RESTful APIとは|設計原則・URI/HTTPメソッド・認証・運用までの実践完全ガイド

RESTful APIとは

RESTful API(以下、単にREST API)は、Web上でシステム間の通信を行うための設計様式(アーキテクチャスタイル)で、1999年〜2000年にロイ・フィールディング(Roy Fielding)が自身の博士論文で定義した「REST(Representational State Transfer)」に基づきます。RESTの基本的な考えは、サーバー上の「リソース(資源)」を一意に識別し、HTTPという既存のプロトコルの意味(メソッドやステータス)を活用して、そのリソースを取得・作成・更新・削除することです。多くの場合、レスポンスはJSONなどの表現(representation)で返されるため、軽量で扱いやすく、Webやモバイル、マイクロサービス間連携で広く採用されています。

REST の基本的な制約(原則)

  • クライアント–サーバー:UI とデータストアを分離し、独立して進化可能にする。
  • ステートレス:各リクエストは自己完結的であり、サーバーはクライアントのセッション情報を保持しない(認証トークンを除く)。
  • キャッシュ可能:レスポンスにキャッシュ制御を明示して、性能を向上させる。
  • 一様なインターフェース(Uniform Interface):リソースの識別、表現を通じた操作、自己記述的メッセージ、ハイパーメディア(HATEOAS)などを通じて、クライアントとサーバーの相互作用を単純化する。
  • 階層化システム:クライアントは中間サーバー(負荷分散、キャッシュ、認証ゲートウェイなど)を意識せずに通信できる。
  • コード・オン・デマンド(任意):必要に応じてサーバーがクライアントにコード(例:JavaScript)を送ることができる(ただし必須ではない)。

リソースとURIの設計

RESTでは「操作対象」をリソースと見なし、それぞれに一意のURIを割り当てます。URIは名詞ベースで設計し、動詞を入れないのが一般的です。例えば:

  • /users — ユーザーのコレクション
  • /users/123 — ID=123 のユーザーという個別リソース
  • /orders/2023-10/invoices — 特定条件下のコレクション

リソースの表現はJSONが主流ですが、XMLやHAL、JSON:APIなどの標準表現形式を採用することもあります。表現は Content-Type ヘッダーで指定され、クライアントは Accept ヘッダーで期待するメディアタイプを伝えます(コンテンツネゴシエーション)。

HTTPメソッドと意味

  • GET:リソースの取得。安全(副作用なし)であり、キャッシュ可能。HEAD は GET のヘッダーのみを返す。
  • POST:リソースの作成や、処理要求。一般に非冪等(同一リクエストを複数回送ると複数作成される可能性)。
  • PUT:指定リソースの全面置換/作成(IDをクライアントが決める場合)。冪等(何度送っても結果は同じ)。
  • PATCH:リソースの部分更新。仕様上冪等にできるが、実装次第で異なる。
  • DELETE:リソースの削除。冪等。
  • OPTIONS:サーバーがサポートするメソッドなどを問い合わせる。

HTTPメソッドの意味を正しく使うことで、キャッシュやプロキシの利点を享受でき、APIの可読性と正確さが向上します。HTTPの振る舞いに関しては RFC 7231 等を参照すると良いでしょう。

ステータスコードとエラーハンドリング

適切なHTTPステータスコードを返すことはRESTの重要な慣習です。よく使われる例:

  • 200 OK — 成功(リソース取得など)
  • 201 Created — 新規作成に成功(Locationヘッダーで作成先を返す)
  • 204 No Content — 成功したがボディは返さない(削除など)
  • 400 Bad Request — リクエスト不正(バリデーションエラー等)
  • 401 Unauthorized — 認証が必要、またはトークン無効
  • 403 Forbidden — 認可エラー(権限不足)
  • 404 Not Found — リソースが存在しない
  • 409 Conflict — 状態競合(重複作成など)
  • 415 Unsupported Media Type — サポート外のContent-Type
  • 429 Too Many Requests — レート制限に触れた
  • 5xx — サーバー内部エラー

エラーレスポンスには、機械的に解析できるエラーコードと人間向けのメッセージ、必要であれば詳細(validation errors のフィールド毎の情報など)を含めるのが良い慣習です。

キャッシュと条件付きリクエスト

パフォーマンス向上のため、HTTPのキャッシュ機構を活用します。主なヘッダー:

  • Cache-Control — キャッシュの挙動(max-age, public/private, no-cache 等)
  • ETag — リソースのバージョン識別子。条件付きリクエスト(If-None-Match)で304 Not Modified を返せる。
  • Last-Modified / If-Modified-Since — 更新日時ベースの条件付き取得。

正しくキャッシュ制御すれば帯域と応答時間が大幅に改善しますが、誤設定はデータの古さや一貫性問題を招きます。

認証・認可とセキュリティ

APIにおける一般的な認証方式:

  • Basic 認証(HTTPS必須)
  • APIキー(簡易だが漏洩リスクあり)
  • OAuth 2.0 — 権限委譲とアクセストークン管理の標準(多くの公開APIで採用)
  • JWT(JSON Web Token) — ステートレスなトークン表現としてよく使われるが、失効や盗難対策が必要

必ず TLS(HTTPS)を使用し、認証情報や機密データは暗号化して送受信すること。さらにCORS設定、CSRF対策(ブラウザベースのエンドポイントがある場合)、レート制限によるDoS対策、入力バリデーションでのインジェクション防止なども必須です。

HATEOAS(ハイパーメディア)について

HATEOAS(Hypermedia As The Engine Of Application State)は REST の「Uniform Interface」に含まれる概念で、レスポンス内に次に取り得る操作を示すリンクを含めることでクライアントとサーバーの結合度を下げる方法です。実際には全てのREST APIが厳密なHATEOASを実装しているわけではありませんが、リソース間の遷移を明示することでクライアントの汎用性や自動化が向上します(例:HAL, JSON:API のリンク表現など)。

実践的な設計のベストプラクティス

  • URIは名詞を使い、階層構造をわかりやすくする(/users/{id}/orders)。
  • フィルタリング、ソート、ページングはクエリパラメータで提供(例:?page=2&limit=20&sort=-created_at)。
  • バージョニング戦略を決める(URI版/ヘッダー版)。URIバージョニング例:/v1/users。ただし乱用は避け、互換性維持を優先。
  • 冪等性を意識する(PUTやDELETEの再送に備えた設計)。
  • 詳細なエラーメッセージと統一フォーマット(エラーコード、説明、フィールド情報)。
  • OpenAPI(Swagger)などで仕様を文書化し、自動生成やテストを導入する。
  • ログ・メトリクス・トレーシングを整備して運用時の可観測性を確保する。

REST と他の選択肢(gRPC, GraphQL など)の比較

RESTはHTTP/1.1の語彙(メソッド、ステータス、ヘッダー)を活かした分かりやすさと汎用性が強みです。一方で、以下のようなトレードオフがあります:

  • gRPC — 高速なバイナリ通信(HTTP/2)、双方向ストリーミング、IDLベースの型安全が必要な内部マイクロサービス間通信に向く。ただしブラウザ互換や可視性の点でRESTより制約がある。
  • GraphQL — クライアントが必要なデータを一度のリクエストで取得できる柔軟性が強み。エンドポイントは1つに集約されるが、キャッシュや権限付与の設計が複雑になりがち。

用途に応じて選択するのが重要です。公開APIや幅広いクライアント対応が必要ならREST、内部で低レイテンシ・型安全性が求められるならgRPC、クライアント主導の多様なデータ要求があるならGraphQLを検討します。

開発・運用での注意点

  • 後方互換性を重視し、破壊的変更は極力避ける。必要ならバージョン切替を明確にする。
  • APIの契約(Contract)を仕様として厳格に管理し、自動テスト(ユニット/統合/契約テスト)を導入する。
  • ドキュメントは常に最新版に保ち、例やサンプルを充実させる(OpenAPI, SDK自動生成)。
  • スケーリング(負荷、キャッシュ、CDN、レート制限)を早期に考慮する。

まとめ

RESTful APIは、リソース指向・HTTPの既存語彙を活かすことで設計性・拡張性・相互運用性に優れたアーキテクチャです。正しいHTTPメソッド・ステータスコードの利用、URI設計、キャッシュ、認証、ドキュメント化、運用監視といった要素を適切に組み合わせることで、堅牢で使いやすいAPIを構築できます。一方、要件に応じてgRPCやGraphQLなどの代替技術を検討することも重要です。設計時には仕様(FieldingのREST原則やHTTPのRFC)を理解し、実用的なトレードオフを踏まえた実装を心がけましょう。

参考文献