New Orderのレコード完全ガイド:必聴アルバム&12インチ名盤とコレクションの選び方
はじめに
New Orderは、Joy Divisionの残した遺産を受け継ぎながらシンセポップ/ダンス・ミュージックとポストパンクを融合させたバンドとして、1980年代以降のクラブ/ロック両面に大きな影響を与えてきました。本稿では、New Orderのキャリアを辿りつつ、ヴァイナル(レコード)で是非手に入れて聴いてほしい主要作品を深掘りして紹介します。楽曲の特徴、制作背景、聴きどころ、リイシューや編集違いに触れ、コレクション選びの参考になる情報を提供します(再生・保管・メンテナンスに関する解説は含みません)。
New Orderとは:音楽的変遷の概観
1970年代末〜80年代初頭のポストパンク隆盛の中で誕生したNew Orderは、バンドの中心人物であったイアン・カーティスの死後、残されたメンバーがJoy Divisionの延長線上から電子音楽へと舵を切ったことにより独自のサウンドを確立しました。ベースのメロディックな扱い(ピーター・フック)、ドラムの機械的かつダイナミックなリズム(スティーヴン・モリス)、サマリーンのギター/ヴォーカル、ギリアン・ギルバートや後に加わるメンバーのシンセワークが合わさり、ポップでありながらクラブ的な反復美を持つ楽曲を生み出しました。
おすすめレコード(各作品の深掘り)
Movement(1981)
概要:デビュー・アルバム。Joy Divisionの解体直後に作られたため、ポストパンク色が濃く残っている。内省的で暗いトーンと機械的なアレンジが混在する。
- 聴きどころ:アルバム全体のムード、"Dreams Never End" の陰影、"Truth" の緊張感。
- 制作背景:メンバーが転換期にあったため、実験的な要素と未成熟さが同居する作品。後期のダンス志向とは一線を画す。
- レコードとしての魅力:初期のFactoryレーベル期の音像を体感できる点がコレクターの関心を惹く。
Power, Corruption & Lies(1983)
概要:New Orderのサウンドが確立された重要作。シンセとメロディが前面に出てきて、ポストパンクとエレクトロ・ポップの橋渡しをした作品。
- 代表曲:"Age of Consent"、アルバム通して曲同士の流れが洗練されている。
- 聴きどころ:ピーター・フックのベースラインとシンセの融合。アンビエント風味のインストからポップスまで振れ幅が広い。
- 収集ポイント:オリジナル盤や初期プレスは音の厚みが評価されることが多い。とはいえリマスターで明瞭さが増す再発も人気。
Low-Life(1985)
概要:バンドのダンス志向がより強まったアルバムで、ギター・ポップ的な歌物とクラブ寄りのトラックが共存する。
- 代表曲:"The Perfect Kiss"(12インチ・ミックスが特に名高い)、"Love Vigilantes"(フォーク的なメロディをポップに昇華)。
- 聴きどころ:アナログシンセの暖かさと、リズムの躍動。シングル・ミックスとアルバム・ミックスの違いを楽しめる。
- 盤の選び方:12"シングルに収録されたロング・ミックスやオルタナティヴ・ミックスは楽曲の別側面を提示するので要チェック。
Substance 1987(コンピレーション)
概要:シングル曲や12インチ・ミックスをまとめたベスト・コンピレーション。New Orderを初めて聴く人にも、コレクターにも価値の高い一枚。
- 収録の魅力:"Blue Monday"(12")、"Temptation"(original)、"True Faith" など、シングル・バージョン/拡張版が一堂に会する。
- 聴きどころ:クラブ史に残る12インチ文化とバンドのダンス路線を俯瞰できる。アルバム曲だけでは味わえない編集の妙を楽しめる。
- コレクターズポイント:オリジナルのアナログ12"とSubstance収録ヴァージョンでは編集やミックスが異なる場合があるため、好みに応じて選ぶと良い。
Technique(1989)
概要:クロアチア(当時はユーゴスラビア)のアドリア海での滞在と、当時のアシッドハウス/イビザの影響を受けた作品。明るく躍動するダンス・アルバムとして人気。
- 代表曲:"Fine Time"、"Round & Round"、"Run"。
- 聴きどころ:ハウス・ビートとポップ・センスが融合し、クラブで映えるサウンドスケープに仕上がっている。エレクトロニックなテクスチャが豊富。
- 再発情報:CDリマスターやデラックス・エディションでデモやリミックスが補完されているため、補足音源を求めるなら新装版も有効。
Republic(1993)
概要:レーベル問題、メンバーの離脱などを経た後に発表されたアルバムで、商業的にも大きな注目を浴びた作品。"Regret"などのシングルがヒットした。
- 代表曲:"Regret"(シングルとしての完成度が高い)、"Ruined in a Day"。
- 聴きどころ:90年代初頭のロック/ダンスの中間地点にある音作り。歌メロの完成度が高く、ライヴでの再現性も高かった。
- 選び方のコツ:スタジオ・サウンドとプロダクションの違いを重視するならオリジナルLPか公式リマスターを比較するのがおすすめ。
Get Ready(2001)/Music Complete(2015)
概要:長期間の活動休止の後の再始動作。Get Readyはロック寄りのアプローチ、Music Completeは再びダンスに寄せたモダンなサウンドで、どちらも現代のシーンとバンドの成熟を示す。
- 代表曲:"Crystal"(Get Ready)、"Singularity"、"Restless"(Music Complete)。
- 聴きどころ:過去のスタイルの焼き直しではなく、各年代での成熟を感じさせる。プロダクションが洗練され、ニューリスナーにも入りやすい。
- 盤の選び方:限定カラー盤や特典付き盤がリリースされることが多い。音源的にはデジタル世代のマスタリング傾向がある点に注意。
シングル盤・12インチで聴くべきポイント
New Orderは12インチ・シングル文化と密接に結びついており、オリジナル12"にはアルバム未収録のロング・ミックスやエクステンデッド・パートメントが収められていることが多いです。特に以下のシングルは文化史的にも価値が高いです。
- "Blue Monday"(1983 12")— クラブ史に残る代表作。オリジナル12"の構成やゲートフォールド・スリーブも話題になりました。
- "Temptation"(オリジナル・ヴァージョン)— バンドの初期ダンス志向を象徴する一曲。
- "True Faith"(シングル/リミックス)— 80年代後半のダンス/ポップ両面での成功を示す。
購入時にチェックしたいポイント(音源・エディションの見方)
ここでは再生や保管方法以外の、音楽的/コレクション的な観点での選び方をまとめます。
- オリジナル・プレス vs リイシュー:オリジナルは“当時の音色”を持つ一方、リイシューはリマスターで解像度が上がっていることが多い。音像・好みで選ぶ。
- シングル/12インチのミックス違い:12インチは楽曲の別側面(イントロの拡張、長尺のブレイクなど)を楽しめる。アナログならではのミックス差に注目。
- コンピレーションの役割:Substanceのようなシングル集は“ヒットとバージョンを一度に聴く”ための最適解。アルバム単位での一貫性を求めるなら各オリジナル・アルバムを選ぶ。
- デラックス版/ボーナストラック:デモやアウトテイクは制作過程の理解に役立つ。コレクション重視ならデラックス盤も検討に値する。
聴き方の提案(アルバムごとの楽しみ方)
New Orderはアルバム毎に音楽的な“場”が異なります。例えば:
- Movement:Joy Divisionからの移行期をじっくり味わいたいときに。
- Power, Corruption & Lies:歌とシンセの調和を楽しみたいときに。
- Low-Life / Substance:ダンス寄りの名曲群を断続的に楽しみたいときに。
- Technique:クラブ的な高揚感を求めるリスニングに最適。
- Get Ready / Music Complete:現代的なサウンドで新しい側面を知りたいときに。
まとめ
New Orderの魅力は、ポストパンク的な感性をベースにしつつ、ポップとダンスの狭間で常に新しい試みを続けてきた点にあります。アルバム単位での聴取と、シングル/12インチでのエクステンデッド・ミックスの両方を押さえることで、バンドの芸術性とクラブ文化への貢献をより深く理解できます。レコード収集を通じて、その時代ごとのサウンドの変遷を楽しんでください。
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参考文献
Discogs - New Order(ディスコグラフィ詳細)
AllMusic - New Order Biography
Pitchfork - What Is New Order?(考察記事)
FACT Magazine - The 10 Best New Order Tracks


