Pino Palladino入門:フレットレスが魅せる“歌うベース”と必聴アルバム
Pino Palladino — 概要と位置づけ
Pino Palladino(ピノ・パラディーノ)は、ウェールズ出身のベーシストで、80年代以降のポピュラー音楽/ソウル/ロック/R&Bシーンで最も信頼される“セッションの匠”の一人です。フレットレス・ベースでのメロディアスなラインやグルーヴ感で注目を浴び、ジャンルをまたぐ柔軟性と「歌うような」ベースラインで多くのアーティストから求められてきました。
経歴(ポイント)
- カーディフ(ウェールズ)出身。1980年代にポップ/ソウル系のシーンで頭角を現し、セッションワークのキャリアを確立。
- 初期のブレイクはPaul Youngのヒット作への参加。フレットレス・ベースの独特な響きが話題になり、その後の多数のレコーディング/ツアーに繋がる。
- D'Angelo、John Mayer Trio、The Who をはじめとする幅広いアーティストとコラボレーション。ジャンル横断的に“曲のためのベース”を提供することを得意とする。
演奏スタイルと魅力の深堀り
Pinoの魅力は単なるテクニックの巧みさではなく、音楽における「語り手」としてのベースのあり方を体現している点にあります。以下に主要な特徴を挙げます。
- メロディックなフレーズ:フレットレスやスムーズな指使いを活かし、ベースライン自体が歌うような“メロディ”になる。単なるルート弾きに留まらず、曲の主題や感情を補強する動きをする。
- 音色とタッチのコントロール:低域の芯のあるトーンから、フレットレスならではの甘い滑らかさまで、ダイナミクスとタッチで音色を巧みに作り分ける。プロデューサーやアーティストの求める“空気感”を判断して出力する能力に長ける。
- ポケットとグルーヴ:タイミングの“位置取り”(ポケット)に対する感覚が非常に鋭く、ドラムとのインタープレイでリズムをグッと安定させつつ前に進める。派手さよりも“効く”グルーヴを重視する。
- ジャンル横断の適応力:ソウル〜ネオソウル、R&B、ロック、ポップ、ジャズ寄りのセッションまで、曲に合わせてアプローチを変える柔軟性がある。多くのアーティストにとって“最短で適切な答え”を示せる存在。
- 空間を活かす演奏哲学:余白(音を出さない時間)を恐れず、フレーズの選択で曲のダイナミクスを構築する。結果としてベースが曲全体のバランスを整える役割を果たす。
代表的な参加作・名盤(聞きどころ付き)
- Paul Young — No Parlez(1983)/"Wherever I Lay My Hat"
初期の代表作。フレットレス・ベースが楽曲に独特の色彩を加え、Pinoの名を広めた仕事の一つ。ベースのメロディが曲の“顔”になっている点に注目。 - D'Angelo — Voodoo(1995)
ネオソウルの名盤。Pinoの柔らかなタッチとグルーヴはアルバム全体の有機的なリズム感に大きく貢献している。楽曲ごとに異なるトーンの使い分けを聴き比べてみてください。 - John Mayer Trio — Try!(2005、ライヴ)
ブルース/ロック寄りのトリオでのプレイでは、歌心と躍動感が直截に出る。ライブならではのスリリングなタイム感とフィーリングはPinoが持つ“即時対応力”をよく示している。 - The Who(ツアー/ライブ活動)
ジャンルや演奏規模が大きく異なるロックの世界でも安定した存在感を放つ。大編成やロックの“押し引き”の中でベースの役割を的確に果たす能力がわかる。
レコーディングと現場での役割
優れたセッション・ミュージシャンとしてのPinoの価値は、単に“いいフレーズを弾ける”ことだけではありません。以下の要素が、彼が重宝される理由です。
- 短時間で楽曲を理解する力:デモや歌を聴いて即座に曲の核となるベースラインを提案できる。
- 幅広い音楽言語の習得:スウィング感のあるジャズ寄りのノリから、ヘヴィなロックのグルーヴ、繊細なソウルまで言語を切り替えられる。
- アレンジ視点での貢献:ベースの音の置き方で曲の構成や他楽器のスペースを考慮し、プロデューサーとの協働で楽曲をブラッシュアップする。
- 信頼される“現場力”:レコーディングやツアーでの安定性、現場での提案力、人間関係構築の巧みさも評価される要因。
影響と評価
ピノのプレイは、現代のセッション・ベーシスト像に大きな影響を与えています。特に“歌うベースライン”の美学、サウンド作りの細やかさ、そしてどんなジャンルでも曲を最優先に考える姿勢は、多くの若手ベーシストの模範になっています。音楽評論や同業者からの評価も高く、セッション界の“ゴールデン・スタンダード”的存在と見なされることが多いです。
これから聴く人へのガイド(初めてPinoを聴くなら)
- まずはPaul Youngの初期ヒットを聴き、フレットレスによる表現の温度感を確認する。
- D'Angelo「Voodoo」を通して、ベースが曲全体の“空気”をどう作るかを体感する(楽曲ごとの音色・タッチの違いを聴き分けると面白い)。
- John Mayer Trioのライブ音源で、即興的なやり取りやライブならではのグルーヴ感を味わう。
- 楽曲を聴くときは“ベースの役割は何か(歌を支える・リズムを牽引する・メロディを補完する)”を意識して聴くと、Pinoの選択がよくわかる。
最後に(Pinoの存在意義)
Pino Palladinoは、ベーシストという職能を“楽曲の解釈者”という位置に高めた人物です。卓越したテクニックよりもまず“曲にとって何が最良か”を優先する姿勢、そしてそのための音作りと表現力が、多くのアルバムやライブで不可欠な要素となってきました。ジャンルを問わず「信頼できる音」が必要なとき、名前が真っ先に挙がるベーシストの一人です。
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