、国内フリマ・オークションサイトを参考に実取引価格を調べる。出品写真のrunout刻印や付属品写真を確認する。
- 高額になりやすいのは初回プレスの良好盤、帯付き日本盤、プロモ盤、限定カラー盤など。
まとめ:MBVはレコードで聴くべきか
結論として、MBVの作品はレコードで聴く価値が高いです。特にIsn't AnythingやLovelessといった傑作は、アナログ盤でその音像の密度や揺らぎを体感することで新たな発見が得られる可能性があります。オリジナル盤ならではの歴史的価値や物理的情報量はコレクターとしての満足度も高く、リイシュー盤は音質や保存性で実用的な選択肢となります。購入時はrunout刻印、ジャケット、付属品、盤面の状態を総合的に判断することが重要です。
参考文献
- My Bloody Valentine - Wikipedia
- My Bloody Valentine - Discogs
- Creation Records(レーベル情報)
- My Bloody Valentine - AllMusic
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