Raspberry Pi 3完全ガイド:Model BとB+の違いからOS・GPIO・活用事例まで徹底解説

Raspberry Pi 3 とは

Raspberry Pi 3(以下「Pi 3」)は、英国の非営利団体 Raspberry Pi Foundation が開発したシングルボードコンピュータ(SBC)シリーズのひとつで、教育用途やプロトタイピング、組み込み用途、ホームサーバーやメディアセンターなど幅広い分野で広く使われています。2016年に「Raspberry Pi 3 Model B」が発売され、続いて2018年に性能や接続性を強化した「Raspberry Pi 3 Model B+」が登場しました。Pi 3 シリーズは、従来モデルに比べてCPUが64bitコアになり、無線LANやBluetoothを標準搭載したことが特徴です。

主なハードウェア仕様(概要)

  • SoC: Broadcom 系の BCM2837(Model B) / BCM2837B0(Model B+)
  • CPU: クアッドコア ARM Cortex-A53(64bit)
    • Model B:最大 1.2GHz
    • Model B+:最大 1.4GHz
  • メモリ: 1GB LPDDR2 SDRAM
  • グラフィックス: VideoCore IV GPU(OpenGL ES 等に対応)
  • ストレージ: microSD カードスロット(ブートメディア)
  • USB: 4ポート USB 2.0
  • 有線LAN: 10/100 Mbps Ethernet(Model B+ は USB 2.0 経由のギガビット相当の高速化)
  • 無線LAN / Bluetooth:
    • Model B:内蔵 2.4GHz 802.11n Wi‑Fi、Bluetooth 4.1(BLE 対応)
    • Model B+:内蔵 デュアルバンド 2.4/5GHz 802.11ac Wi‑Fi、Bluetooth 4.2(BLE)
  • GPIO: 40ピン 互換ヘッダ(HAT 互換)
  • ビデオ/カメラ: フルサイズ HDMI、CSI カメラコネクタ、DSI ディスプレイコネクタ
  • 電源: microUSB 経由 5V 推奨電源(一般に 2.5A 程度を推奨)

Model B と Model B+ の違い(要点)

Pi 3 シリーズには主に Model B(2016年発売)と改良版の Model B+(2018年発売)の2種類があります。主な違いは以下の通りです。

  • CPU クロック:Model B は最大1.2GHz、Model B+ は最大1.4GHzで、B+ の方が処理性能が向上。
  • 無線:Model B は 2.4GHz の 802.11n、B+ はデュアルバンド(2.4/5GHz)の 802.11ac をサポートし、より高速で混雑に強い。
  • Bluetooth:B は Bluetooth 4.1、B+ は 4.2(省電力やレート面で改良)。
  • ネットワーク:B+ は Ethernet 性能と全体のネットワークスループットが改善され、PoE HAT 用のコネクタに対応(別売の HAT が必要)。
  • 熱設計:B+ は基板や電源回路、シールド等が改良され、サーマル面でより安定する設計。

ソフトウェアと対応OS

Pi 3 の公式推奨OSは Raspberry Pi OS(旧 Raspbian)で、Debian ベースのディストリビューションです。Pi 3 の CPU は 64bit ARM アーキテクチャですが、リリース当初は公式イメージが 32bit(armhf)だったため、ソフトウェア互換性とメモリ使用効率のバランスを取りながら動作します。近年は Raspberry Pi OS の 64bit 版も提供されており、用途に応じて選択可能です。

また、Ubuntu(armhf / arm64)、LibreELEC(メディアセンター向け)、RetroPie(エミュレータープラットフォーム)など、多数の Linux ディストリビューションや専用イメージがコミュニティでサポートされています。公式のソフトウェアリポジトリや多数のライブラリ(Python の RPi.GPIO、pigpio、C/C++ 用のライブラリ等)により、教育・開発・組み込みでの開発がしやすくなっています。

代表的な活用事例

  • 学習用途:プログラミング教育、Linux 入門、電子工作のための教材基盤。
  • IoT・プロトタイピング:センサーやアクチュエータと組み合わせた試作機や PoC。
  • メディアセンター:Kodi 等を用いた家庭内のストリーミング再生。
  • レトロゲーム機:RetroPie 等でのエミュレータ運用(性能はモデルにより差がある)。
  • 小型サーバー:軽量な Web サーバー、ファイル共有、ホームオートメーションのコントローラ。
  • ロボティクス:カメラ制御やモータ制御のブレインとして。

電源・放熱・注意点

Pi 3 は USB デバイスを多数接続することを考慮して、安定した電源(5V、一般に 2.5A 推奨)を使用することが重要です。電圧降下やノイズにより USB 機器が不安定になる場合があるため、セルフパワーの USB ハブを使うことも推奨されます。

Model B+ は性能向上に伴い発熱も増えるため、放熱を考慮した筐体やヒートシンク、ファンの利用を検討してください。負荷の高い処理を継続する場合はサーマルスロットリング(性能低下)を防ぐための対策が必要です。

GPIO と拡張性

Pi シリーズの特徴である 40ピン GPIO ヘッダは、HAT(Hardware Attached on Top)規格に準拠する拡張基板と互換性があり、センサーやモータードライバ、ADC、DAC、ディスプレイなど多彩な拡張が可能です。ソフトウェアからは Python(RPi.GPIO、pigpio)、C/C++、Node.js など多数の言語で GPIO を制御できます。

ネットワークとブートオプション

標準的なブートメディアは microSD カードですが、ファームウェアやブートローダの更新により USB マスストレージ(USB ブート)やネットワークブート(PXE に準じた手法)が利用可能になっています。特に Model B+ ではネットワーク機能やブートの安定性が改善されていますが、詳細な手順や対応状況は公式ドキュメントを参照してください。

セキュリティと運用上の注意

  • 初期ユーザーとパスワードの変更:デフォルトユーザー(過去は pi / raspberry)が存在するため、導入時に変更すること。
  • SSH やリモートアクセスを有効にする場合は公開鍵認証やファイアウォール、適切なポート管理を行うこと。
  • OS とパッケージを常に最新に保ち、既知の脆弱性に備えること。
  • 重要なデータはバックアップを取り、microSD の寿命(書き込み回数)を考慮した設計をすること。

購入・互換性・代替機

Pi 3 は比較的低価格で入手しやすく、豊富な周辺機器(ケース、カメラモジュール、HAT 等)が市場にあります。ただし、最新の性能や省電力性を求める用途では Raspberry Pi 4 や Raspberry Pi Zero 2 W など、別のモデルが適していることもあります。購入時は用途・性能・消費電力・I/O 要件を考慮してモデルを選ぶとよいでしょう。

まとめ

Raspberry Pi 3 は教育からプロトタイピング、軽量なサーバー運用や組み込み用途まで幅広く使える、コストパフォーマンスの高いシングルボードコンピュータです。Model B と B+ の違いを理解し、電源や放熱、ブートオプション、セキュリティに配慮することで、安定したシステム構築が可能です。豊富なコミュニティとドキュメントにより、初心者から上級者まで扱いやすいプラットフォームと言えます。

参考文献