ジョン・バルビローリ厳選6枚:必聴名盤と聴きどころガイド — エルガー/デュ・プレ/Halléの名演
はじめに — John Barbirolliとは
サー・ジョン・バルビローリ(John Barbirolli, 1899–1970)は、20世紀を代表する英国の指揮者の一人であり、特にマンチェスターのホール管弦楽団(Hallé Orchestra)の再建と芸術的成熟に果たした役割で知られます。彼の音楽は「温かさ」「歌うような弦の表情」「細部にわたる呼吸感」が特徴で、英国作品のみならずロマン派・後期ロマン派のレパートリーで高く評価されてきました。本コラムでは、バルビローリの代表的・必聴のレコードを厳選して深掘りし、各盤の魅力と聴きどころを具体的に紹介します。
選び方の指針
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「オーケストラの音色」と「呼吸感」を重視:バルビローリの魅力は主に弦楽セクションの歌わせ方にあります。ホール管(Hallé)や主要ロンドン系オーケストラとの録音でその持ち味がよく出ます。
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英国内作曲家の解釈:エルガー、ヴォーン=ウィリアムズ、ディーリアスなど英国音楽の名演が多いので、まずは英国作品から入るのがおすすめです。
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ソリスト盤では「共演者の相性」に注目:例えばジャクリーヌ・デュ・プレとのエルガーは、ソロの熱情と指揮者の詩情が見事に噛み合った一枚です。
おすすめレコード(厳選)
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エドワード・エルガー:交響的変奏曲「エニグマ」ほか — Sir John Barbirolli / Hallé Orchestra
なぜ聴くべきか:バルビローリのエルガー演奏は「人間味」と「内的な呼吸」が際立ちます。テンポ感は決して機械的ではなく、旋律の歌わせ方が非常に自然。特に弦の音色が豊かで、変奏ごとの色合いの違いが明確に伝わってきます。
聴きどころ:
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第ニ変奏〜第六変奏の「語りかけるようなテンポ処理」
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クライマックスでの弦の厚みと管楽器のブレンド
おすすめ盤:HalléとのEMI録音(各種リイシューあり)。全集ボックスでまとめて聴くとバルビローリとホール管の成長がよく分かります。
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エルガー:チェロ協奏曲(Jacqueline du Pré, 指揮:John Barbirolli)
なぜ聴くべきか:デュ・プレの代表録音として知られるこの盤は、ソロの激情と指揮の詩情が見事に融合しています。バルビローリはデュ・プレのフレージングを慎重に支え、独奏の呼吸を尊重する伴奏を提供します。
聴きどころ:
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冒頭の静けさと孤独感の表現。伴奏がソロの「余白」を意識している点
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第3楽章の回想的な表現での弦と木管の色彩感
おすすめ盤:1960年代中盤のEMI録音(ジャクリーヌ・デュ・プレ/ロンドン系オーケストラ)。名盤として複数のリマスターが出ています。
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ラルフ・ヴォーン=ウィリアムズ:交響曲第5番 — Sir John Barbirolli / Hallé Orchestra
なぜ聴くべきか:ヴォーン=ウィリアムズ特有の広がりと牧歌的な風景を、バルビローリは内面から湧き上がるように描きます。弦の歌と木管の詩情がよく調和しており、英国的な色彩を最も分かりやすく体現する録音の一つです。
聴きどころ:
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第1楽章での自然発生的なモチーフの展開
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終楽章の静かな浄化感 — 音楽の「呼吸」を大切にした演奏
おすすめ盤:Halléとの録音(EMI系)。交響曲全集や選集に収録されていることが多いです。
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フレデリック・ディーリアス:管弦楽作品集 — Sir John Barbirolli / Hallé Orchestra
なぜ聴くべきか:バルビローリはディーリアス愛好家として知られ、彼の解釈は色彩感と有機的な流れに富んでいます。海や自然、空気感を描くディーリアスの音楽は、バルビローリの「歌わせる」手腕と相性抜群です。
聴きどころ:
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「Sea Drift」や「On Hearing the First Cuckoo in Spring」などでの繊細な音色の変化
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音楽の呼吸を重視した緩急の付け方
おすすめ盤:Halléとのディーリアス集。ディーリアス入門としても最適です。
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ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 — Sir John Barbirolli / Hallé Orchestra
なぜ聴くべきか:バルビローリはロマン派作品でも深い共感的演奏を聴かせます。このドヴォルザークは、郷愁や人情味を強く前面に出しつつ、オーケストラの響きを豊かに行き渡らせる点が魅力です。
聴きどころ:
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主題の歌わせ方と終楽章の動的なエネルギー
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弦と管の色彩バランスの取り方
おすすめ盤:Halléとの録音やEMIリイシュー。ロマン派好きにも薦められる一枚です。
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ガーシュウィン/ラプソディー・イン・ブルー(管弦楽編)やコンサート・ポップス的な録音 — Sir John Barbirolli / 各オーケストラ
なぜ聴くべきか:バルビローリは英国音楽だけでなく、アメリカ音楽やポピュラーな管弦楽作品にも深みある解釈を与えます。リズム感や色彩感で新たな魅力を見せる録音も存在します。
聴きどころ:ジャズ色やシネマティックな場面での歌わせ方とオーケストレーションの見せ場。
どの版・リイシューを選ぶか
バルビローリの録音は多くがEMI系に残されており、リマスターや全集ボックスが複数出ています。音質向上を求めるなら近年のデジタル・リマスター盤やメーカーによる「Complete Hallé Recordings」的なボックスを検討すると良いでしょう。一方、オリジナルの温もりを楽しみたいならアナログ期の盤の趣きも捨てがたいです。
聴き比べの楽しみ方(短く)
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同じ曲を他の指揮者(ブロムシュテット、サイモン・ラトル、サー・ケネス・フォーレなど)と比べることで、バルビローリの「歌わせ方」「テンポ感」「フレーズの呼吸」が一層際立ちます。
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ソリスト共演盤(例:デュ・プレのエルガー)では、伴奏の「余白の作り方」に注目すると違いが明確に分かります。
まとめ
ジョン・バルビローリは「熱のある歌」と「オーケストラに対する深い愛情」で聴き手の心に届く演奏を残しました。まずはエルガー(特にエニグマとチェロ協奏曲)とヴォーン=ウィリアムズ、ディーリアスの録音から入るのが最も効果的です。録音の数は多く、時代ごとの音色や解釈の違いを楽しめるため、入門→深掘りという聴き方が向いています。
参考文献
- John Barbirolli — Wikipedia
- Sir John Barbirolli — AllMusic(ディスコグラフィ/レビュー)
- Gramophone — バルビローリとホール管に関する記事(レビューや特集)
- Elgar's Cello Concerto — Wikipedia(デュ・プレ録音等の項目)
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