ジョルジ・ベン・ジョール入門 — レコードで聴くべき名盤5枚と聴きどころガイド

はじめに — ジョルジ・ベン・ジョールとは

ジョルジ・ベン・ジョール(Jorge Ben Jor、旧表記 Jorge Ben)は、1960年代から活動を続けるブラジルのシンガーソングライター/ギタリストで、サンバを出発点にボサノヴァ、ファンク、ロック、アフロ=ブラジルのリズムを混ぜ合わせた独自のサウンドを生み出しました。シンプルなギターのリフと強烈なグルーヴ、ユニークな言語センス(ポルトガル語)で、ブラジル国内のみならず世界中のミュージシャンに影響を与えています。本稿では「レコードで聴く価値のある」おすすめアルバムを中心に、作品ごとの特徴や聴きどころを深掘りして紹介します。

おすすめアルバム(概要)

  • Samba Esquema Novo(1963) — デビュー作、代表曲「Mas, Que Nada!」を収録
  • Força Bruta(1970) — あたたかく官能的なグルーヴ、サンバ×ファンクの接合点
  • A Tábua de Esmeralda(1974) — 詩的・神秘性が深まった名盤、思想的・物語的歌詞が魅力
  • África Brasil(1976) — よりダイレクトなファンク/アフロ色、ダンス性が強い傑作
  • País Tropical(1969 のセルフタイトル盤やコンピ) — 大衆的ヒット群とキャッチーさを楽しめる時期

Samba Esquema Novo(1963) — デビューの衝撃

ポイント:

  • 代表曲「Mas, Que Nada!」は世界的にも最も知られた一曲。生来のメロディーメイキングとシンプルなギターリフが光る。
  • サンバの伝統を踏まえつつ、軽やかでポップな感性が前面に出ている。歌とリズムの即効性が高く、初期の魅力をストレートに味わえる。
  • レコードで聴く際の聴きどころは、アナログならではのヴォーカルの濃密さと、ギター/パーカッションの粒立ち。最小限の編成で強烈な魅力を出す方法を体感できる。

Força Bruta(1970) — 官能的なグルーヴの深化

ポイント:

  • 1970年前後の作品群は、サンバとソウル/ファンクがより有機的に結びついていった時期。Força Brutaはその代表格で、ゆったりとしたビートに下支えされた肉体感がある。
  • 歌詞は恋愛や日常の情景を描きつつ、リズムで身体を動かすことを強調する楽曲が多い。ヴォーカルの語りかけるような表現が魅力。
  • スタジオ・アンサンブルやホーンの使い方にも工夫が見られ、サウンドの厚みが増している。アルバム全体を通して聴くと、曲間のグルーヴの変化が楽しめる。

A Tábua de Esmeralda(1974) — 詩と思想の深まり(名盤)

ポイント:

  • 本作は歌詞のテーマが神秘主義、錬金術、歴史的人物や宇宙観に触れるなど、非常に凝った内容になっている。音楽的にも編曲の洗練度が高く、Jorge Benの作家性が頂点に達した一枚とされることが多い。
  • 幻想性のある歌詞と、軽快かつ複雑なリズムのミックスは、聴くごとに新しい発見がある。ポップさと知的好奇心が両立する稀有な作品。
  • 盤で聴く価値:音の奥行きやコーラスの重なり、手数の多いパーカッションなど、アナログ再生だとより細部のニュアンスが立ち上がる。歌詞の世界観を噛みしめながら聴くのがおすすめ。

África Brasil(1976) — ファンクとアフロの合流点

ポイント:

  • よりストレートに“踊れる”方向へ振れた作品。打ち出しの強いビート、ファンキーなギター、ホーン・アレンジでダンスフロア寄りのエネルギーが増している。
  • アフリカへの視線や黒人文化へのリスペクトが音に反映され、サウンドはタイトでエッジが立っている。現代のダンス/クラブ系リスナーにも刺さる要素が多い。
  • レコードで聴く際は、低域のグルーヴ感やドラムの打点を意識して聴くと、当時のバンド力がよく伝わる。

「País Tropical」期(1969頃) — 大衆性とキャッチーさ

ポイント:

  • 「País Tropical」はジョルジ・ベンの代表的ヒットの一つで、ブラジル国内で広く愛される大衆性を示す曲。軽快で踊りやすく、ポピュラー音楽としての魅力が前面に出ている。
  • この時期の音源はシングルやセルフタイトル盤などに分散しているが、入門として「ヒット曲をまとめて聴ける盤」やコンピレーションを押さえておくと良い。
  • レコードで聴くメリットは、当時のアレンジ感やヴォーカル表現の生々しさをダイレクトに感じ取れること。

聴き方のコツと時代ごとの楽しみどころ

ジョルジ・ベンのディスコグラフィーは時代によって趣が大きく変わります。ざっくり分けると:

  • 1960年代:シンプルでメロディアス、サンバのポップ寄り。歌とギターの直線的な魅力。
  • 1970年前後:ファンクやソウルの影響を取り入れ、リズムの深さと身体性が増す。
  • 1974前後(A Tábua de Esmeralda):詩的・思想的な要素が強く、アルバムとしての完成度が高い。
  • 中期以降:実験性と商業性が混在。ダンス寄りのアレンジや世界的なリズムの取り込みが見られる。

初めて聴くなら、まずは「Samba Esquema Novo」で歌とメロディを楽しみ、次に「A Tábua de Esmeralda」で表現の深さを味わい、「África Brasil」でグルーヴの現在性を確認すると良い流れです。

現代への影響とカバー/リミックス

ジョルジ・ベンの楽曲は多くのアーティストにカバーされ、サンプリングや再解釈も盛んです。特に「Mas, Que Nada!」は国際的に何度も再レコーディングされ、ポップやクロスオーバーの代表曲になりました。彼のギターリフやリズムの作り方は、ブラジル音楽だけでなく、世界のブラックミュージックやクラブ・シーンにも影響を残しています。

おすすめの聴き比べ・盤選びのヒント

  • オリジナルLP(60s〜70s)は演奏・アレンジの生々しさと独特の温度感があるため、可能ならオリジナル盤や良好なリイシューを探すのがベスト。
  • 編集盤やベストは“代表曲”を手早く知るには便利。だがアルバム単位での流れ(テーマ性やアレンジの連続性)を楽しみたいならオリジナルアルバムを強くおすすめする。
  • 歌詞に注目:多くの曲はポルトガル語で情景や物語を語るため、歌詞訳をあらかじめ用意しておくと深く楽しめる。

終わりに

ジョルジ・ベン・ジョールは、シンプルな主題から深い世界観までを自在に行き来する稀有な作家です。レコードで聴くことで、演奏の空気感やアンサンブルの息づかいがより強く伝わります。上に挙げた数枚を起点に、彼の多彩な魅力を深掘りしてみてください。

参考文献

Jorge Ben Jor — Wikipedia (English)
Jorge Ben Jor | Biography & Discography — AllMusic
BBC Music — Artist pages(一般的な参照)

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