Wishbone Ashのツイン・リード・ギターが生んだ70年代ロックの名盤とライブの魅力を徹底解説

Wishbone Ash — プロフィールと魅力の概説

Wishbone Ash(ウィッシュボーン・アッシュ)は、イギリス出身のロック・バンドで、ツイン・リード・ギターを軸にしたハーモニー豊かなサウンドで1970年代のロック・シーンに大きな影響を与えました。ブルース、フォーク、プログレッシブ・ロック、ハードロックの要素を織り交ぜた楽曲構成と、ギター同士の緻密なアンサンブルが最大の魅力です。本稿では結成から音楽的特徴、代表作、ライブの魅力、影響力までを深掘りして解説します。

結成と簡単な沿革

簡潔に言えば、Wishbone Ashは1969年にイングランド南西部で結成され、1970年代初頭にアルバムとライヴを通じて注目を集めました。初期の作品群で確立された「ツイン・リード・ギター」によるメロディックなハーモニーは、以後の多くのロック/メタル・バンドに影響を与えました。以降メンバーは変遷を繰り返しますが、バンドは長年にわたりコンスタントにリリースとツアーを続けています。

主要メンバー(オリジナル編成)

  • Andy Powell — リード/リズム・ギター、ヴォーカル(バンドの中心人物であり唯一の常時在籍メンバー)
  • Ted Turner — ギター、ヴォーカル(オリジナルのツイン・リードの片割れ)
  • Martin Turner — ベース、ヴォーカル(初期の楽曲制作における主要メンバー)
  • Steve Upton — ドラム(リズムの屋台骨)

このオリジナル・ラインナップで作られたアルバム群が、いわゆる“クラシック期”と見なされています。その後もローレンス・ワイズフィールド(Laurie Wisefield)ら新たなギタリストを迎えつつ、サウンドは発展していきます。

サウンドの特徴と演奏技法(深掘り)

Wishbone Ashの音楽的な「核」はツイン・リード・ギターの運用にありますが、そこには単なる“同じメロディをオクターブやハーモニーで重ねる”以上の工夫が詰まっています。

  • ツイン・リードの役割分担:一方がメロディを弾き、もう一方がカウンター・メロディやハーモニーを重ねることで、和声的に豊かなテクスチャが生まれる。
  • ハーモニーの使い方:長調・短調のハーモニクス、3度・6度などの和声進行を駆使して、単旋律を和声的に拡張する手法。
  • アレンジ感覚:アコースティックとエレキの使い分け、静と動のダイナミクス、間(ま)を活かしたフレージングで楽曲に物語性を与える。
  • ジャンル横断の融合:ブルース・ベースのソロ、フォークリッチなメロディ、プログレ的な展開をひとつの楽曲に組み込む柔軟さ。
  • ライブ・インプロヴィゼーション:スタジオ曲をベースにしつつ、ライヴではギター同士の即興応酬や延長ソロが多用される。

名盤・代表曲(おすすめ解説)

  • Argus(1972)
    彼らの代表作にして傑作。中世的、英雄譚的なテーマとメロディアスなギター・ハーモニーが集約されたアルバムで、英国チャートでの成功も得た作品です。代表曲:「The King Will Come」「Blowin' Free」「Time Was」「Warrior」など。初めて聴く人にはここから入ることを強く薦めます。
  • Wishbone Ash(1970) — デビュー作
    バンドの出発点で、長尺のジャム/組曲的要素とすでにツイン・リードの萌芽が見える作品。インストゥルメンタルや大作志向のトラックが含まれるのも特徴です。
  • Pilgrimage(1971)/Wishbone Four(1973)
    初期の発展期を示すアルバム群。フォーク的な情緒やブルースの骨格を持ちながら、アンサンブルがより洗練されていく過程が聴けます。
  • Live Dates(1973)
    ライヴ演奏の魅力を伝える名盤。ツイン・リードの即興性や熱量をストレートに味わえる録音で、ライブでのアレンジ違いが楽しめます。
  • Elegant Stealth(2011)
    後年の作品として評価の高いアルバム。クラシック期の要素を現代的な音作りで再構築した一枚で、長年のファンにも新規リスナーにも受け入れられやすい内容です。

代表的な楽曲(短くピックアップ)

  • Blowin' Free — メロディックでキャッチーなツイン・ギターの代表作
  • The King Will Come — 壮大なムードと叙事詩的な展開が魅力
  • Phoenix — インスト主体の大作でドラマ性が高い(初期の傑作)
  • Warrior / Time Was — Argusの流れを代表するトラック群
  • ライブ・テイクの長尺ソロ群 — ライヴ盤での楽しみどころ

ライブでの魅力と聴きどころ

スタジオ音源でも十分に魅力的ですが、Wishbone Ashの本領はライヴでの拡張性にあります。ツイン・ギターの相互作用はその場で生まれるインプロヴィゼーションやテンポ感の変化に応じてさらに化学反応を起こします。聴く際は以下を意識すると良いでしょう:

  • ギター同士の掛け合い(どちらがメロディを弾き、どちらがハモるか)を追う
  • テーマの再現と変奏(スタジオ版との違い)に注目する
  • リズム隊とギターのダイナミクス(静→爆発の緩急)を感じる

影響と評価 — 後進への波及効果

Wishbone Ashが開拓したツイン・リードのアプローチは、ハードロックやヘヴィメタルにおけるギター・ハーモニーの基礎となりました。Thin Lizzyや後のメタル・バンドたちが、複数ギターによるハーモニーやカウンターメロディを取り入れる際の参考として機能したことはよく指摘される点です。楽曲構成の面でも、叙事詩的な展開や長尺曲でのダイナミクス作りはプログレッシブな手法と接近しています。

これから聴く人へのガイド(入門ルート)

  • まずは「Argus」を一周。代表曲とアルバム全体のムードを掴む。
  • 次に「Live Dates」でライヴの熱量と即興性を確認する。
  • 興味が湧いたらデビュー作や「Pilgrimage」を聴き、初期の実験精神を追う。
  • 現代的な音作りが好みなら「Elegant Stealth」などの近年作もチェックする。
  • 鑑賞時はギターのフレーズ、ハーモニーの構造、アレンジの変化に注目すると新たな発見がある。

まとめ

Wishbone Ashは単なる70年代の伝統的ロック・バンドではなく、ギター・ハーモニーとアンサンブルの可能性を押し広げた先駆者の一組です。美しいメロディ、洗練されたギター・ハーモニー、ライヴでの即興的な高揚感――これらが結び付き、長年にわたって色あせない魅力を放っています。初めて触れる人はまず「Argus」と「Live Dates」を入り口にすると、その全貌を効率よく楽しめるでしょう。

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