建築設備で使われるソレノイドバルブとは?仕組み・種類・用途をやさしく解説

1. ソレノイドバルブ(電磁弁)とは?

ソレノイドバルブ(電磁弁)とは、電磁石(ソレノイド)を利用して内部の弁を開閉し、
水・空気・油・ガスなどの流体の流れを自動でコントロールする装置です。

コイルに電気を流すと磁力が発生し、プランジャーと呼ばれる鉄心が動き、
それに連動して弁体が開く・閉じるという単純な構造で動作します。

電動モーター式のバルブと比べて、

  • コンパクト
  • 応答が速い(0.1秒程度)
  • ON/OFF制御が得意

という特徴があり、自動化設備には欠かせない機器です。


2. 基本構造と動作原理

ソレノイドバルブは主に以下のような部品で構成されています。

  • ソレノイドコイル
  • プランジャー(可動鉄心)
  • バネ(復帰用)
  • 弁体・シート
  • 本体(ボディ)

動作の流れ(イメージ)

  1. 無通電時(通常時)
    バネによってプランジャーが押さえつけられ、弁は閉じている(または開いている)。
  2. 通電時
    コイルに電流が流れ磁力が発生 → プランジャーが吸引される
    → 弁体が動き、流体が通る「開」状態(または「閉」状態)になる。

この「電流のON/OFF」だけで流体の制御ができることが、設備自動化に広く使われる理由です。


3. ソレノイドバルブの種類

3-1. ポート数による分類

2ポート(2方弁)
入口と出口のON/OFFを行う最も基本的なバルブ。

3ポート(3方弁)
入口・出口・排気(または別ライン)を切り替える用途。
空気圧機器の制御でよく使われます。

4・5ポート
空気圧シリンダなどを複雑に制御する方向制御弁。
工場設備での使用がメイン。

3-2. 常時状態での分類(NC / NO)

NC(Normally Closed)常閉形

  • 無通電=閉
  • 通電=開
  • 停電時に止水したい時に使用される。

NO(Normally Open)常開形

  • 無通電=開
  • 通電=閉
  • 通常は流しておき、必要な時だけ止めたい用途に適用。

「停電時にどうなってほしいか」でNC・NOを必ず選びます。

3-3. 動作方式(直動式/パイロット式)

直動式(ダイレクトアクティング)

  • 小型・構造がシンプル
  • 小口径・低流量向け

パイロット式

  • パイロット弁の圧力差を使う二段構造
  • 大口径・高圧・大流量に適する
  • 一定の差圧が必要なタイプもあるため設計で確認が必要

4. 建築・設備・土木での用途

4-1. 給排水・衛生設備

  • 給水・給湯ラインの自動開閉
  • 貯水槽・高置水槽の給水制御
  • 自動水栓・自動洗浄(内部の電磁弁)
  • 凍結防止、緊急時の切替制御

4-2. 空調・冷凍冷蔵設備(HVAC)

  • 冷媒ラインのON/OFF
  • ヒートポンプやチラーの切替弁
  • 加湿器の給水制御
  • ボイラー燃料ラインの制御

温調機器の制御ロジックに組み込まれ、精密な管理が可能になります。

4-3. 消防設備・産業設備

  • 消火設備の薬注ライン
  • プラント・処理場での薬品注入ライン
  • 空気圧機器の方向制御

土木インフラでは大型弁はモータバルブが主流ですが、
小口径ラインではソレノイドバルブも使用されます。


5. ソレノイドバルブ選定のポイント

5-1. 流体条件

  • 水/温水/蒸気/空気/油/ガス
  • 粘度やスラッジの有無
  • 使用温度・圧力

異物が多い場合はストレーナー必須です。

5-2. 配管条件

  • 口径
  • 必要流量(Cv値)
  • 設置姿勢(縦・横など制限あり)

大型の場合はソレノイドより電動弁の方が適するケースもあります。

5-3. 電気条件

  • 電源(AC100V / AC200V / DC24V 等)
  • 連続通電の有無(コイルの発熱に注意)
  • 制御盤のリレー容量・PLC仕様との整合

5-4. 停電時の動作(フェールセーフ)

  • 停電したら止まってほしい → NC
  • 停電しても流したい → NO

消防設備や緊急系の設備では特に重要です。

5-5. 設置環境

  • 屋内/屋外
  • 防水・防塵(IP等級)
  • 防爆エリアの有無
  • 高温・高湿度環境への適合

6. 施工・保守で注意すべきポイント

6-1. 施工時

  • 流れ方向(矢印)を守る
  • 設置姿勢の遵守
  • 振動対策
  • ストレーナーの設置

6-2. 電気制御の注意点

  • サージ対策(ダイオード・バリスタ)
  • コイルの発熱対策
  • 配線図に非常時の動作を明記

6-3. 保守

  • 定期的な作動確認(固着防止)
  • ストレーナー清掃
  • コイルの焼損・発熱チェック
  • パッキン類の経年劣化確認

7. まとめ

ソレノイドバルブは、建築・設備・土木の幅広い分野で使われる
「電気信号で流体を瞬時に制御する機器」です。

扱う場面は多く、基礎を理解しておくことで、

  • 設備図面の読み解き
  • リフォーム・改修時の判断
  • トラブル原因の切り分け

が格段にやりやすくなります。


参考文献

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