ウォルター・ベッカー徹底ガイド:Steely Danの名盤・代表曲とソロ作の聴きどころ&おすすめ
はじめに — ウォルター・ベッカーとは
ウォルター・ベッカー(Walter Becker)は、ドナルド・フェイゲンとともにSteely Danを結成したベーシスト/ギタリスト/ソングライター/プロデューサーです。彼の作曲眼、歌詞世界、そしてスタジオでの厳密なサウンド追求は、ジャズ、ロック、R&B、ポップの境界を横断する独特の音楽性を生み出しました。本稿では、ベッカー個人の活動と、Steely Danの作品の中でも特に彼の存在感が顕著な名盤・代表曲をピックアップし、曲作り、編曲、演奏面、聴きどころなどを深掘りして解説します。
Walter Becker 名義のおすすめレコード(ソロ作品)
11 Tracks of Whack(1994)
Beckerの初ソロ作。Steely Dan解散後の成熟した視点とダークなユーモアが詰まっています。総じて渋いトーンで、ジャズ的なコード進行と都会的な歌詞が特徴。プロダクションは抑制的で、ベッカーのギター、ベース、さらにはプロデューサーとしての感性が前面に出ています。
聴きどころ:歌詞の皮肉/語り口、控えめだが巧みなギター・ワーク、ベッキングのリズム感。Steely Danほど派手ではないが、ベッカーの美学がわかりやすく出た作品です。
Circus Money(2008)
長い沈黙の後にリリースされた2作目。プロダクションはより現代的で、ゲストミュージシャンも多数参加。テーマは都市生活や人間の滑稽さを切り取るもので、シニカルな視点は健在です。
聴きどころ:タイトル曲などで見られる緻密なアレンジ、サウンド構築の工夫、時折覗くメロウなジャズ感。ベッカーのボーカルもさらに表情豊かになっています。
Steely Dan の名盤(Beckerの関与が深い作品)
Steely Danは事実上、ベッカーとフェイゲンのクリエイティブ・ユニットです。以下はベッカーの作曲面・演奏面・サウンド設計が特に重要なアルバムです。
Can't Buy a Thrill(1972)
デビュー作。ポップ寄りの曲からジャジーな曲まで振れ幅が大きく、後のSteely Dan像の原型がここにあります。「Do It Again」や「Reelin' In the Years」など、シングル的な魅力と技巧のバランスが秀逸。ベッカーのリズム感あるギターとコーラス作りが光ります。
Pretzel Logic(1974)
よりジャズ/ブルース色が強くなった傑作。楽曲のアレンジやスタジオワークにおける“完璧主義”の原点が見えるアルバムです。「Rikki Don't Lose That Number」など多彩な楽曲が並びます。
Aja(1977)
Steely Danの到達点とも言われる名盤。洗練されたアレンジ、ジャズ寄りのハーモニー、緻密なスタジオサウンドが結実しています。ベッカーは作曲とアレンジ面でフェイゲンと並び中心的役割を果たし、そのソングライティングの成熟を見ることができます。「Aja」「Peg」「Deacon Blues」など、どの曲も語りどころが多いです。
聴きどころ:リズムの細やかなルック、ブラス/ストリングスの効果的な使い方、ソロにおける抑制と表情。ジャズ的なハーモニー構築とポップな着地の妙。
Gaucho(1980)
制作過程に紆余曲折があったものの、音楽的にはさらに研ぎ澄まされた一枚。テクノロジーとアナログ演奏の融合、そして皮肉を含んだ歌詞世界が特徴的です。ベッカーのソングライティングが持つダークなユーモアが際立ちます。
ベッカーの音楽的特徴と聴きどころ
リリックの視点:シニカルで観察眼が鋭い。都会の人間模様や人間の滑稽さを冷静に切り取る語り口が多い。
ハーモニー/コード感:ジャズに由来する複雑なコード進行をポップスの文脈に落とし込み、違和感なく聴かせる手腕。
アレンジ/プロダクション:無駄を排した精密なサウンド作り。セッション・ミュージシャンの起用と微妙なバランス調整で“完璧”な一音を追求する姿勢。
楽器的側面:ベース/ギターのフレージングはリズムを巧みに支えつつも楽曲に色を添える。控えめだが効果的なプレイが多い。
初めて聴く人へのおすすめの聴き方
まずは代表曲を通して“メロディと言葉”をつかむ:Steely Danのシングル群(Do It Again, Reelin' In the Years, Rikki Don't Lose That Number, Peg, Hey Nineteenなど)を聴いてベッカーの作風を掴んでください。
次にアルバムを通して“サウンドの完成度”を体感:特にAjaはアルバム制作の完成度と音楽的幅の高さが分かりやすいので通して聴くことをおすすめします。
ベッカーのソロ作品は“作家としての個性”が前面に出るので、歌詞や少し内省的なアレンジを味わってください。
関連作・コラボレーション
Beckerはフェイゲンとの共同作業以外にも、様々なアーティストのレコーディングに参加しています。Steely Dan後期のリリースやベッカーのソロ期におけるゲスト参加作品も、彼の音楽的幅を理解するうえで参考になります。
まとめ
ウォルター・ベッカーは、完璧主義的なスタジオワークとシニカルで観察眼に富む作詞、ジャズに根ざした和音感覚で、ポップス/ロックの枠を超えた独自の世界を築きました。まずはSteely Danの代表作(特にAjaやPretzel Logic)でその音世界を体験し、ソロ作でさらに彼個人の声と視点に触れてみてください。
参考文献
- Steely Dan 公式サイト
- Wikipedia: Walter Becker
- The New York Times: Walter Becker obituary
- Rolling Stone: Walter Becker obituary
- AllMusic: Walter Becker
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