フェラ・クティのアフロビート徹底解説:入門から上級者まで必聴のレコード7選と聴き方ガイド
はじめに — フェラ・クティ(Fela Kuti)とは
ナイジェリア出身のフェラ・クティは、アフロビートというジャンルを確立した音楽家であり、長尺のジャムと強烈な政治メッセージで知られます。1970年代を中心にリリースされた作品群は、リズムの奥行き、ホーン・アレンジ、ポリリズムの使い方、そして社会批評を併せ持ち、いまなお世界中のミュージシャンやリスナーに影響を与え続けています。本コラムでは「レコードで聴くこと」を念頭に、フェラのおすすめレコード(アルバム)をピックアップし、それぞれの聴き所や聴きどころ、聴き始めの順序や楽しみ方を解説します。
選び方のポイント(入門〜上級)
- 初めて聴くなら短めの曲がある作品を:フェラの音楽は1曲が非常に長いことが多いので、最初は曲が分割されている編集盤や、比較的構成がはっきりしたアルバムから入ると取り付きやすいです。
- 政治的メッセージを味わうなら中期70年代:1975〜1978年頃の作品群は、ナイジェリアの軍事政権や社会問題を直接に批判する楽曲が多く、音楽の熱量と内容の濃さが際立ちます。
- ライブ感を楽しむなら長尺トラックを:アルバム全体が長尺ジャムで構成されている盤は、クラブ的なノリや変拍子の楽しさを堪能できます。
- エディション選び:オリジナル盤(ナイジェリア盤)は独特の音色を持ちますが、再発LPやCDで入手しやすい良盤(マスタリングの良い再発)も多いです。盤選びは音の好みと入手性で判断してください。
おすすめレコード(必聴7枚)
1. Gentleman
フェラが“西洋的”な価値観や植民地主義的な振る舞いをユーモラスかつ辛辣に批判した代表作。曲構成は比較的わかりやすく、ホーン・リフとリズムが耳に残ります。入門者にもおすすめの一枚です。
- 聴きどころ:タイトル曲「Gentleman」の皮肉とグルーヴ
- おすすめポイント:歌詞のメッセージが明確で、フェラの思想に触れやすい
2. Open & Close
初期から中期への過渡期を感じさせる作品。アフロビートの基礎が固まってきた段階の演奏が楽しめます。リズム・セクションとホーン群の密度が高く、後の大曲につながるエネルギーを感じられます。
- 聴きどころ:テンポの揺らぎやリズムの重ね方
- おすすめポイント:フェラの演奏的側面を味わいたい人向け
3. Shakara
よりダンサブルでソウルフルな一面を打ち出した作品。伸びやかな歌メロやコール&レスポンスの楽しさがあり、アフロビートの“心地よい揺れ”を感じさせます。
- 聴きどころ:スウィングするグルーヴとホーンのコンビネーション
- おすすめポイント:ダンス寄り、リズムでノリたいときに最適
4. Expensive Shit
フェラの代表曲群を含む、音楽的にも政治的にも重要な作品。タイトル曲の逸話(逮捕にまつわる話)や、都市生活や権力への辛辣な視点が込められています。サウンドは厚みがあり、Afrobeatの完成形に近い一枚です。
- 聴きどころ:力強いホーン・アレンジと反復によるトランス感
- おすすめポイント:政治歌としてのフェラに触れたい人に最適
5. Zombie
軍隊を「ゾンビ」に見立てて批判した曲を中心とする、フェラの中でも特に社会的インパクトの大きい作品。大衆へのストレートなメッセージと、攻撃的なリズムが印象的です。このアルバムを巡って当時の政権との摩擦も激化しました。
- 聴きどころ:タイトル曲の繰り返しとホーン・コールの鋭さ
- おすすめポイント:フェラの政治的攻勢をダイレクトに体感できる
6. No Agreement / Sorrow, Tears and Blood(同時期の名曲群)
この時期の作品群は、直接的な抗議歌とともに、都会生活の悲哀や民衆の声を描き出します。シンプルで力強いリフが多く、歌詞のメッセージ性が強いのが特徴です。
- 聴きどころ:簡潔なフレーズの反復が生み出す高揚感
- おすすめポイント:歌詞の意味も含めて深掘りしたいリスナー向け
7. Beasts of No Nation(後期の到達点)
フェラの社会批評が成熟した後期の代表作。複雑なアレンジやプロダクション面での実験性も見られ、長年のキャリアを経た音楽的深みが感じられます。現代の政治状況と照らし合わせて聴くと響く部分が多い作品です。
- 聴きどころ:後期ならではの構築された曲展開と重層的な楽器配置
- おすすめポイント:フェラを“総体”として理解したい上級者に
聴き方のコツ(レコードで楽しむ観点)
- 一度に1枚を通して聴く:フェラのアルバムは「流れ」で成立することが多く、通して聴くことで曲間の呼吸や抑揚を感じられます。
- 歌詞(英語・パンフォニック)を追う:英語やナイジェリアの言語混在で意味が伝わりにくい箇所もありますが、歌詞を読んでから聴くとメッセージ性が際立ちます。
- 楽器の役割に注目:ベース+ドラムのグルーヴ、リズム・ギターのカッティング、ホーンのリフがどのように入れ替わるかを追うとアレンジの妙を楽しめます。
- 時代背景を把握する:70年代ナイジェリアの政治状況やフェラ自身の活動(政治運動やアフリカ文化復権の主張)を知ると、曲の意図がよく見えます。
入手・エディションについての簡単な目安
フェラのオリジナル・ナイジェリア盤はコレクターズアイテムですが、音像やノイズ感が好みの分かれるところです。リマスターや正規再発(近年は複数レーベルが再発を実施)もあり、音のクリアさや低域の出方が良くなる場合があります。購入時はトラックリストや盤のクレジット(録音年・マスター情報)を確認すると良いでしょう。
聴く順序の提案
- まずは「Gentleman」や「Shakara」で入門
- 次に「Expensive Shit」「Zombie」で政治的メッセージと音楽性の厚さを体感
- 慣れてきたら「Open & Close」「No Agreement」など長尺・ジャム寄りの盤へ
- 最後に「Beasts of No Nation」など後期作で総括
まとめ
フェラ・クティは単なる“ブラック・ミュージック”のアーティストに留まらず、リズムとメッセージを通して社会を問い続けた音楽家です。レコードで聴くと、演奏の空気感やダイナミクス、ライヴの熱量が直に伝わってきます。まずは聴きやすい一枚から始め、徐々に長尺曲や政治的な歌詞に踏み込んでいくと、フェラの世界が立体的に見えてきます。
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参考文献
- Fela Kuti — Wikipedia
- Fela Kuti — Discogs(ディスコグラフィ)
- Fela Kuti — AllMusic(バイオグラフィ&レビュー)
- Red Bull Music Academy — Fela Kuti(記事・講義)
- The Guardian — Fela Kuti(関連記事・訃報など)


