Airto Moreira(エアルト・モレイラ)完全ガイド:ブラジル・パーカッションが築いたジャズの名盤と聴きどころ

プロフィール — Airto Moreiraとは

Airto Moreira(エアルト・モレイラ、通称 Airto)は、ブラジル出身のパーカッショニスト/ドラマーで、ブラジル音楽とジャズの架け橋として世界的に知られる存在です。ブラジル音楽の豊かなリズム・伝統をバックボーンに持ち、1960〜70年代にアメリカへ渡って以来、ジャズの最前線で多くの名だたるアーティストと共演。奥行きのあるリズム感と色彩豊かなパーカッションワークで、ジャズ・フュージョンやワールド・ミュージックのサウンド形成に大きな影響を与えました。

来歴の概略

  • ブラジルで育ち、幼少期から民族音楽や民俗楽器に触れて育つ。
  • 1960年代にブラジルの先鋭的ミュージシャンたち(Flora Purim、Hermeto Pascoal ら)と関わりを持ち、後に妻となる歌手Flora Purimと共に国際的に活動。
  • 1970年代初頭にはアメリカに拠点を移し、Miles Davis や Chick Corea(および初期の Return to Forever)などの著名なミュージシャンと共演。これにより、ブラジルのリズムをジャズ・フュージョンの文脈に導入した。
  • 以降もリーダー作や多数のコラボレーションを重ね、世界各地の音楽に影響を与え続けている。

Airtoの魅力 — なぜ聴くべきか

Airtoの魅力は単なる「変わった楽器を使う」ことに留まりません。以下の点が彼ならではの魅力です。

  • リズムの色彩感:サンバやマラカトゥ、フォホーなどブラジルの多様なリズムを自在に行き来し、楽曲に独特のカラーと躍動感を与えます。
  • 音色セレクションの巧みさ:パンデイロ、カシシ、クイーカ、ベル、小型の打楽器などを組み合わせ、単調にならない多層的なサウンドを作り上げます。
  • 即興への自然な溶け込み:ジャズ即興の中で「リズムが伴奏」「リズムがソロ」を行き来し、和音進行やソロを邪魔せずに独自の存在感を示します。
  • コラボレーション力:ヴォーカルや管楽器、エレクトリック楽器などジャンルを問わず他者を引き立てるサポート力と、時に主導する表現力を併せ持ちます。

演奏上の特徴とテクニック(聴きどころ)

Airtoの演奏を聴くときに注目したいポイントを挙げます。

  • 間(ま)とグルーヴの扱い:彼は音を詰め込むのではなく、余白を活かしたリズム配置で曲のテンションを調整します。細かな刻みと静寂の対比が効果的です。
  • 多彩な打楽器による色付け:同じ拍子でも楽器の選び方やアクセントで曲の表情が大きく変わります。どの打楽器がどの拍を強調するかを意識して聴くと面白いです。
  • ポリリズム/変拍子への親和性:ブラジル的な複雑なリズム構造を自然にジャズの即興と融合させられる点が、彼の重要な技術的特徴です。
  • 対話的な伴奏:ソロ奏者とのレスポンス(呼応)を重視し、リズムで会話をするようなアプローチが多く見られます。

代表的なコラボレーションと名場面

Airtoは多くの名盤に参加しています。ここでは特に聴きどころの多い代表的な共演例を挙げます。

  • Flora Purim(フローラ・プリム)との共演:彼女とのデュオ/バンドでの作品は、ブラジルのヴォーカル・ジャズとパーカッションの密接な関係を示します。夫妻としての息の合ったアンサンブルは必聴です。
  • Chick Corea / Return to Forever(初期):Return to Foreverの初期ラインナップでの参加は、ブラジル音楽の要素がフュージョンに溶け込む好例。リズムの柔軟性がバンドのサウンドに色を添えています。
  • Miles Davis(エレクトリック期)への参加:1970年代のエレクトリック・ジャズ期におけるマイルスのサウンドに、ブラジル的なパーカッションがテクスチャーを加えた貴重な事例です。
  • Hermeto Pascoal 等との共演:ブラジルの実験音楽的な文脈でも、Airtoは自然に溶け込み豊かな即興表現を見せます。

代表曲・名盤(聴き始めのガイド)

Airtoの世界に触れるための入門盤・重要参加盤の例です。まずは以下を聴いてみてください。

  • Flora Purim のアルバム(彼女のリーダー作には多数Airtoが参加) — ブラジリアン・ジャズの伝統とフュージョン的実験が混ざり合った好例。
  • Chick Corea / Return to Forever(初期作) — ブラジリアンな要素がフュージョンに溶け込んだ重要作品。
  • Miles Davis(1970年代のエレクトリック期の作品群) — ジャズ史上で革新的なサウンドに、Airtoのパーカッションが独特の彩りを与えています。

(注:Airtoはリーダー作も多数あります。リーダー作ではブラジル音楽への忠実さとジャズ的実験性が同居したサウンドが楽しめますので、興味が湧いたらディスコグラフィを参照してみてください。)

なぜ重要か — 影響と遺産

Airtoの活動は単に「良いパーカッション」の提供にとどまらず、以下のような影響を残しました。

  • ジャズとブラジル音楽の融合を促進:米国のジャズ界に本格的なブラジル/南米のリズム・センスを持ち込み、以降の多くのミュージシャンにとって重要な参照点となりました。
  • 打楽器奏法の多様化:伝統楽器のクリエイティブな使い方を実践し、世界中の打楽器奏者に影響を与えました。
  • 跨文化的コラボレーションのモデル:異なる音楽文化を尊重しつつ融合させる姿勢は、現代のワールド・ミュージックの潮流にも通じます。

聴く際のおすすめポイント(まとめ)

  • まずは曲全体の「グルーヴ」を感じること。細かいフレーズよりも全体の推進力に耳を傾けるとAirtoの良さが見えてきます。
  • 使われている打楽器の音色に注目する。楽器が変わるだけでフレーズの意味が変わることがよくあります。
  • ソロ楽器(ピアノ、管楽器、ヴォーカル)との対話を追う。Airtoは「会話」を重視するプレイヤーです。

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