R.E.M.入門ガイド:おすすめレコードと聴きどころ解説
R.E.M. — おすすめレコードを深掘りするコラム
R.E.M.(アール・イー・エム)は、1980年代初頭のアメリカン・インディー/カレッジロックシーンから出発し、オルタナティヴ・ロックを世界的なポップ文化へ押し上げたバンドです。本コラムでは、キャリアを代表する「必聴盤」をピックアップし、それぞれのアルバムの聴きどころ、楽曲の特徴、制作上の位置づけや影響力を解説します。初心者がどこから聴き始めるべきか、R.E.M.の音楽性の移り変わりも併せて紹介します。
入門:まずここから聴きたい3枚
- Murmur (1983) — 初期の謎めいた魅力と“ジャングルギター”が詰まった出発点
- Out of Time (1991) — メジャー・ブレイクの瞬間。マンドリンやポップ志向で新たなファン層を獲得
- Automatic for the People (1992) — 死生観や郷愁を描いた、バンドの感情表現が極まった傑作
Murmur (1983)
初期の代表作。プロデューサーはミッチ・イースターとドン・ディクソン。スリリングなギター・テクスチャー、曖昧ながらも引き込むマイケル・スタイプの歌詞表現が特徴です。
- 代表曲:Radio Free Europe(初期シングルのリレコーディング版)、Perfect Circle、Talk About the Passion
- 聴きどころ:ミステリアスで“引き算”のアレンジ。歌詞を音色として聴く感覚が楽しい。
- なぜ重要か:大学ラジオ世代から支持され、以降のインディー・ロックへ大きな影響を与えた出発点。
Reckoning (1984)
前作の流れを受けつつ、より“曲”としてのまとまりを強めた2作目。メロディの確かさが光ります。
- 代表曲:So. Central Rain、Pretty Persuasion
- 聴きどころ:ハーモニーの美しさ、スピード感のあるギターとリズム隊のバランス。
- なぜ重要か:バンドが確実に成長していることを示す作品で、ライブでも人気の曲が多い。
Fables of the Reconstruction (1985)
南部的な要素やフォーク色が濃く出た実験的な一枚。ツアーでの摩耗感や土地の物語性が反映された独特の雰囲気があります。
- 代表曲:Driver 8、Can't Get There from Here、Wendell Gee
- 聴きどころ:陰影の強いアレンジ、現地録音的な手触り。歌詞の地理的・物語的イメージに注目。
- なぜ重要か:R.E.M.の音楽的なレンジの広さを示す作品で、コアなファンに特に愛されています。
Lifes Rich Pageant (1986)
プロデューサーにドン・ゲーマンを迎え、サウンドがより明快に。ボーカルの輪郭がはっきりし、政治的・環境的なテーマも見え始めます。
- 代表曲:Fall on Me、Superman
- 聴きどころ:クリーンで力強いプロダクション、メッセージ性の高い歌詞。
- なぜ重要か:商業的にも評価され始め、メジャー進出前夜の充実ぶりがうかがえる。
Document (1987)
よりダイレクトでロック志向の強い作品。シングルのヒットにより、R.E.M.はさらに広い層に知られるようになります。
- 代表曲:The One I Love、It's the End of the World as We Know It (And I Feel Fine)
- 聴きどころ:鋭いリフとストレートな歌詞。力強いライブ・アンセムになりやすい曲が揃う。
- なぜ重要か:バンドが“インディーのシンボル”から“世界的ロックバンド”へ変貌する転換点の一枚。
Green (1988)
ワーナー移籍後の最初のアルバムで、ジャンルの幅を広げた作品。政治や商業性、自身のアイデンティティが交錯しています。
- 代表曲:Orange Crush、Stand、Turn You Inside-Out
- 聴きどころ:ポップさとアート志向のバランス、実験的なトラック構成。
- なぜ重要か:メジャー移籍後も独自性を保ちつつ、より多様なサウンドを模索した一枚。
Out of Time (1991)
メジャー到達の象徴的作品。マンドリンを取り入れたLosing My Religionで世界的大ヒット。ポップとアートの接点で飛躍したアルバムです。
- 代表曲:Losing My Religion、Shiny Happy People、Near Wild Heaven
- 聴きどころ:フォーク寄りの楽器配置とポップな編曲。ボーカル表現の幅が広がる。
- なぜ重要か:彼らにとっての商業的・批評的ブレイクスルーであり、90年代の代名詞的作品。
Automatic for the People (1992)
沈鬱で深い感情を描いた名盤。老いや喪失、郷愁といったテーマが通底し、壮麗なアレンジが際立ちます。
- 代表曲:Everybody Hurts、Man on the Moon、Nightswimming
- 聴きどころ:弦楽やピアノを生かした静謐な場面転換、感情に直接訴える歌詞表現。
- なぜ重要か:深い共感を呼ぶ普遍性があり、批評家・聴衆双方から高く評価された傑作。
Monster (1994)
前作から一転して、歪んだギターと派手なエフェクトを前面に出した“ロック”なアルバム。時代のノイズ感を取り込んだ挑戦作です。
- 代表曲:What's the Frequency, Kenneth?、Bang and Blame、Crush with Eyeliner
- 聴きどころ:ディストーションとグランジ的な空気感。ライブ向けのダイナミズム。
- なぜ重要か:実験性とポップ性の間を行き来し、90年代中盤のサウンドを反映。
New Adventures in Hi-Fi (1996)
ツアー中の録音をベースに作られた、実験性と深みのある作品。ゲストや特殊な録音環境が生む独自の質感があります。
- 代表曲:E-Bow the Letter(Patti Smith参加)、Electrolite、Departure
- 聴きどころ:ライブの即興性とスタジオアートワークが混ざり合った、聴きごたえのある曲群。
- なぜ重要か:制作手法の多様化を示し、バンドの創作の幅が広がった時期の到達点。
2000年代以降の注目作(簡潔に)
- Up (1998) — ビル・ベリー脱退後の再構築。電子音や新機軸が中心。
- Reveal (2001) — 叙情性とプロダクションの美しさが際立つ。
- Accelerate (2008) — 短く尖ったロック回帰。批評的にも好評。
- Collapse into Now (2011) — 解散前の集大成的作品。バンドの多彩さが凝縮。
聴き方のコツ(音楽的ポイント)
- 歌詞と声色を分けて聴く:スタイプの歌詞は暗示的で語り口が変化するため、何度も聴くことで意味の層が見えてきます。
- ギターのテクスチャに注目:ピーター・バックの“ジャングル”系カッティングや、歪み処理の違いがアルバムごとの個性を決めます。
- 時代ごとのプロダクションを味わう:初期のローファイ感、90年代のストリングスとポップ志向、後期の電子実験など、時代背景と制作手法が音に反映されています。
- シングルだけでなくアルバム全体を通して聴く:R.E.M.はアルバム単位でのムード作りが巧み。順番通りに聴くと物語性や色合いがより明確になります。
おすすめの聴き始め順
- まずは「Murmur」でバンドの核を体験 → 「Out of Time」「Automatic for the People」で大衆性と深みを味わう → 「Monster」で90年代中期の実験性を確認
最後に
R.E.M.はキャリアを通じてサウンドを絶えず進化させたバンドであり、初期の神秘性から大衆的成功、さらに成熟後の多様な表現まで、どの段階にも魅力的な作品が揃っています。本稿で挙げたアルバムを順にたどることで、R.E.M.の音楽的進化とその背景にある思想を深く味わえるはずです。
参考文献
- R.E.M. 公式サイト
- R.E.M. — Wikipedia
- R.E.M. — AllMusic(ディスコグラフィ/レビュー)
- R.E.M. — Rolling Stone(アーティスト特集・レビュー)
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