ジョーン・サザーランド(La Stupenda)入門:おすすめレコード5選と聴きどころガイド
はじめに — 「ラ・ストゥペンダ」ジョーン・サザーランドとは
ジョーン・サザーランド(Joan Sutherland, 1926–2010)は、20世紀を代表するオペラ歌手の一人で、「La Stupenda(ラ・ストゥペンダ)」の異名で知られるオーストラリア出身のソプラノです。卓越したベルカント技巧、広い音域、透明感のある高音と安定した呼吸法を武器に、特にベルリーニ、ドニゼッティ、ロッシーニなど19世紀イタリア・ベルカント作品の復興に大きな影響を与えました。多くの録音は夫であり長年の指揮者であるリチャード・ボニング(Richard Bonynge)との協働によるもので、音楽史的にも重要なレパートリーの再評価につながっています。
おすすめレコード — 聴く価値の高いアルバムと聴きどころ
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Bellini — "Norma"(ジョーン・サザーランド主演)
なかでも「Casta Diva」はサザーランドの芸術性と表現力を最も象徴するアリアのひとつ。ベルカント特有の長いフレーズ処理、柔らかくも芯のある低音から突き抜ける高音まで、声のレンジと色彩感が存分に味わえます。ドラマ性とアリアの美しさのバランスが取れた演奏で、ベルリーニ芸術の典型を示す録音です。
おすすめポイント:オペラ・アリアとしての完成度、力強さと繊細さの同居、ボニングによる装飾やテンポ感。
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Donizetti — "Lucia di Lammermoor"(ジョーン・サザーランド主演)
ルチアの狂乱の場面("Il dolce suono"/狂乱の場面)はサザーランドの代名詞的レパートリー。技巧的なパッセージワークと劇的表現の融合が聴きどころで、古典的なベルカント・スタイルを堪能できます。演技的な側面も重視された録音が多く、レコードとしての完成度が高い作品です。
おすすめポイント:名場面(狂乱の場面)の名演、色彩豊かな高音、感情表現の幅。
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Rossini — "Semiramide"(ジョーン・サザーランド主演)
ロッシーニの技巧的で華やかな音楽はサザーランドの高いアジリタ(俊敏さ)を活かします。アジルで華麗なパッセージ、精密なディクション、豊かなカデンツァ処理が楽しめるため、彼女の「技巧と表現の両立」を確認するのに最適です。
おすすめポイント:技巧的アリアの名演、装飾音の美しさ、ロッシーニ特有のスマートな舞台感。
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Donizetti / Bellini / Rossini — ベルカント・アリア集(サザーランド&ボニングのリサイタル盤)
オペラの抜粋やアリアを集めたリサイタル盤は、彼女の多彩な表現や異なる作曲家間のスタイル比較に便利です。アルバム形式でまとまっているため、初めてサザーランドを聴く人や、その技術的・音楽的特色を広く知りたい人に向いています。
おすすめポイント:多彩な作曲家を一枚で比較できる、名場面をコンパクトに楽しめる。
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コンピレーション/ボックスセット — "The Decca Recordings" や "The Complete Recordings" 系
オリジナルのアルバムを網羅したボックスセットや、デッカ(Decca)/EMI系の名演集は音質改良や解説の充実が期待できるため、相応の投資に見合う価値があります。歴史的な録音を体系的に聴き比べたい方におすすめです。
おすすめポイント:まとまったコレクション性、比較再生での楽しみ、リマスター音源の存在。
各録音の聴きどころ(少し具体的なガイド)
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声の「線」と「色」を聴く — サザーランドの声は高音が非常に透明で伸びる一方、低めの音にも十分な厚みがあります。長いカデンツァやレガート句を追い、フレーズの始まりと終わりでどのように息を使っているかに注目してください。
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装飾音と即興的なカラズマ(フェイク) — ボニングとの共演録音では、オーナメント(装飾)やカデンツァが豊富に取り入れられています。どのように装飾を使って感情やドラマを作っているかを聴き比べると面白いです。
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対比(共演者)を見る — マリリン・ホーン(Marilyn Horne)など当代の名歌手との共演盤では、声色や役割分担でオペラ全体のバランスがどう変わるかを聴き分けてください。
初めてサザーランドを聴く人への導線
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まずはベスト盤や代表的アリア集で声の美しさと表現の特徴を掴み、その後でオペラ全曲録音(Norma、Lucia、Semiramideなど)に進むと理解が深まります。
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ライブ感を求めるなら初期のスタジオ録音だけでなく、ライヴ録音(舞台感・即興性が高い)も聴き比べると新たな発見があります。
まとめ
ジョーン・サザーランドは単に「高音が出る」歌手ではなく、ベルカント復興を牽引した音楽史的存在です。上で挙げたレコードはその代表的な例で、どれも彼女の技巧、音楽性、ドラマ性を実感できる名演ばかりです。まずはアリア集や代表作の一枚から入って、気に入った演目を深掘りしていくのが楽しみ方の王道です。
参考文献
- Joan Sutherland — Wikipedia
- Joan Sutherland — Encyclopaedia Britannica
- Joan Sutherland — AllMusic Biography
- Joan Sutherland — Discogs(ディスコグラフィ)
- Joan Sutherland — Decca Classics(アーティスト情報)
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