Traffic — 英国ロックの跨ジャンル名盤ガイド:John Barleycorn Must Die から The Low Spark of High‑Heeled Boys まで

Traffic — プロフィール総覧

Traffic は1967年に英国で結成されたロック・バンドで、スティーヴ・ウィンウッド(ボーカル/キーボード/ギター)、ジム・カパルディ(ドラム/作詞)、クリス・ウッド(フルート/サクソフォーン)を中核に、デイヴ・メイソンが初期に参加/脱退を繰り返したことで知られます。サイケデリック、フォーク、ジャズ、プログレッシブ・ロックなど多彩な要素を柔軟に取り込み、1960年代後半から1970年代前半にかけて独自の音世界を築き上げました。

結成と主要な歩み(概略)

  • 結成(1967年):スティーヴ・ウィンウッドがスパンナー・デイヴィス・グループ脱退後に結成。デビュー当初からサイケデリック色とポップ感覚が混在。
  • 初期の変動:デイヴ・メイソンはバンドの重要なソングライター/ギタリストだったが、創作面での方向性の違いなどから脱退と復帰を繰り返した。
  • 1970年代の再編成:1969年の一度の解散やメンバーの外部プロジェクトを経て、1970年以降にジャズやフォーク寄りの作品で評価を確立。1971年の『The Low Spark of High‑Heeled Boys』で商業的にも成功。
  • 1974年以降と再結成:1974年に活動を休止・解体。その後、1990年代にスティーヴ・ウィンウッドとジム・カパルディを中心に再結成され、1994年には新作『Far from Home』を発表。

音楽性と魅力の深掘り

Traffic の魅力は、「ジャンルに囚われない自由な発想」と「メンバーそれぞれの個性が重層的に絡み合う点」にあります。以下、主要なポイントを掘り下げます。

  • ジャンル横断のサウンドデザイン:サイケデリックの幻想性、英国フォークの温度感、ジャズの即興性、ソウルのグルーヴが混ざり合う。曲ごとに色合いがガラリと変わる多彩さが特徴。
  • スティーヴ・ウィンウッドの声と演奏:ゴスペルやブルースにルーツを感じさせるソウルフルな歌声と、オルガン/ピアノ/ギターを自在に操る多才ぶりがバンドの音像を牽引。
  • 管楽器・木管の活用:クリス・ウッドのフルートやサックスが、ロックにジャズ寄りの色彩を与え、メロディに独特の柔らかさと空間を作る。
  • ジム・カパルディの言葉と構成力:シンプルながら詩的な歌詞と、楽曲構成での味付けがバンドの世界観を完成させる。リズムの遊びや間合いの取り方が印象的。
  • 即興性と長尺演奏:アルバム・ヴァージョンやライヴでは長いインプロビゼーションが登場することが多く、演奏によって曲が伸び縮みする「生っぽさ」が魅力。

代表曲・名盤ガイド(入門用)

  • Mr. Fantasy(1967):デビュー作。サイケデリック色の強い楽曲群で、バンドの出発点として重要。初期のポップ/実験的要素が混在。
  • John Barleycorn Must Die(1970):フォーク的な伝承曲を現代的に再構築したタイトル曲を含み、アコースティックな表情とウィンウッドの器用さが光る作品。
  • The Low Spark of High‑Heeled Boys(1971):代表作中の代表作。ジャズやブルースを吸収した大曲群と独特の編曲、長尺ナンバーによる深い世界観が特長。
  • Shoot Out at the Fantasy Factory(1973)/When the Eagle Flies(1974):70年代初頭の成熟期を示す作品群。リズムのタイトさとジャズ・ファンク的要素が強まる。
  • 代表曲(シングル/よく知られる楽曲)
    • Paper Sun — 初期のヒットでサイケデリックな香りが強い。
    • Feelin’ Alright? — デイヴ・メイソン作。多くのアーティストにカバーされる名曲(Traffic の演奏版も広く知られる)。
    • The Low Spark of High‑Heeled Boys — タイトル曲は彼らの音楽性を象徴する長尺の名曲。
    • John Barleycorn — 英国伝承に基づくアレンジで、フォークへの敬意を感じさせる。

ライブと演奏スタイル

Traffic のライブはアルバムとはまた違う魅力を放ちます。特に長尺のインプロビゼーション、メンバー間の呼吸によるテンポの操作、管楽器とパーカッションの即興的な掛け合いが聴きどころ。ライヴ録音や再発盤でバンドの生の空気を味わうと、スタジオ盤とは別の「旅」を感じられます。

バンド内の化学反応と創作の緊張感

デイヴ・メイソンの脱退や再加入、メンバー個々の外部プロジェクト(例:スティーヴ・ウィンウッドのBlind Faith参加など)といった動きは、音楽的な緊張と刺激を生み、結果的に作品の幅を広げました。一方でそうした摩擦はバンドの継続性に影を落とす要因にもなりましたが、短期的な解散と再編を通じて独自の表現を洗練させていきました。

なぜ今聴くべきか — 現代リスナーへの魅力

  • クロスジャンル志向の先駆性:ポップ/ロックの枠にとらわれず、ジャズやフォークを自然に取り込む姿勢は現代のジャンル横断的な音楽トレンドにも通じる。
  • 演奏の「生々しさ」:即興や長尺パートによる「音の探求」は、ループやサンプリングの時代においても希少な手触りを残す。
  • ヴォーカルとメロディの説得力:ウィンウッドの声とメロディラインは時代を越える魅力があり、初めてでも引き込まれやすい。

聴きどころと入門ガイド(場面別おすすめ)

  • ゆったり浸りたいとき:John Barleycorn(タイトル曲)や「Empty Pages」のような落ち着いたフォーク寄りの曲。
  • 演奏の妙を味わいたいとき:The Low Spark of High‑Heeled Boys の長尺トラック、ライブ録音での即興部分。
  • キャッチーな一曲を求めるとき:Paper Sun や Feelin’ Alright?(Traffic/メイソン作品)で入口を作るのが取り掛かりやすい。

まとめ — Traffic が残したもの

Traffic は「枠を壊しつつも丁寧に音楽を紡ぐ」バンドでした。その試みは単なる実験性に終わらず、豊かなメロディと深い演奏表現へと結実しています。初期のサイケデリック・ポップからフォーク的な再解釈、ジャズ的即興まで、聴き手を飽きさせない懐の深さを持つため、今なお新しい世代にこそ響く要素が多く残っています。

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参考文献