レニングラード・フィル(サンクトペテルブルク・フィル)入門:ムラヴィンスキー&テミルカーノフの名盤と聴きどころ
レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団(現:サンクトペテルブルク・フィル)とは
「レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団」はソビエト時代におけるロシアを代表するオーケストラの一つで、1991年のソ連崩壊以降は英語表記で「St. Petersburg Philharmonic Orchestra(サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団)」として国際的にも知られています。長期にわたる首席指揮者や作曲家との深い関係性(とくにショスタコーヴィチとの結びつき)によって、20世紀ロシア音楽の重要な解釈を多数残してきました。
主要な指揮者とその特徴
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エフゲニー(イェフゲニー)・ムラヴィンスキー(Yevgeny Mravinsky)
1938年に首席指揮者に就任し、1988年まで長期間にわたってオーケストラを率いました。ムラヴィンスキーはショスタコーヴィチ作品の強烈で緊張感ある解釈で知られ、録音も多く残しています。響きは引き締まり、リズムの切迫感や緻密なアンサンブルが特徴です。 -
ユーリ・テミルカーノフ(Yuri Temirkanov)
ムラヴィンスキーの後を受けて1988年以降に長く首席を務めた指揮者。伝統的なロシアの音色感を保ちつつ、より開かれた音響とモダンな録音技術を活かした演奏を残しています。チャイコフスキーやプロコフィエフなどのロシア・レパートリーで高評価の録音が多いです。 -
その他
歴史的には数多くの客演指揮者や国内外の作曲家との共演があり、レパートリーの幅は広いです。ソビエト期のレパートリーを基盤に、現代曲や海外作品も積極的に取り上げてきました。
おすすめレコード(名盤)と聴きどころ
以下はレニングラード/サンクトペテルブルク・フィルの演奏で特に評価されている録音、あるいは「このオーケストラを知る上で押さえておきたい」代表作です。解釈の特徴や購入時の目安も付記します。
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ショスタコーヴィチ:交響曲第5番 — エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮(Melodiya等の旧ソ連盤)
作品の激しい内面性と「公共的」な側面が同居するこの交響曲を、ムラヴィンスキーは緊張感をもって描きます。テンポ設定やダイナミクスのコントラストが際立ち、ショスタコーヴィチの陰影を強く感じたいリスナーに最適な解釈です。歴史的価値が高く、ソビエト期の重厚なサウンドが楽しめます。 -
ショスタコーヴィチ:交響曲全集(ムラヴィンスキー指揮の録音群)
単発の名演だけでなく、ムラヴィンスキーとレニングラード・フィルのショスタコーヴィチ全集(Melodiya録音)は、作曲家の様々な時期の作品を一貫した解釈で聴ける点が魅力です。全集として手元にあると、作風の変遷や演奏の一貫性を比較できます。 -
チャイコフスキー:交響曲全集 — ユーリ・テミルカーノフ指揮(Philips等の商業盤)
テミルカーノフはチャイコフスキーの管弦楽曲で温度感のある豊かなサウンドを引き出します。特に第4番・第5番・第6番(悲愴)は、ロシア的な歌心と表現の深さがうまく両立しており、近代的な録音としても聴きやすいシリーズです。 -
プロコフィエフ:バレエ組曲/交響曲(テミルカーノフほか)
プロコフィエフの舞台作品や交響曲は、レニングラード・フィルの鋭いリズムと明晰なアンサンブルが生きるレパートリーです。テミルカーノフのレコーディングには、バレエ組曲(「ロミオとジュリエット」など)や管弦楽曲の名演が含まれていることが多く、ドラマティックさと構成力のバランスが良いです。 -
歴史的ライブ&放送録音(ムラヴィンスキー時代のライヴ音源)
ソビエト時代には放送局録音やコンサート録音が数多く残されており、熱気あるライヴ・パフォーマンスが聴けます。音質は商業録音に比べ粗さがある場合もありますが、演奏の生々しさや歴史的文脈を知るには貴重です。
選び方のポイント(音楽的観点)
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指揮者で選ぶ:ムラヴィンスキーの録音はショスタコーヴィチを中心に。テミルカーノフはチャイコフスキーやプロコフィエフで魅力を発揮します。作曲家ごとに指揮者の向き不向きが出るので、作品と指揮者の相性をチェックしましょう。
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録音年代で味わいが変わる:ソビエト期の録音は演奏の鋭さと独特の音色が特徴。90年代以降の録音は録音技術の進歩で音の分離や空間感が向上しています。どちらを重視するかで選択が変わります。
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全集か単発か:作曲家の理解を深めたいなら全集(例えばムラヴィンスキーのショスタコーヴィチ全集)は有益。一方で「代表曲」だけを聴きたいなら単発盤でも十分です。
購入・視聴のすすめ
まずは代表的な一枚(例:ムラヴィンスキーのショスタコーヴィチ交響曲第5番、テミルカーノフのチャイコフスキー)をストリーミングやCDで聴いてみて、演奏スタイルが好みに合うか確かめるのが手早い方法です。気に入ればシリーズや全集へと広げると、オーケストラの解釈的な個性をより深く味わえます。
最後に
レニングラード/サンクトペテルブルク・フィルは「ロシア的な響き」と「劇的な表現」を兼ね備えたオーケストラであり、指揮者によって全く異なる顔を見せるのが魅力です。特に20世紀ロシア音楽を好むリスナーにとって、彼らの録音は解釈史上の重要な参照点となるでしょう。
参考文献
- サンクトペテルブルク・フィルハーモニー管弦楽団 公式サイト
- Saint Petersburg Philharmonic Orchestra — Wikipedia
- Yevgeny Mravinsky — Wikipedia
- Yuri Temirkanov — Wikipedia
- Dmitri Shostakovich — Wikipedia
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