Cleveland Orchestra(クリーブランド管弦楽団)入門:ズェル〜ドホナーニ〜ウェルザー=メストの名盤と聴き方ガイド
はじめに — Cleveland Orchestraとは何者か
アメリカ中西部、オハイオ州クリーブランドを本拠とするCleveland Orchestra(クリーブランド管弦楽団)は、20世紀半ば以降「アメリカのビッグ5(あるいはトップオーケストラ)」の一角として国際的に高い評価を受けてきました。特にジョージ・ズェル(George Szell)在任期(1946–1970)に楽団の音楽的基盤が築かれ、以降の音楽監督たち(Christoph von Dohnányi、Franz Welser‑Möstら)によってレパートリーの幅と表現力がいっそう拡がっています。
聴き方のポイント
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「アンサンブルの精緻さ」を聴く:Clevelandの大きな魅力はセクション間・音の立ち上がりと切れ味の揃い方。特に弦楽と管の輪郭が整っているため、フレーズの構造や対位法が明瞭に聴き取れます。
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「ホールの響き」を意識する:伝統的に本拠地のSeverance Hallでの録音は空間表現が優れており、オーケストラの艶やかさと余韻がよく捉えられています。
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指揮者ごとのカラーを楽しむ:ズェルの厳格で構築的な解釈、ドホナーニの柔軟で内面的なアプローチ、ウェルザー=メストの色彩感と現代的な鮮やかさ。同じ曲でも指揮者で表情が大きく変わります。
おすすめレコード — ズェル(George Szell)時代の名盤
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Beethoven:Complete Symphonies — George Szell / Cleveland Orchestra
解説:ズェルとクリーブランドによるベートーヴェン交響曲全集は、テンポ感の厳密さ、対位法の明瞭さ、構築性で非常に高い評価を受ける定番です。交響曲第5番や第7番、第9番の躍動感と緻密さは特に聴きどころ。 -
Brahms:交響曲(Szell 指揮)
解説:ブラスや低弦の重みを生かした重厚なサウンドと、内声部まで行き届いたアンサンブルが魅力。ブラスの色合い、弦のアーティキュレーションに注目するとズェルの美学が見えてきます。 -
Mozart & Classical repertoire — Szell / Cleveland
解説:ズェルは古典派音楽にも明快な線と規律をもたらしました。モーツァルトの交響曲や序曲での軽やかさと精確さは、楽曲の構造美を浮かび上がらせます。
おすすめレコード — Christoph von Dohnányi(ドホナーニ)時代の注目盤
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浪漫派の大曲・管弦楽作品(ドホナーニ指揮)
解説:1984年から2002年にかけて音楽監督を務めたドホナーニ期は、表現の柔軟性と深い内面性が増した時代。マーラーやブルックナー、ドヴォルザークなどの大曲録音でその解釈の厚みが堪能できます。テンポの幅、呼吸感に注意して聴くとドホナーニ流の詩的な表現が分かります。 -
協奏曲や室内楽的作品の録音
解説:この時期はソリストとの名演も豊富で、ピアノやヴァイオリンの協奏曲などでオーケストラの「伴奏力」としての側面が際立ちます。ソロとオーケストラの対話構造に耳を傾けてください。
おすすめレコード — Franz Welser‑Möst(ウェルザー=メスト)時代の推薦盤
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Ravel / R. Strauss など色彩感あふれる管弦楽作品(Welser‑Möst 指揮)
解説:2002年就任のWelser‑Möst期には、色彩感豊かな近現代の管弦楽曲や、ドイツ後期ロマン派の精緻な音作りで高い評価を得ています。オーケストラのダイナミックレンジと音色の多様性が魅力の録音が多く、オーケストラの“音そのもの”を楽しみたい向きに特におすすめです。 -
近年の録音プロジェクト・録音技術の進化を活かした作品群
解説:近年は録音技術の進歩でホールの残響や楽器の細かいニュアンスがより忠実に再現されています。管弦楽色彩を生かしたラヴェル、ドビュッシー、リヒャルト・シュトラウスの管弦楽作品は、音の艶やかさと空間描写が秀逸です。
入門盤(初めてClevelandを聴く人向け)
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ベートーヴェン交響曲(Szell) — オーケストラの基本と伝統を知るための最短ルート。構成感とアンサンブルの統一感を体感できます。
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ラヴェル/管弦楽作品(Welser‑Möst) — 色彩豊かなオーケストラ・サウンドを味わいたい人に最適。響きの美しさがダイレクトに伝わります。
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交響曲や管弦楽曲のライブ盤やアニヴァーサリーBOX — ライヴ感とホールの空気感を楽しめるため、オーケストラの「生きている音」を感じられます。
購入・選盤のコツ(録音や音質に注目)
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「ズェル期のアナログ(オリジナル・RCA等)」は時代の音の勢いと演奏様式を感じられる一方、リマスター盤やデジタル録音は空間表現がよりクリアなのでお好みで選んでください。
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録音の場(Severance Hall収録かスタジオ収録か)で音の聞こえ方が変わります。ライブ感重視ならライヴ、緻密さ重視ならスタジオ録音を探すと満足度が高いです。
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解説書やブックレットに指揮者や録音エンジニアのコメントがあると、制作意図や音づくりの背景がわかり購入後の理解が深まります。
最後に — どのレコードからでも始められる楽しみ
Cleveland Orchestraは時代ごとに異なる美学を提示してきたため、同じ作曲家の別録音を比較することでオーケストラの個性と指揮者の解釈の違いを体感できます。まずは気になる一枚を選び、曲の構造や音色、アンサンブルの細部に耳をすませてみてください。きっと新しい発見があります。
参考文献
- The Cleveland Orchestra — 公式サイト
- George Szell — Wikipedia
- Christoph von Dohnányi — Wikipedia
- Franz Welser‑Möst — Wikipedia
- The Cleveland Orchestra — Discogs(ディスコグラフィ)
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