Nicoのディスコグラフィーを徹底解説:おすすめレコードと聴き方・聴く順番(The Velvet Underground & Nico から Desertshore まで)

Nico(ニコ)おすすめレコード — 深堀コラム

ドイツ出身のモデル・歌手Nico(クリスタ・パフェン/1938–1988)は、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドとの関わりと特徴的な低い声で広く知られています。ここでは「代表作として聴くべきレコード」を中心に、各アルバムの背景、音楽的特徴、聴きどころを深掘りして紹介します。レコードの再生や保管に関する解説は省き、音楽・作品論に焦点を当てます。

The Velvet Underground & Nico(1967)

Nicoを広く世に知らしめた歴史的な一枚。ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのデビューアルバムにNicoがゲスト参加し、独特の存在感を残しました。アート・シーン(アンディ・ウォーホル)との結びつきや当時の前衛的な空気が色濃く反映されています。

  • 音楽的特徴:ギターの轟音・ミニマルなベースラインに、Nicoのクールで低い歌声が対比的に乗る点が印象的。
  • 注目曲(Nico参加):All Tomorrow's Parties、Femme Fatale、I'll Be Your Mirror — Nicoの声が楽曲の空気を決定づけています。
  • 聴きどころ:バンドとの対話の仕方(Nicoの声がどう楽曲のイメージを変えるか)を聴き比べると面白いです。

Chelsea Girl(1967)

Nicoのソロ・デビュー作。フォーク寄りのアレンジに弦やフルートが重ねられた、当時としてはポップ寄りの装いを持つ作品です。ただし、Nico自身はこの“サウンド・オーバーラップ”について複雑な思いを抱いていたことでも知られます。

  • 音楽的特徴:フォーク/シンガーソングライター的な素地にストリングスや管楽器が被さる形式。楽曲のメランコリックさはNicoの声に合致します。
  • 聴きどころ:Nicoのソロ歌手としての出発点を知るのに最適。歌詞の世界観や声のニュアンスに注目してください。
  • 向いているリスナー:ヴェルヴェット的なアヴァン寄りのサウンドは重く感じるが、Nicoの声をじっくり聴きたい人に。

The Marble Index(1968)

音楽的・批評的にもNicoの代表作に挙げられる一枚。ジョン・ケイル(元ヴェルヴェット・アンダーグラウンド)との協働で、ハーモニウムを軸にした不穏で民族的な響きを作り出しています。美しさと不穏さが同居する“彫刻的”なアルバムです。

  • 音楽的特徴:ハーモニウムや不協和音的なアレンジによるミニマルかつ前衛的な構築。暗く重い詩情が中心。
  • 聴きどころ:従来のポップ構造から離れ、音と沈黙(間)の扱い方、声の“楽器性”が強調される点に耳を傾けてください。
  • 向いているリスナー:静かな禍々しさ、現代音楽的な要素を好む人に強く刺さる作品です。

Desertshore(1970)

The Marble Indexの路線を発展させた、さらに内省的で実験性の強い作品。ジョン・ケイルのアレンジにより、より抽象的で夢うつつのような音空間が広がります。人生観や孤独を描く歌詞世界が印象的です。

  • 音楽的特徴:ミニマルかつ叙情的な構築。しばしば非西洋的な響きや反復フレーズを利用したサウンドスケープが用いられます。
  • 聴きどころ:声と少数の楽器の配置、詩の断片性が織りなす“情景”を音で追体験するように聴くと深みが増します。
  • 向いているリスナー:物語性よりも“ムード”や“質感”を重視する聴き手に向きます。

The End...(1974)

1970年代に入ってからの作品で、これまでの暗めの美学を踏襲しつつ、よりフォークやロックの色合いが差し込まれる面もある作品群の一つ。ソロ活動の幅広さと変化を確認するのに適しています。

  • 音楽的特徴:作曲やアレンジの幅が広がり、過去の作品と比べて曲ごとの色味の違いが顕著です。
  • 聴きどころ:Nicoの声の変化や、曲によって見せる表情のバリエーションに注目すると、彼女のキャリアの多面性が見えてきます。

どの順で聴くか(初心者向け/テーマ別)

  • 入門:まずは The Velvet Underground & Nico(1967)→ Chelsea Girl(1967)でNicoの導入を。バンドとの絡みと最初のソロ作で声と表現を把握できます。
  • 深掘り:The Marble Index(1968)→ Desertshore(1970)でNicoの“核心”へ。実験性と詩の世界を体感できます。
  • ムード別:
    • 前衛/実験が聴きたい:The Marble Index → Desertshore
    • 歌を中心に聴きたい:Chelsea Girl → The End...

Nicoの歌詞・声・影響力についての補足

Nicoの低く冷めた声は楽曲に一種の“距離”や“客観性”を与え、同時に強烈な感情の震えを伴います。歌詞はしばしば孤独、旅、記憶、アート/シーンへの眼差しを扱い、抽象性と具体性が入り混じったテクストになっています。影響面では、後のドリーム・ポップやゴス、実験的フォークなど、多くのアーティストに引用・参照され続けています。

聴き方のTips(音楽的な注目点)

  • 声を“主役”として聴く:Nicoは歌声自体が主役になるタイプの歌手です。歌詞の意味だけでなく、発声・音色・間(ま)の使い方に注目すると新たな発見があります。
  • アレンジの対比を追う:シンプルな伴奏に不協和が差す瞬間や、弦・ハーモニウムなどが声と干渉する箇所は特に印象的です。
  • 時代背景を意識する:1960年代後半から1970年代初頭のアート/クラブ事情や、Nicoが属したNYのアートシーンを知ると聴こえ方が変わります。

まとめ

Nicoのディスコグラフィは、ポップと前衛の境界を行き来する興味深い旅路です。まずはヴェルヴェット・アンダーグラウンドとの共演作で“入り”、Chelsea Girlでソロ初期の佇まいを確認し、その後 The Marble Index/Desertshore で彼女の本質的な表現を味わうのがおすすめです。音楽的にも詩的にも“余白”や“不穏さ”を美しく鳴らす稀有な声を、ぜひじっくり聴いてみてください。

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参考文献