Infected Mushroom完全ガイド:代表曲・名盤の聴きどころと音作り解説

イントロダクション

Infected Mushroom(インフェクテッド・マッシュルーム)は、イスラエル出身のAmit "Duvdev" DuvdevaniとErez Eisenによるエレクトロニック/サイケデリック・デュオです。1990年代後半のサイケデリックトランス(psytrance)シーンから出発し、以降は常にジャンルの枠を越えて進化を続けてきました。本稿では、彼らの代表曲や名盤をピックアップし、サウンドの特徴・制作の工夫・楽曲ごとの聴きどころを深掘りします。

Infected Mushroom の音楽的特徴と進化

Infected Mushroom の魅力は「トランスのドライヴ感」と「エレクトロニカ/ロック的アレンジ」を融合させた点にあります。特徴を端的に挙げると:

  • 複雑で緻密なサウンドデザイン:多層のシンセ、グリッチ、ピッチシフトやフォルマント処理などを駆使した独自の音作り。
  • ジャンル横断的なアプローチ:サイケデリックトランスをベースに、ロック、ドラムンベース、ハウス、実験音楽の要素を取り込む。
  • メロディとリズムの両立:サイケ色の強いシンセリフと、グルーヴ感のあるビートが同時に成立している。
  • ライブでのバンド志向:エレクトロニックセットのみならず、ギターや生ドラムを取り入れたライブ演奏での表現力。
  • 中東的なモードやフレーズの導入:出自を反映した音階やリズムのアクセントが随所に見られる。

代表曲の深掘り

Becoming Insane — キャッチーな外向性とアグレッシブな音像

「Becoming Insane」はInfected Mushroom の比較的メジャーな一曲で、サイケトランス由来のテンションを保ちつつ、ポップ/ロック的な歌メロと覚えやすいサビを備えています。曲の聴きどころ:

  • ヴォーカルとコーラス:エフェクトをかけた人声がフックとなり、トランス的な浮遊感に「歌」を持ち込むことで親しみやすさを生む。
  • サウンドデザイン:歪ませたシンセ、ベースのグリップ感、そしてトランス由来のビルドアップが強烈な対比を作る。
  • 構成の工夫:ブレイクやビルドを短めに刻むことで、ライブやフェスのフロアで即効性のある盛り上がりを作り出す。

Cities of the Future — 未来感と装飾的アレンジ(代表的なアンセム)

「Cities of the Future」は、シンセのアルペジオやエフェクト処理を多用して“未来的”な景観を作り出す曲です。特徴的なのは:

  • テクスチャ重視の編曲:空間系エフェクトやフィルターワークで“都市の風景”のような広がりを表現。
  • 展開のメリハリ:緩やかなパートと高エネルギーのパートを交互に配置し、飽きさせない構成。
  • ライブ映えするサウンド:派手なスイープやドロップにより、フェスのピークタイムでも存在感を放つ。

Converting Vegetarians(アルバム全体) — 実験性とジャンル融合の良例

アルバム「Converting Vegetarians」は、Infected Mushroom の中でも実験的な色合いが濃い作品群を含むレコードです。クラシック楽器やダウンテンポ、アンビエントを取り入れた楽曲が並び、彼らのクリエイティビティの幅を示しています。注目点:

  • 編成の自由度:生楽器やストリングス、ボーカルコラボなどエレクトロニック以外の要素を大胆に導入。
  • 音楽的な起伏:トランスの反復性に依存せず、ドラマティックな楽曲作りを志向している。
  • プロデュースの意識:一曲一曲に対して強いサウンド・コンセプトがあり、アルバムを通じて多面的な表情を見せる。

Vicious Delicious(アルバム)とそのポップな側面

「Vicious Delicious」期の作品群は、より外向的でポップな側面が目立ちます。エレクトロニカ寄りのアレンジや、ロック志向のギターが混ざり合い、フェス向けのアンセムが生まれました。実践的な聴きどころ:

  • 音の密度:多層シンセとエフェクトの掛け合いにより、ミックスの中で常に新しい要素が出てくる。
  • 楽器間のバランス:ギターやボーカルが導入されても、ダンストラックとしてのグルーヴを損なわない配置。
  • 制作テクニック:ピッチ・ベンド、フォルマント処理、ダイナミクスの意図的な操作で「躍動感」を演出。

Head of NASA and the 2 Amish Boys(近年の作風)

近年では、更に多様なサウンドを取り込み、ポップと実験の境界を行き来する傾向が強くなっています。テクノ、ハウスの要素も取り入れつつ、かつてのサイケデリックトランス的な高揚感を残しているのが特徴です。

制作面でのテクニカルなポイント(音作りのヒント)

Infected Mushroom のサウンドを理解するには、以下の制作面の要素を押さえると良いでしょう:

  • サウンドデザインの多層化:リード/パッド/効果音を別々のトラックで処理し、各々に異なるエフェクトを掛ける。
  • ボーカルのエフェクト活用:ピッチシフト、フォルマント、ハーモナイザーで人声を楽器的に扱う。
  • ダイナミクスの操作:サイドチェインやオートメーションで、音の出入りを精密にコントロールして緩急をつける。
  • 音色の「不協和」利用:わずかに不均衡な倍音や歪みを入れて、サイケデリックな不安定感を演出。

ライブ表現とリミックス文化

Infected Mushroom はライブ面でも革新的です。DJセットのみならず、バンド編成での演奏やリアレンジを積極的に取り入れ、曲を生き物のように変えていきます。また、他アーティストのリミックスやコラボも多く、別ジャンルのリスナーに届く機会を作ってきました。

初心者向けの聴き方ガイド(入門プレイリスト)

初心者がInfected Mushroomを楽しむための順序例:

  • まずはポップ寄りの代表曲でイントロダクション(「Becoming Insane」など)
  • 次にアルバム単位で初期作(サイケデリック色の強い作品)を一枚聞く
  • 実験作(「Converting Vegetarians」的な作品)で彼らの幅を体感する
  • ライブ映像やリミックスで異なるアレンジの面白さを確認する

総括 — なぜ彼らは長年支持されるのか

Infected Mushroom が長年にわたり支持される理由は、単に「トラックが強い」だけではありません。彼らは常に自分たちの音楽的な限界を押し広げ、制作技術と表現の両面で進化を続けています。サイケデリックトランスのエッセンスを基盤にしつつ、革新的なサウンドデザインと多様なジャンル融合で常にリスナーの期待を裏切る(良い意味で)アプローチを取ってきた点が大きな要因です。

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