The Meters入門 — ニューオーリンズ発ファンクの定番と名盤・聴き方(Cissy Strut解説)
The Meters — 概要
The Meters はニューオーリンズ出身のインストゥルメンタル/ファンク・バンドで、1960年代後半から1970年代にかけて活動し、モダン・ファンクの礎を築いた存在です。核心メンバーはアート・ネヴィル(鍵盤)、ジョセフ“ジガブー”モデルイスト(ドラム)、レオ・ノチェンテッリ(ギター)、ジョージ・ポーターJr.(ベース)で、後にシリル・ネヴィルが合流する時期もあります。
結成と活動の流れ
- 結成背景:ニューオーリンズの地元シーンで育ち、セッション・ミュージシャンとしての経験を積んだ4人が集まり、独特のグルーヴを武器にバンドとして頭角を現しました。
- レコーディングとプロデューサー:アレン・トゥーサン(Allen Toussaint)らと仕事をし、Josie や Reprise などのレーベルで録音。シンプルながら洗練されたサウンドでリスナーを魅了しました。
- 活動期:1969年前後のシングル「Cissy Strut」を皮切りにアルバムを立て続けに発表。1970年代中盤にはメジャーな評価とツアーを重ねますが、メンバーの方向性の違いや外部要因で後に分裂・派生ユニットの活動へと移行します。
サウンドの特徴と魅力
The Meters の魅力は「グルーヴそのもの」を前景に置く演奏哲学にあります。以下の要素が特に重要です。
- ポケット感(“the pocket”):ドラムとベースの極めて緻密な呼吸。モデルイストの複雑なシンコペーションとポーターの太いベースラインが噛み合い、余分な装飾を排した“揺るがないグルーヴ”を生み出します。
- ミニマリズムと隙間の美学:ギターやオルガンのフレーズは無駄をそぎ落とし、音と音の間(間合い)を活かすことでリズムが浮かび上がる設計になっています。
- ニューオーリンズのリズム感:セカンドライン由来のスウィングやアクセントの取り方が、他のファンク・バンドとは一線を画す独自性を与えています。
- 即興性とアンサンブルの緊張感:メンバー間の相互反応が鋭く、ソロを取る場面でも全体のグルーヴを損なわないバランス感覚があります。
代表曲・名盤(入門リスト)
まずはここから聴くと The Meters がよく分かります。
- Cissy Strut(シングル/1969)— バンドの代名詞的インスト。シンプルながら強烈なグルーヴで一躍注目を浴びました。
- Look-Ka Py Py(アルバム/1969)— 初期の名作。短いインスト曲群の妙が詰まっています。
- Struttin'(アルバム/1970)— バンドのスタイルが固まった時期の傑作。
- Rejuvenation(アルバム/1974)— よりソウルフルで洗練されたプロダクションの代表作。幅広い聴衆にアピールした1枚です。
- Fire on the Bayou(アルバム/1975)— ニューオーリンズ色とファンクが融合した佳作。
スタジオ/セッションワークと他アーティストへの貢献
The Meters は自分たちの作品だけでなく、セッション・ミュージシャンとしても多くのレコーディングに参加しました。特にリー・ドーシー(Lee Dorsey)などの楽曲でリズムを支え、ニューオーリンズのサウンドを外へ広める役割を果たしました。
影響とレガシー
- ファンクの基礎:ジェームス・ブラウン流とはまた違う路線で“グルーヴ主導”のファンクを提示し、後のミュージシャンに多大な影響を与えました。
- サンプリング文化:シンプルで強烈なビートはヒップホップやR&Bで頻繁にサンプリングされ、多くのトラックに引用されています(ヒップホップ世代にも影響が深い)。
- 派生ユニットの継承:オリジナル解散後もメンバーは The Funky Meters や The Meter Men といった形で演奏を続け、世代を超えて曲が演奏され続けています。
- ミュージシャンからの評価:多くのギタリスト、ドラマー、ベーシストが The Meters の“隙間を生かす”アンサンブル技法やグルーヴ感を学び、その手法はロック、ファンク、ポップに浸透しました。
ライブと再結成、その後の動向
オリジナル・ラインアップは1970年代後半に活動が途切れることがありましたが、その後も部分的な再結成やメンバーによる派生ユニットが活動を続け、世界中でライブ演奏を行っています。創設メンバーのアート・ネヴィルは2019年に他界しましたが、バンドの音楽は現在も演奏・紹介され続けています。
聴き方のコツ(初心者向け)
- まずは短いインスト曲(Cissy Strut や Look-Ka Py Py)で“グルーヴ”を身体で感じる。
- ギターやオルガンのフレーズに注目し、「何を弾いているか」より「どのタイミングで入るか」を聴く。隙間の取り方が核心です。
- ドラマーのシンコペーションやベースラインの反復がどう曲全体を支えるかを意識すると、The Meters の真骨頂が見えてきます。
- スタジオ録音とライブ録音を比較して聴くと、演奏の即興性と安定したポケット感の両面が理解できます。
おすすめ入門プレイリスト(短時間で押さえる名曲)
- Cissy Strut
- Look-Ka Py Py
- Just Kissed My Baby
- Hey Pocky A-Way
- Africa
- Fire on the Bayou
まとめ
The Meters は“音の間”を大切にするミニマリズム的アンサンブルと、ニューオーリンズ特有のリズム感を融合させたバンドです。そのサウンドは直接的な派手さよりも“持続するグルーヴ”で聴く者を引き込み、後の世代のファンク、ソウル、ヒップホップに多大な影響を与えました。まずは代表的なシングルやアルバムを数曲聴き、リズムの細部—ポケット、シンコペーション、隙間の取り方—に耳を傾けてみてください。きっと新しい音楽的発見があります。
参考文献
- The Meters - Wikipedia
- The Meters | Biography & History - AllMusic
- The Meters Biography - Rolling Stone
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