Anderson Bruford Wakeman Howe(ABWH)入門:クラシック期Yesを継ぐ名盤・歴史・聴きどころガイド

はじめに — Anderson Bruford Wakeman Howe(ABWH)とは

Anderson Bruford Wakeman Howe(以下 ABWH)は、1988年に結成されたプログレッシブ・ロックのスーパーグループで、メンバーはジョン・アンダーソン(ボーカル)、ビル・ブルーフォード(ドラムス)、リック・ウェイクマン(キーボード)、スティーヴ・ハウ(ギター)という、いずれも“クラシック期のYes”を象徴する人物たちです。名称に「Yes」を冠していないものの、音楽的には往年のYesサウンドを継承・再解釈した作品群を残しました。

結成の背景と経緯

1980年代後半、Yesはポップ志向の路線(トレヴァー・ラビンらを中心とした編成)と、クラシック期メンバーの志向が分かれる状況にありました。ジョン・アンダーソンは、より古典的なプログレ志向の音楽を追求するためにかつての仲間たちと再結集を決意。法的・商標上の事情からバンド名を「Anderson Bruford Wakeman Howe」とし、1989年にセルフタイトルのスタジオ・アルバムをリリースしました。後に“Union”プロジェクトを通じて両派が一時的に融合するなど、当時のロック界における大きな話題を呼びました。

メンバーのプロフィール(要点)

  • ジョン・アンダーソン(Jon Anderson) — 特徴的なハイトーンの歌声、神秘的・精神性の高い歌詞世界で知られるフロントマン。Yesの象徴的存在。
  • ビル・ブルーフォード(Bill Bruford) — ジャズ的なフィールとリズム感を持ち合わせたドラマー。複雑な拍子や細やかなタッチが楽曲に深みを与える。
  • リック・ウェイクマン(Rick Wakeman) — シンセやアコーディオン、クラシカルなフレーズを多用するキーボーディスト。劇的で豪奢なアレンジを得意とする。
  • スティーヴ・ハウ(Steve Howe) — フィンガーピッキングやスライド、フォーク〜ジャズまで幅広いギタースタイルを使い分ける名手。サウンドに多彩な色彩を加える。

音楽的特徴と魅力

ABWHの音楽は、いわゆる「クラシック期Yes」のエッセンスを色濃く反映しています。以下が主要な特徴です。

  • 豊かなコーラスワークとメロディアスな歌唱:アンダーソンの多層コーラスと高音域のメロディが楽曲の中心を形成します。
  • 複雑かつ流麗なアレンジ:楽曲は組曲的な構成や変拍子、転調を含み、聴きごたえのある展開を見せます。
  • 楽器間の対話(インタープレイ):ハウのアコースティック/エレクトリックギター、ウェイクマンのシンセ群、ブルーフォードの精緻なドラミングが有機的に絡み合います。
  • 叙情性とスピリチュアルな歌詞世界:自然や宇宙、自己探求といったテーマが歌詞に表れ、聴き手に瞑想的な余韻を残します。
  • 制作時代の音響的特徴:1980年代末期のレコーディング/音作りの影響で、時にモダンなプロダクション(デジタル寄りの質感)が感じられ、クラシックな要素とモダンさの混在が特徴です。

代表曲・名盤の紹介

ABWH名義の代表作は以下です。

  • Anderson Bruford Wakeman Howe(1989) — セルフタイトルのスタジオ・アルバム。クラシック期Yesの流れを受け継ぎつつ、各メンバーの個性が反映された楽曲群を収録。静と動のダイナミクス、長尺曲の構築力が魅力です。代表曲としては「Brother of Mine」「Order of the Universe」「Birthright」などが挙げられます。
  • An Evening of Yes Music Plus(ライブ) — ABWHのライブでの演奏を収めた作品。ライブではクラシックなYesナンバーやABWHの楽曲が混在し、演奏力と即興性が際立ちます(ライブ盤のタイトルはリリース形態により表記の差異があることがあります)。
  • Union(1991) — 厳密にはABWH単独作ではなく、ABWHメンバーと当時のYesメンバー(ラビン、スパイローほか)が関わったプロジェクト。賛否両論ありますが、当時の混沌した状況を知るうえで重要な資料です。

ライブでの魅力

ABWHの公演は、名曲群を原曲に忠実かつダイナミックに再現しつつ、メンバーの即興的なやり取りや個々のソロが堪能できる場でもありました。観客にとっては“クラシックなYes体験”をほぼそのまま味わえる機会であり、特にギターとキーボードの掛け合い、ブルーフォードの繊細なドラミングがライブの聴きどころになりました。

聴きどころのポイント(初心者向けガイド)

  • まずはアルバムの冒頭から聴き進め、楽曲の起承転結やアレンジの変化(静→動、アコースティック→シンセへ移行など)を追ってみてください。
  • アンダーソンのコーラスやハイトーンは曲の「物語性」を強めるので、歌詞やフレーズの繰り返しに注目すると世界観がより深く伝わります。
  • 楽器ごとに役割を分けて聴くのも有効です。ハウのアコースティックフレーズ、ウェイクマンのリード/パッド音、ブルーフォードの細かなリズム、各々を切り分けて聞くと編曲の妙がわかります。
  • ライブ盤ではスタジオ盤とは異なるダイナミクスやテンポ感、メンバーのソロが展開されることが多いので、両方を比較することで理解が深まります。

評価と遺産

ABWHは“懐古的な再現”だけでなく、各メンバーの成熟した演奏と作曲力を示したプロジェクトでした。発表当時はプロダクションや商業的な取り扱いに対する批評もありましたが、ファンの間ではメンバー再会の喜びとともに高く評価され、以降のYes関連の再結集やツアーに少なからぬ影響を与えました。現在では、80〜90年代のプログレ再興期を語るうえで外せない重要な出来事とされています。

まとめ

Anderson Bruford Wakeman Howeは、クラシック期Yesの精神を受け継ぎつつ、80年代末の音像で再解釈を試みた意欲作です。卓越した演奏技術、深いメロディ、そしてスピリチュアルな歌詞世界は、プログレッシブ・ロックの魅力を純粋に味わいたいリスナーに強く訴えかけます。初めて触れるならセルフタイトルのスタジオ盤とライブ盤を聴き比べることをおすすめします。

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