Scritti Politti入門ガイド:Cupid & Psyche 85を軸に80年代ポップの名盤と代表曲を徹底解説
Scritti Polittiとは — 成り立ちと概観
Scritti Politti(スクリッティ・ポリッティ)は、ウェールズ出身のソングライター/ボーカリスト、Green Gartside(グリーン・ガーツサイド)を中心とした音楽プロジェクト/バンドです。バンド名はイタリア語で「政治的文章(scritti politici)」を意味する造語に由来し、1970年代後半のポストパンク/アートスクール系の出自を持ちます。初期はDIYで政治的・実験的なポストパンク路線でしたが、1980年代半ば以降は高度に練られたソフィスティケイティッド・ポップ(洗練されたポップ)へと方向転換し、精緻なアレンジとポップ・センスで広く注目を集めました。
今聴くべきおすすめレコード
Songs to Remember (1982) — コンピレーション/初期シングル集
初期のシングル群を集めた編集盤。ポストパンク期の実験精神、ダブやスラッシーなギター、政治的な歌詞や前衛的なサウンド・コラージュが感じられます。後のポップ路線とは対照的な荒削りさと知性が魅力で、Scrittiを理解するうえでの出発点として最適です。
聴きどころ:
- 初期の理念的・政治的な歌世界
- ポストパンク/ニューウェイヴ的な実験性
Cupid & Psyche 85 (1985) — 代表作/名盤
Scritti Polittiの商業的・芸術的到達点として広く評価されるアルバム。ポップ・ソングライティングと先鋭的なスタジオ処理が結びついた作品で、流麗なメロディと精緻なプロダクション、Greenの独特の歌唱が鮮烈です。1980年代の洗練されたシンセ/R&B感覚を体現しており、ポップ史における重要盤の一つです。
聴きどころ(代表曲):
- “Wood Beez (Pray Like Aretha Franklin)” — ファンキーでモダンなアプローチ
- “The Word Girl” — レゲエ風味とポップの融合
- “Perfect Way” — 上品なポップ・センス(のちに他アーティストがカバー)
Provision (1988)
Cupid & Psyche 85の流れを受け継ぎつつ、さらに緻密で商業的に洗練されたサウンドを提示したアルバム。シングル曲を中心にポップ性が強まり、80年代後半の音作りや大衆受けの良さが追求されています。賛否は分かれますが、当時のシーンでの存在感は大きい作品です。
聴きどころ(例):
- 楽曲のメロディックな完成度とスタジオ処理の濃密さ
- 80年代前衛ポップの延長線上にあるプロダクション
Anomie & Bonhomie (1999)
90年代後半の再起をかけた作品。サウンドは多様化しており、実験的な要素やヒップホップ/エレクトロニカ的手法も取り入れています。Greenの歌詞と視点は成熟しており、長い活動の中での変化を楽しめる一枚です。
White Bread Black Beer (2006)
よりアコースティックで内省的な側面を前面に出したアルバム。若い頃のポップ至上主義から距離を置き、ソングライティングの深みや人間味が際立ちます。長年のファンや、ポップの別の側面を知りたいリスナーにおすすめです。
代表曲ガイド(入門トラック)
“The 'Sweetest Girl'” — 初期の代表的シングル。メランコリックで文学的なポップ。
“Wood Beez (Pray Like Aretha Franklin)” — 80年代ポップの象徴的な一曲。ダンス性と知性の両立。
“The Word Girl” — レゲエ/ポップのハイブリッド感が独特。
“Perfect Way” — メロディの美しさが際立つ曲。プロダクションのセンスも秀逸。
“Absolute” — 1980年代後期のシングルで、ポップ志向の強さを感じさせる楽曲。
音楽性と魅力を深掘り
Scritti Polittiの魅力は、単に「良くできた80年代ポップ」だけでは説明できません。ポイントは以下の通りです。
知的で言語遊戯的な歌詞 — Greenは時に学術的・メタ言語的な言葉遊びや引用を用いながら、恋愛やアイデンティティ、資本主義や表現の矛盾といったテーマをポップソングのフォーマットで語ります。そのギャップが耳を引きます。
プロダクションへのこだわり — サウンドは非常に精緻で、リズム・トラックからコーラスワーク、ミックスの細部に至るまで計算されています。80年代に典型的なシンセ&ドラムマシンの使用法をポップ的に昇華させました。
ジャンル横断性 — ポストパンク、ダブ、R&B、レゲエ、シンセポップ、ソウルといった要素を横断的に取り入れ、独自のポップ美学を構築しています。
ヴォーカルの個性 — Greenの高く伸びるような、ややブレスの効いた発声は、音色として楽曲の景色を決定づけます。感情表現は抑制されつつも説得力があります。
どのアルバムから聴くべきか(入門順)
はじめて聴くなら:「Cupid & Psyche 85」 — Scrittiのポップ美学を最短で味わえるキーレコード。
歴史的背景を知るなら:「Songs to Remember」 — 初期の文脈と思想的出発点を理解するために。
変化と成熟を辿るなら:「Provision」→「Anomie & Bonhomie」→「White Bread Black Beer」の流れで各時代の試みと成熟を追うのがおすすめ。
コレクションのポイント(購入時に見るべき点)
オリジナル盤は時代の空気を感じられますが、近年のリマスター盤は音像が整理されていることが多いです。どちらを好むかで選ぶと良いでしょう。
シングルや12インチのリミックス(特に80年代のもの)には、アルバム未収録のバージョンやダンス・リミックスが収録されていることが多く、コアなファンには魅力的です。
最後に — Scritti Polittiを聴くということ
Scritti Polittiは「ポップでありながら知的である」という一見矛盾する魅力を体現しています。耳当たりの良さだけでなく、歌詞や音作りの細部に目を向けると、新たな発見が続くアーティストです。ポップの快楽と知的好奇心を同時に満たしてくれる体系的なディスコグラフィーを、ぜひレコード棚に加えてみてください。
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