ジョン・コルトレーン徹底ガイド:名盤解説・Coltrane changesと聴き方
ジョン・コルトレーン(John Coltrane) — プロフィール
ジョン・ウィリアム・コルトレーン(John William Coltrane, 1926–1967)は、モダン・ジャズを革新し続けたアメリカのサックス奏者/作曲家です。テナー/ソプラノ・サックスを主楽器に、1950年代後半から1960年代半ばにかけて驚異的な創造性を示し、ハーモニー感覚、即興表現、精神性を結びつけた音楽で世界的な評価を得ました。代表的な活動にはマイルス・デイヴィスのグループ参加(1955–58)、自身のクァルテット(McCoy Tyner、Elvin Jones、Jimmy Garrisonとの名カルテット)などがあり、短い生涯の間に多数の名盤を残しました。
コルトレーンの音楽的な軌跡(概略)
- 初期:軍隊やセッションワークを経て、アート・ペッパー、マイルス・デイヴィスらとの共演を経験。テナー奏者としての基礎を築く。
- モダン・ジャズ期:1957年の「Blue Train」などで作曲力と演奏力を示す。1959年前後にマイルス・デイヴィスと共演し、モード奏法に触発される。
- 革新的な和声展開:1960年の「Giant Steps」で示された高速かつ複雑なコード進行(いわゆる“Coltrane changes”)でハーモニーの新地平を開く。
- 精神的・モーダルな探求:1964–1965年にかけて「A Love Supreme」のような宗教的・霊的な作品を発表し、音楽の深い内省を追求。
- 前衛への接近:晩年はアヴァンギャルド、フリー・ジャズ的要素を強め、音色や構造の限界を押し広げた(例:「Ascension」)。
音色とフレージングの特性
コルトレーンの音はしばしば「燃えるような強度」と形容されます。特長としては:
- 濃密で芯のあるトーン:ブロウ(音の出し方)に力があり、長時間にわたる高密度なフレーズでも音像が崩れない。
- モチーフの連鎖と反復:短い動機を繰り返し発展させ、即興の中で有機的な成長を見せる。
- リズム的多層性:Elvin Jonesらと作り出すポリリズムに対して、コルトレーンがフレーズを重ねていくことでテンションが高まる。
- 音域の大胆な活用:低音から極めて高音域まで駆使し、ソプラノ・サックス導入後はさらに異なる色彩を獲得した。
技術的・理論的革新(Coltrane changes など)
コルトレーンは和声的な探求で特に有名です。代表的な技法には:
- Coltrane changes(コルトレーン・チェンジ):「Giant Steps」で明確に示された、三度中心(長三度・長三度での転調など)を用いる一連の進行。伝統的な循環進行よりも速い調の移行を行い、即興に異なる種類のライン運動を要求します。
- モードへの志向:マイルス・デイヴィスの影響もあり、スケール(モード)を中心とした即興が増加。これにより和声の縛りからの解放と、持続的な音響の探求が可能になりました。
- 連続的なパターン化:速度のある音列(シーケンス)を高速で重ねる「sheets of sound」と評された奏法で、ノートの洪水のように音楽的アイデアを展開しました。
代表作と名盤(短評付き)
- Blue Train(1957) — コルトレーンの初期の代表作。ハードバップの枠組みで強靭なソロと作曲力を示す。
- Giant Steps(1960) — 和声的革新の象徴。タイトル曲はコルトレーン・チェンジの教科書的存在。
- My Favorite Things(1961) — ソプラノ・サックスをフィーチャーした作品。タイトル曲でのモーダルなアプローチが印象的。
- Ballads(1963) — 穏やかな表現・歌心を前面に出した異色作。ルベシ的なロングトーンと美しい中低域が味わえる。
- A Love Supreme(1965) — 宗教的・霊的な宣言とも言える傑作。4部構成でコルトレーンの信仰と音楽性が一体となる。
- Crescent(1964) — 「A Love Supreme」直前の深い内省作。よりぼかしの効いた、暗い情緒が漂う。
- Ascension(1966) — 大編成による集団即興を通じた前衛的作品。賛否両論を呼んだが、60年代の前衛ジャズに与えた影響は大きい。
クァルテットと相互作用 — 名リズムセクションの影響
1960年代のコルトレーン・カルテット(McCoy Tyner, Elvin Jones, Jimmy Garrison)は、各メンバーの個性が相互作用して“完全体”を作り上げました。Tynerの四度積み和音(quartal harmony)はコルトレーンのラインに広がりを与え、Elvinのドライヴ感あふれるポリリズムはソロの緊張と解放を生み、Garrisonの土台は大胆な自由度を支えました。この相互作用が、コルトレーンの表現力を一段と高めました。
精神性と音楽 — 「A Love Supreme」に見る信仰の表現
コルトレーンは晩年にかけて音楽を通した霊的探求を深めました。薬物依存からの回復を経て宗教的なインスピレーションに向かい、「A Love Supreme」はその頂点とされます。楽曲は祈りや感謝、告白といった人間的なプロセスを音で表現し、個人的な経験を普遍的な音楽に昇華させた点で特別な意味を持ちます。
聴き方のポイント(深掘りのためのガイド)
- 同じ曲を複数回聴く:初回はメロディと全体の流れを追い、2回目以降はソロのモチーフや展開、リズムセクションの応答に注目する。
- 部分ごとに切り取って集中する:Giant Stepsの冒頭8小節、A Love Supremeの第一部のテーマ、Naimaの和声進行など、短い単位で構造を把握する。
- 和声の移動を追う:特にGiant Steps系の曲では調の急速な移動が即興にどう影響するかを見ると、コルトレーンの理論的発想が見えてくる。
- 音色の変化を記録する:テナーとソプラノでの表現の違い、同一曲内での強弱・音色変化に着目すると、感情表現の幅が分かる。
影響と遺産
コルトレーンは多くのジャズ奏者にとって模範であり続け、ハーモニー理論、アプローチ方法、演奏態度に影響を与えました。Coltrane changesはジャズ教育でも重要な題材となり、彼の精神性はジャンルを超えたアーティストたちにも影響を与えています。現在でも新しい世代が彼の録音を再解釈し続けており、コルトレーンの音楽は時代を超える普遍性を持っています。
まとめ — なぜコルトレーンは今も聴かれるのか
コルトレーンの魅力は、技術的な卓越さと同時に音楽が持つ深い人間性にあります。高度な和声感覚や驚異的な集中力、内的な探求心を音で示した点が、聴き手の知的好奇心と情緒的共鳴の両方を刺激します。ジャズの枠にとどまらない普遍的な表現力が、半世紀以上を経ても色褪せない理由です。
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参考文献
- ジョン・コルトレーン - Wikipedia(日本語)
- John Coltrane | Biography — Britannica
- John Coltrane — AllMusic(アーティストページ)
- John Coltrane Discography — Jazzdiscography Project
- John Coltrane — All About Jazz(関連記事)


