エディタ・グルベローヴァ入門:必聴レコード5選(Lucia・Norma・夜の女王)とスタジオ/ライブの聴きどころ
はじめに — エディタ・グルベローヴァという声
エディタ・グルベローヴァ(Edita Gruberova, 1946–2021)は、20世紀後半から21世紀前半にかけて活躍した代表的なコロラトゥーラ・ソプラノの一人です。鋭い高音、明晰なパッセッジ、そしてベッリーニやドニゼッティなどのベルカント作品における劇的な表現力で知られ、特に「ルチア(Lucia di Lammermoor)」や「ノルマ(Norma)」、「魔笛(Die Zauberflöte)の夜の女王(Queen of the Night)」といった役で高い評価を得ました。
選定の視点 — なぜこれらのレコードを薦めるのか
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レパートリーの代表性:彼女の芸風(超高音の安定性、色彩感、装飾の正確さ)が最もよく表れる代表的役・アルバムを中心に選びました。
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演奏の多様性:スタジオ録音の精緻さと、ライブ録音に見られる即興的・劇的な魅力の両方をバランスよく紹介します。
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入手性:現在中古市場や流通で比較的見つけやすく、リスナーが実際に手に取りやすいタイトルを優先しました。
おすすめレコード(作品別・深掘り)
1) ドニゼッティ:Lucia di Lammermoor(代表作)
ポイント:グルベローヴァの代表的レパートリーで、特に第一幕と最後の第二幕の狂乱シーン、そして終盤のアリアにおける魂の込め方が聴きどころです。彼女の声は劇的なクライマックスでも"鋭く切れる高音"と"繊細な pianissimo"を同時に兼ね備えており、ルチアの多面性(純真さ→狂気)を説得力をもって表現します。
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おすすめポイント:スタジオ録音は音のバランスとディクションの明瞭さが魅力。ライブ盤は演劇性と即興的な装飾が楽しめます。どちらも所有価値あり。
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注目アリア:「Regnava nel silenzio」や第2幕の「Il dolce suono… Lucia!」の扱いを聴き比べると、表現の幅がよくわかります。
2) ベッリーニ:Norma(ベッリーニ・レパートリーの極み)
ポイント:ベッリーニは長いフレーズとレガートが命。グルベローヴァは技術でそれを克服するだけでなく、長いラインの中で微妙な色彩変化をつける能力に優れていました。ノルマは本来ドラマティック・ソプラノ寄りの役でもありますが、彼女は繊細さと力強さを兼ね備えた独自の解釈を示します。
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おすすめポイント:協奏的なコーラス場面や二重唱での呼吸の扱い、終幕近くのクレッシェンドの積み上げ方を注目して聴くとよいでしょう。
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注目アリア:「Casta diva」はレガートの美しさとコントロール力が試される箇所。グルベローヴァのフレージングは個性的です。
3) モーツァルト:Die Zauberflöte(夜の女王のアリア集/役)
ポイント:夜の女王のアリアはコロラトゥーラの華。高音域の正確さ、フレーズの瞬発力、そして恐ろしいまでの強音の表現が求められます。グルベローヴァはこの役において「刺さる高音」と「劇的なアクセント」を生かして強烈な印象を残しました。
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おすすめポイント:短いながらも頂点となる「Der Hölle Rache」はライブでの破壊力が魅力。アリア集の録音(アリア抜粋のリサイタルCD)も、彼女のコロラトゥーラ技巧をまとめて聴けるので入門向きです。
4) ドニゼッティ:Anna Bolena(ドラマティックなベルカント)
ポイント:アンナ・ボレーナは高いドラマ性と繊細な装飾が求められる役。グルベローヴァの演技的アプローチと色彩感が活きるレパートリーです。悲劇の中での静かな独白や、崩れていく心理を声で表現する力量が際立ちます。
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おすすめポイント:スタジオ盤は構成と音質の面で聴きやすく、ライブ盤は演劇性、緊張感に富みます。どちらも違った価値があるため両方チェックを推奨します。
5) リサイタル/アリア集:コロラトゥーラ集・ベッリーニ/ドニゼッティのアリア集
ポイント:オペラ全曲盤は長時間のドラマを楽しむ良さがありますが、リサイタル盤は「短時間で彼女のエッセンス」を味わうのに最適です。技巧的なカデンツァ、色彩変化、小品的な表現が凝縮されています。
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おすすめポイント:初めてグルベローヴァを聴くなら、代表的アリアを集めたリサイタル盤で声質と技術の特徴を掴むのが手早い方法です。
スタジオ録音 vs ライブ録音 — グルベローヴァの聴きどころ比較
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スタジオ録音:音質・バランスが良く、装飾やディクションがクリア。細部のコントロールや弱音の美しさを確認しやすい。
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ライブ録音:演劇的な衝動、即興的なフェイクや延長が聴け、観客の反応や舞台の緊張感が作品の迫力を増します。特に「狂乱」や「絶叫」的瞬間で強い魅力を発揮。
具体的な聴きどころ(トラック別の案内)
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「Il dolce suono… Lucia!」:柔らかい入りと、狂気へと繋がる息づかいの変化。フェイク(装飾)での個性を注目。
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「Casta diva」:フレージングの長さ、呼吸の管理、ダイナミクスの幅を見る。
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「Der Hölle Rache」:アジリタ(素早いパッセージ)の正確さと超高音のスタミナ。
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終幕の独白やアンサンブル:演技力と音楽の両立が試される場面。グルベローヴァの劇的解釈を評価できます。
初めて買うときのおすすめの1枚(入門盤)
まずは「代表アリア集(リサイタル)」か、あるいは彼女の代表役の一枚(Lucia か Norma のいずれか)を選ぶことを薦めます。短時間でグルベローヴァのコアを掴め、気に入れば全曲盤やライブ盤へ進むのが自然です。
コレクター向けの探し方・選び方(簡潔に)
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レビューや解説を読む:Gramophone や Opera News、専門家のレビューで演奏の特徴や録音の良し悪しを確認。
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ライブ録音は演奏年月と会場(都市、劇場)をチェック:演出や共演者で印象が大きく変わります。
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複数の版を比較:同一作品のスタジオとライブを聴き比べると彼女の表現の幅がよくわかります。
まとめ
エディタ・グルベローヴァは、技巧的な正確さと劇的表現を併せ持つ希有なコロラトゥーラです。おすすめは、まずは代表アリア集や「Lucia」「Norma」といった代表作のいずれかを押さえ、その後ライブ録音や他のベルカント作品へ広げること。スタジオ録音で精密さを、ライブで演劇性を楽しむと、彼女の魅力を余すところなく味わえます。
参考文献
- Edita Gruberová — Wikipedia(英語)
- Edita Gruberová — Discogs(ディスコグラフィ参照)
- Edita Gruberová — AllMusic(バイオグラフィ/ディスコグラフィ)
- Gramophone — Edita Gruberová(追悼・解説記事)
- Opera News(各種レビュー検索に役立ちます)
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