バーデン・パウエル入門:ボサノヴァ×アフロで再発見するギター名盤と聴きどころ
Baden Powellとは — ブラジル音楽史に刻まれたギターの巨匠
バーデン・パウエル(Baden Powell de Aquino, 1937–2000)は、ブラジルのギタリスト/作曲家で、ボサノヴァやサンバの流れをくむ演奏語法に、アフロ=ブラジル的なリズムやクラシックの技巧、ジャズ的な和声感を融合させた独自の世界で知られます。ヴィニシウス・ヂ・モライス(Vinícius de Moraes)ら詩人や歌手との共同作業を通じて名曲を生み出し、特に〈Afro-Samba〉系列の作品はブラジル音楽の革新的な到達点と考えられています。
サウンドの特徴と聴きどころ
アフロ=ブラジルのリズム感:バーデンの代表作群は、サンバやボサノヴァにアフロ=ブラジル宗教音楽(カンドンブレなど)のリズムやコール&レスポンス的要素を取り入れています。ギターの旋律と打楽器の間で「儀礼的な」リズムが交差する感覚が聴きどころです。
クラシックとジャズの技術:右手の繊細なフィンガリング、高度な和声処理(テンションの多用、非機能的進行)、そして即興的なフレージングが混ざり合い、単なる伴奏楽器を超えた「ソロ楽器」としてのギター像を提示します。
曲の語り口:歌ものでは詩とリズムが一体となった表現力が魅力。インストゥルメンタルでは、短いモチーフを繰り返しつつ色彩的に展開する構築感に耳を奪われます。
おすすめレコード(入門〜深掘り)
ここでは「まず押さえておきたい1枚」から「技術的/音楽的に深掘りしたい人向け」まで、バーデン・パウエル聴取の道しるべになるレコードをピックアップして解説します。
Os Afro-Sambas(Vinícius de Moraes & Baden Powell) — 絶対の代表作
バーデンと詩人ヴィニシウスの共同作業から生まれたアルバム群のハイライト。カンドンブレやバイーアのリズムを取り入れた新しいサンバ/ボサノヴァの地平が開かれています。代表曲〈Canto de Ossanha〉〈Canto de Xangô〉などは、歌とギター、打楽器の密な絡みが聴ける名演です。バーデンのアレンジ能力と即興の妙が直に伝わる“核”の1枚。
聴きどころ:伝統宗教的モチーフの取り込み方、歌とギターの呼吸、打楽器アンサンブルとのバランス。
代表的なインスト作品群(例:「Consolação」など) — 作曲としての深さを味わう
「Consolação」はバーデンを代表するインスト曲のひとつで、哀愁を帯びた旋律と複雑な和声が同居します。アルバム単位でのタイトルは版により差がありますが、彼のインスト演奏を集めた盤やコンピレーションで聴くと、ギター奏法の繊細さとダイナミクスの幅がよくわかります。
聴きどころ:和声の色づけ(テンション/分数和音)、メロディの語り口、右手のニュアンス。
ヴィニシウスとの他の共演作/ボーカル作品群 — 歌物の名演を探る
ヴィニシウスとバーデンの共作は〈Afro-Sambas〉だけではありません。歌と詩の相互作用を重視した録音群は、文化的背景(宗教・民俗)を歌に取り込みつつ、ギターが詩を補強する役割を担います。歌詞の内容と楽器の表情が密接に結びつく点に注目して聴くと、改めてバーデンの表現力が見えてきます。
ライブ録音(晩年のライヴ盤) — 即興性と会場の空気感を味わう
晩年に残したライヴ録音は、スタジオ録音以上に即興が前面に出ます。フレーズの放り込み方、観客との関係、曲間の語りがそのまま残るので、バーデンの〈生の息遣い〉を知りたい人に強くおすすめです。
ベスト/コンピレーション盤 — 入手が容易で入門に最適
初めて聴くなら編集盤やベスト盤も有効です。代表曲や重要演奏をコンパクトにまとめたものは、作風の幅を把握するのに便利。お気に入りが見つかったらオリジナル盤や単独アルバムで深掘りすると良いでしょう。
各レコードの聴きどころ(具体的な聴取ポイント)
イントロの置き方を聴け:バーデンはイントロで曲の世界観を即座に提示します。リズムと和声の“約束事”がここで決まり、その後の展開でどのようにフェイクや変化球を入れるかに注目してください。
歌とギターの関係:歌ものではギターが単なる伴奏に留まらず、歌のフレーズに応答したり、詩のイメージを音で補強する役割を果たします。歌詞(詩)の意味を追いながらギターのフレージングを聴くと新たな発見があります。
リズム隊とギターの掛け合い:打楽器やベースとギターがリズム的に会話する場面が多いので、特にカンドンブレ由来のパターンがどのようにギターに反映されているかを追ってみてください。
和声の選択とテンション:テンションコードの使い方、モーダルな響き、時にジャズ的なルートの外し方など、和声的な工夫を注意深く聴くとバーデンの高度さがわかります。
どの盤を選ぶか(オリジナル盤 vs リイシュー)
音質やコレクター性を重視するならオリジナルのブラジル盤は魅力的ですが、マスタリングが古い場合もあります。現代のリマスターや公式リイシューは音像がクリアで聴きやすいため、まずはリイシューや高品質な編集盤で作品世界を把握し、気に入った盤のオリジナルを探す、という順序が現実的です。
バーデンを聴き進めるためのおすすめ順(入門→深堀り)
まず1枚:Os Afro-Sambas(共作作)で世界観を掴む。
次に:インスト中心の編集盤や代表曲(Consolação など)でギター技法を追う。
歌もの/共演作を複数聴いて詩と音楽の関係性を学ぶ。
ライブ録音で即興性とコミュニケーションを確認する。
最後に — なぜ今バーデンを聴くべきか
グローバル化した現代の音楽シーンにおいて、ジャンル横断的な表現を先取りしていたバーデンの音楽は、技術的な見どころが多く、かつ文化的な深みも堪能できます。ギターの可能性を再定義した演奏は、奏者・作曲家・聴き手それぞれに新しい発見をもたらします。レコードというフォーマットで聴くと、時代の空気や演奏者の息づかいがより生々しく伝わってきます。
参考文献
- Baden Powell — Wikipedia (英語)
- Os Afro-Sambas — Wikipedia (英語)
- AllMusic — 検索: Baden Powell
- Discogs — 検索: Baden Powell
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