ヘルマン・プライのリートおすすめ盤と聴き方ガイド|入門から上級まで

はじめに — ヘルマン・プライとは

ヘルマン・プライ(Hermann Prey, 1929–1998)はドイツを代表するリリック・バリトンの一人で、オペラからドイツ・リート(歌曲)まで幅広いレパートリーを残しました。自然で柔らかい声質、明晰なドイツ語の発音、そして歌詞を語るように歌う表現力が特徴で、特にシューベルト/シューマンなどのロマン派リートにおける語り口の巧みさは多くのリスナーや批評家から高く評価されています。本稿では、レコード(オリジナル盤/CD)購入や聴取の観点から「今聴くべきおすすめ盤」をセレクトし、楽曲ごとの聴きどころや選ぶ際のポイントを深堀りして解説します。

おすすめの聴き方・前提

  • リートを聴くときはまず詩を目で追ってから音に耳を傾けると、プライの「語る」歌唱がより深く伝わります。

  • オペラ抜粋やコンピレーション盤で入門し、気に入った曲・作曲家があれば該当の全曲録音(歌曲集や全曲盤)へ移行するのがおすすめです。

  • 同じ曲でも録音年代やピアニスト(あるいは指揮者・管弦楽)の違いで解釈が大きく変わるため、複数録音を聴き比べるとプライの多面性が見えてきます。

リート(歌曲)系の推薦盤

  • シューベルト:『美しき水車小屋の娘(Die schöne Müllerin)』

    プライはシューベルトの語り手としての資質が際立ちます。本曲は物語性が強く、プライの自然な発話感と抒情が作品の流れを損なわずに物語を進めるので、初めて聴く方にも強く勧められます。細かな語尾処理やアクセントの付け方に注目すると、彼のテキスト理解の深さがわかります。

  • シューマン:『詩人の恋(Dichterliebe)』

    シューマンの繊細な心理描写を表現する能力に長けた一枚。プライの歌唱は内面の揺れを過度にドラマティックにすることなく、節度ある抑制で示すため、聴き手は言外の感情を想像する余地を与えられます。ピアノとの対話性(伴奏との間合い)にも注目してください。

  • ブラームス/マーラーの歌曲集

    ブラームスの深みやマーラーの叙情性を歌う際の豊かな色彩感が魅力です。特にマーラーの〈さすらう若者の歌(Lieder eines fahrenden Gesellen)〉のような作品では、プライの語り口が物語性と感情の起伏を自然に繋げます。

  • リート総覧・編集盤(コンピレーション):「The Art of Hermann Prey」的なベスト盤

    複数作曲家の代表的な小品を通してプライの多様な表現を俯瞰できるので、まずは一枚で彼の魅力をつかみたい方に向きます。

オペラ/オペレッタ系のおすすめ盤

  • モーツァルト:『フィガロの結婚(Le nozze di Figaro)』ハイライト/全曲録音

    プライはモーツァルトのバリトン(フィガロ役など)を得意とし、軽やかなフレージングと台詞的な歌唱でキャラクターを生き生きと表現します。モーツァルトのアリアやアンサンブルでの機知ある歌い回しを楽しめます。

  • モーツァルト:『魔笛(Die Zauberflöte)』のパパゲーノ役 ハイライト

    親しみやすい語り口とコミカルな表現が光るレパートリー。オペラ全体の軽妙さを損なわずに人物性を出す点がプライの強みです。

  • オペレッタ/ドイツ・オペラのハイライト

    プライはオペレッタやドイツ語レパートリーでも活躍しました。軽妙さと歌の語りが活きる選曲が多く、ややクラシック寄りの娯楽曲が好みの方に適しています。

録音ごとの選び方ポイント

  • 全集/全曲盤を選ぶか、ハイライト盤を選ぶか — リートの場合、歌曲集の流れ(物語や心理変化)を味わいたければ全曲盤、入門や「代表曲だけ」を楽しみたいならハイライト盤やベスト盤が便利です。

  • 伴奏者や指揮者をチェック — リートではピアニストとの相性、オペラでは指揮者や共演キャストの力量が解釈を左右します。レビューや解説で伴奏者名・指揮者名を確認すると良いでしょう。

  • 録音年代で聴き比べる — 若い時期のフレッシュさ、晩年の成熟した語り口など、年代による声質と解釈の変化もプライの魅力のひとつです。

具体的なおすすめディスク(入門〜上級者向け)

  • 入門:コンピレーション/ベスト盤 — 「The Art of Hermann Prey」や「Hermann Prey: Lieder & Songs」的な編集盤。数曲聴いてプライの色を掴むのに最適。

  • 中級:シューベルト/シューマンの各歌曲集(全曲・全曲集) — 「Die schöne Müllerin」や「Dichterliebe」など、作曲家別の全曲盤で物語構造や曲間のつながりを味わう。

  • 上級:オペラ全曲録音や時期の違うリート全集 — オペラではフィガロやパパゲーノの全曲録音を通して、演技的側面や共演者との化学反応まで含めて楽しむと新たな発見が多いです。

鑑賞時のチェックポイント(曲ごとに聴くとき)

  • テキストの語尾処理(母音の伸ばし方、子音の明瞭さ) — プライのドイツ語は非常に明瞭です。

  • ピアニストやオーケストラとの「間」の取り方 — セリフめいた間合いが歌の意味を左右します。

  • ダイナミクス(音量の起伏)とフレージング — 小さなフレーズの中の抑制・解放に注目すると説得力が伝わります。

まとめ — 何から聴くべきか

まずは編集盤でヘルマン・プライの色をつかみ、気に入った作曲家(シューベルトやシューマン)や作品があれば全曲盤へ進むのが良い流れです。オペラ・オペレッタ好きならモーツァルト系の役でプライの演技性と台詞的歌唱を味わい、リートファンならば『美しき水車小屋の娘』や『詩人の恋』で彼の語りの妙を堪能してください。

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参考文献