Dead Can DanceをLPで聴く:厳選おすすめアルバムとレコード選び・再生のコツ
イントロダクション — Dead Can Danceとは
Dead Can Dance(デッド・キャン・ダンス)は、リサ・ジェラルド(Lisa Gerrard)とブレンダン・ペリー(Brendan Perry)を中心に、1980年代初頭に結成されたオルタナティブ/ネオフォーク/ワールドミュージック寄りのバンドです。ゴシック・ロックの文脈から出発しつつ、中世音楽、ビザンティン聖歌、東洋やケルトの民俗音楽、アンビエント的な音響処理を大胆に融合させた独自のサウンドで国際的な評価を獲得しました。
このコラムでは、初期から再結成後の作品までを踏まえ、レコード(LP)で聴くと特に魅力が増すおすすめアルバムを厳選して深掘りします。各作品の背景、音楽的特徴、聴きどころ(代表曲)や、レコードでの楽しみ方のヒントを具体的に解説します。
おすすめレコード:選定基準
以下のおすすめは、次の基準で選んでいます。
- バンドの音楽的進化をよく表していること
- 収録曲や演奏、プロダクションがLPフォーマットでの再生に向くこと(ダイナミクスや空間表現が豊かな作品)
- ファンや批評家の評価が高く、代表作と見なされていること
Spleen and Ideal(1985)
位置づけ:初期作のなかでバンドの個性が明確に現れた2作目。ポストパンク/ゴシックの文脈を残しつつ、民族音楽的要素や叙情性が強まった作品。
音の特徴:打楽器や鐘、ペリーの低めのボーカル、リズミカルかつミニマルなアンサンブル。比較的ロック色が残る曲と、儀式的な雰囲気を持つ曲が混在します。
聴きどころ(代表曲):Cantara など。ダイナミックなリズムと東洋的メロディが印象的で、LPでの低域の厚みや空間表現が生きやすい楽曲です。
おすすめ盤:オリジナルの1980年代4AD盤は空気感が独特ですが、近年のリマスター再発は音圧や分離感が改善されていることが多く、聴き比べがおすすめです。
Within the Realm of a Dying Sun(1987)
位置づけ:よりドラマティックでクラシカルな方向へ進化したサード/フォースにあたる重要作。室内楽的アレンジと広がりのあるサウンドが特徴。
音の特徴:弦楽器アレンジ、教会的なコーラス、広がりのある残響。アンビエント的な静寂と劇的な盛り上がりを併せ持ち、LPのサイド構成で物語性を感じられるアルバムです。
聴きどころ(代表曲):アルバム全体がコンセプチュアルに作られているため、通して聴くのが最もおすすめ。LPのA面~B面の流れで劇的な起伏を体感してください。
The Serpent's Egg(1988)
位置づけ:グループの音楽性がより洗練され、音響的・エモーショナルな深さが増した傑作。バンドの代表曲が含まれる、いわゆる“名盤”。
音の特徴:陰影の濃いサウンドスケープ、荘厳なコーラス、リサ・ジェラルドの声が歌の表現として最も象徴的に扱われた作品群の一つ。
聴きどころ(代表曲):The Host of Seraphim — 映画やドキュメンタリーでも多用されるほどの圧倒的なクライマックス感をもつトラック。LPでの重厚な低域と広がる高域が、曲の宗教的な荘厳さを一層引き立てます。
Aion(1990)
位置づけ:中世音楽・ルネサンス音楽の影響が前面に出た作品で、民族音楽的要素とクラシック的アプローチが融合しています。
音の特徴:リュートやラウド、コーラスなど中世的な音色をモダンなプロダクションで再構築。静謐さと儀式性が同居する傑作。
聴きどころ(代表曲):アルバム全体を通してのトーンが魅力。単曲よりもアルバムとしての連続性が光るため、LPのサイドを跨いだ構成での再生を推奨します。
Into the Labyrinth(1993)
位置づけ:バンドとして商業的にも最大の成功を収めた一枚で、洗練されたプロダクションと多様な民族音楽の香りを併せ持つ作品。
音の特徴:スタジオ録音の精度が高く、オーケストレーション的な広がりとポップな要素がバランスよく融合。エレクトロニクスと古楽器が共存しています。
聴きどころ(代表曲):Yulunga (Spirit Dance) など、踊るようなリズム感と神秘性を併せ持つトラックは、LPでの空間再現が映える曲です。
Toward the Within(1994、ライヴ)
位置づけ:ライヴ録音作品。バンドの生の演奏力とスタジオ作とは異なる空気感を捉えたアルバムで、コアなファンに人気です。
音の特徴:ライブならではのダイナミクスや即興的なフレーズ、観客の空気が混ざることで作品に別の魅力を与えています。LPでの臨場感は特に強力です。
Spiritchaser(1996)
位置づけ:90年代中盤の完成形。アフリカや中近東のリズム/メロディを大胆に取り入れた、ワールドミュージック寄りの一枚。
音の特徴:打楽器群の豊かなテクスチャー、ダークだが躍動感のあるサウンド。LPでの低域の表現が楽曲の躍動性と密接に結びつきます。
Anastasis(2012)およびDionysus(2018)
位置づけ:再結成後のスタジオアルバム。キャリア後期における集大成的な側面と新たな試みが混在。
音の特徴:往年の様式美を継承しつつ、現代的なプロダクションやアレンジも取り入れた作品群。往年のファンにとっての“現在形”を示すアルバムです。
聴きどころ:新旧の作風が交差する部分に注目。アナログ再生だと、リサとブレンダンの声のコントラストやアコースティック楽器の質感が際立ちます。
LPで聴く際のポイント(音楽的観点)
- サイド構成を意識する:Dead Can Danceのアルバムは「面と面のつながり」で物語るタイプが多く、A面→B面の切り替えを一つの劇的演出として楽しめます。
- 静と動の対比を味わう:静謐なパート(アンビエント、コーラス)と劇的なクライマックス(打楽器、オーケストレーション)の差異がLPでの再生でより鮮明になります。
- 音場と残響を楽しむ:リサの声や合唱の残響表現が印象的なため、スピーカー/アンプのセッティングでステレオイメージの自然さを追求すると深みが増します(機材の細かい話は割愛します)。
どの盤を選ぶか(購入ガイド的視点)
・オリジナル盤(1980s)
- 当時のプロダクション/マスタリングの空気感がそのまま残っているため、コレクションとしての満足度が高い。
- ただし、経年による劣化や盤面の状態差が大きいので状態チェックは重要です(盤質説明は販売ページ等で確認してください)。
・近年のリマスター/再発盤
- 音像のクリアさやダイナミクスの改善がされていることが多い。再発によってはオリジナルよりも低域が安定するケースあり。
- リマスターの仕上がりはリリースごとに差があるため、レビューを確認して選ぶのが無難です。
結論としては、音楽体験を重視するなら最新の良質なリイシュー、コレクション性や当時の空気を重視するならオリジナル盤を探すのが良いでしょう。
まとめ
Dead Can Danceは、ジャンルや時代を越えて聴く者を別世界に誘う音楽性を持っています。LPで聴くと、彼らの音楽に含まれる「空間」と「手触り」がより明確に伝わり、スタジオ録音やデジタルでは得られない没入感を得られます。本稿で挙げた作品群はどれもLPでの再生に適しており、初めて買うなら『The Serpent's Egg』『Into the Labyrinth』『Spleen and Ideal』あたりから手に取るのが取り組みやすいでしょう。
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参考文献
- Dead Can Dance 公式サイト
- Wikipedia — Dead Can Dance
- AllMusic — Dead Can Dance
- Discogs — Dead Can Dance(ディスコグラフィ情報)


