モアシール・サントス(Moacir Santos)入門:必聴レコード3選と聴きどころ・レコード選びのコツ

はじめに — Moacir Santosとは何者か

モアシール・サントス(Moacir Santos)はブラジル音楽とジャズを橋渡しした作曲家/編曲家/マルチ奏者です。20世紀中頃から後半にかけて、緻密なアレンジメントと独自の和声感覚、そしてアフロ=ブラジル的なリズム感覚を融合させた作品群を残し、同時代のブラジル音楽やジャズ奏者たちに強い影響を与えました。

おすすめレコード(厳選して深掘り)

  • Coisas(最も有名な傑作)

    概要:多くの評論家/リスナーが「必聴」と推す代表作。モアシール・サントスの作曲・編曲センスが凝縮されており、ジャズ的な和声、モダンな管編成、そしてブラジル固有のリズムが高次元で融合しています。

    聴きどころ:メロディのユニークさ、曲ごとに変化する色彩豊かな管弦楽アレンジ、そしてしばしば聴き手の予想を裏切る和声進行。楽器のレイヤー感や、薄くかぶるパーカッシブなリズムの入り方に注目すると、サントスの“作曲家”としての独創性がよく見えます。

    おすすめの聴き方:まず通して全曲を把握してから、特にイントロのホーンの動きやブリッジ部の和声転換を繰り返し聴くと新たな発見があります。

  • Carnival of the Spirits(アメリカ期の代表作)

    概要:モアシール・サントスがアメリカ市場向けに作った作品群の中でも評価の高い一枚。ジャズ・ファンクやフュージョンの要素を取り入れつつ、ブラジリアンな感性は失っていません。ブルーノート等ジャズ系レーベルの流通で知られることもあり、ジャズ寄りのリスナーにも入りやすい作りです。

    聴きどころ:エレクトリック楽器の使い方(控えめなシンセやエレピ)、濃密なホーンのアンサンブル、そしてブラジル的なリズムのモダナイズされた提示。アレンジの“間”やダイナミクスの付け方にも注目すると良いでしょう。

    おすすめの聴き方:曲間のプロダクションやリズムの近代化(エレクトリック楽器導入)に注目しながら、コアなメロディを追ってみてください。オリジナルと再発で音の印象が変わることが多いので、複数の版で聴き比べるのも楽しいです。

  • 中期〜後期のアルバム群・編集盤(コンピレーションで網羅する)

    概要:サントスのキャリアは長く、レアな録音や映画音楽寄りの仕事、アレンジ提供など多岐にわたります。単体アルバムだけで追うのは大変なので、良質な編集盤やボックスセットで“変遷”をつかむのが効率的です。

    聴きどころ:初期の大編成アレンジから、アメリカ移住後のモダンなアプローチ、さらには未発表曲やデモ音源で見える作曲プロセスの痕跡まで、時代ごとの変化を辿ることができます。

    おすすめの聴き方:時系列で聴き、編曲上の手法(管の配列、ハーモニー処理、リズムユニットの構築)がどのように変化したかを追ってください。

各アルバムで注目すべき音楽的要素(技術的・音楽理論的な視点)

  • 和声とモーダルな扱い:サントスは単純なダイアトニック進行に頼らず、モーダルなスケールや変化和音を配して独特の“色合い”を生み出します。ジャズ的なテンションの扱いがブラジル音楽の土台と結びつく点が魅力です。

  • 管編成の運用:単なるホーンの“厚み出し”に留まらず、対位法的な動きや楽器ごとの色彩的な使い分けがされます。複数声部を重ねた時の響きの設計が緻密で、リスナーはスコアを眺めるような感覚を得られます。

  • リズムの多層性:ベーシックなブラジルリズムを基盤に、軽いスウィング感やポリリズムの要素を織り交ぜます。これは聴覚的に“複層的”なグルーブを生み、繰り返し聴くことで各層を分離して聴き取れるようになります。

初めて聴く人への導線(プレイリストの作り方)

  • まずは代表的な1枚(Coisas)を通して聴き、曲ごとの雰囲気をつかむ。

  • 次にアメリカ期の作風がわかる1枚(Carnival of the Spirits等)を聴いて、プロダクション・楽器編成の違いを比較する。

  • 最後に編集盤やコンピで未発表曲や別テイクを聴き、作曲家としての“手の内”を探ると理解が深まります。

レコード選び・コレクションの視点(購入時に注目したいポイント)

  • 音源の版(オリジナル盤か公式リマスターか)で音の印象が変わりやすいので、試聴やレビューを確認してから選ぶと良いです。

  • ジャズ系レーベル(Blue Note 等)の流通がある作品はプレス品質が安定している場合が多く、流通情報(盤の刻印やレーベル表記)を参照してください。

  • ジャケットやインナースリーヴの情報(曲解説、クレジット)が充実した版は資料価値も高いです。解説を読みながら聴くと新たな発見があります。

追補 — なぜ今改めて聴くべきか

21世紀に入ってから、グローバルな音楽再評価の流れの中でモアシール・サントスのユニークさが再発見されています。ジャズ/世界音楽のクロスオーバーや、現代の作曲的アプローチを学びたい人にとって、彼の作品は「教科書」であると同時に心地よい音楽体験を与えてくれます。

参考文献

Moacir Santos — Wikipedia
Moacir Santos — Discogs(ディスコグラフィ確認に便利)
Moacir Santos — AllMusic(レビュー・クレジット参照)

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