Split EnzをLPで聴く価値と変遷を辿る完全ガイド|アルバム別の聴き方と盤選びのコツ

はじめに — Split Enz を「レコードで」聴く価値

ニュージーランド出身のSplit Enzは、70年代の実験的アート・ロックから80年代の洗練されたポップ/ニューウェーブまでを横断したバンドです。独特のビジュアルとドラマティックなアレンジ、Tim Finn と後に加入する Neil Finn を中心とした強力なソングライティングが魅力。LPというアナログのフォーマットで聴くと、楽曲の細部や時代ごとの音作りの変化がより鮮明に感じられ、彼らの過渡期(アート性 → ポップ性)を追体験するには最適です。ここでは「必聴」と言えるおすすめレコードを選び、その聴きどころや盤選びのヒントを深掘りします。

Mental Notes(1975) — 初期の演劇的/実験的サウンドを味わう

バンドの初期作品で、プログレッシブかつ演劇的なアレンジが目立ちます。Tim Finn と Phil Judd のアート志向が結実した楽曲群は、楽器編成の奇抜さやコーラス、変拍子の使い方など、当時の英語圏ロックとは一線を画します。

  • 聴きどころ:陰影の強いアレンジ、複雑な曲展開、ドラマ性の高いボーカル表現。
  • 代表曲(アルバム収録曲の中から注目):初期の名曲群は一枚でバンドの根幹を確認できる。
  • 盤の選び方:初期プレスはジャケットアートも魅力。リマスター盤やCDでの音圧調整は時に原音の色合いを変えるので、アナログ初版を探す価値あり。

Second Thoughts(1976) — 早期作の別アプローチ/再録版

初期楽曲の再録・再編成を含む作品で、バンドがスタジオ表現を試行錯誤していく過程が見えます。Second Thoughts は初期の楽曲を異なるアレンジで聴けるため、Mental Notes と並べて聴くと興味深い対比が得られます。

  • 聴きどころ:アレンジの差異、録音の質感の違いからわかるバンドの進化。
  • 盤の選び方:オリジナルの英/NZプレスと、その後の再発を比較すると音の性質がはっきり分かります。

Dizrythmia(1977) — 過渡期のエッジを捉える

メンバー編成や作風が変化し始めた時期の作品。よりコンパクトな曲構成が増え、荒削りながらも強い個性を放つナンバーが並びます。アート寄りからポップへ移行する“つなぎ”として重要です。

  • 聴きどころ:初期の実験精神とポップ・センスのせめぎ合い。
  • 盤の選び方:当時のオリジナルLPは音のエッジが残ることが多く、ライブ気分で聴きたい人に向きます。

Frenzy(1979) — よりダイレクトなロック性

音楽性がさらに整理され、シンプルでエネルギッシュな楽曲が目立つようになります。ステージ表現やシングル志向が強まり、後の商業的成功へとつながる布石が見えるアルバムです。

  • 聴きどころ:直截的なギター・リフやポップなフック、ステージ向けのダイナミズム。
  • 盤の選び方:この時期のオリジナル盤は演奏の生々しさが楽しめるため、ライヴ感を味わいたければアナログがおすすめ。

True Colours(1980) — ブレイクスルー作(必聴)

Split Enzの商業的ブレイクスルーとなったアルバム。Neil Finnのソングライティングが台頭し、ポップで洗練されたサウンドが前面に出ます。シングル「I Got You」は世界的なヒットとなり、バンドの“顔”がここで大きく変わりました。

  • 聴きどころ:強力なメロディと緻密なポップ・アレンジ、音像の明快さ。
  • 代表曲:I Got You(バンド史上最大のヒット)。
  • 盤の選び方:オリジナル・アナログは温かみのある中低域が魅力。リマスターは高域がクリアになり聞きやすくなる一方で、当時の空気感が薄れる場合もあるので好みで選ぶと良い。

Waiata / Corroboree(1981) — ポップ性の深化と多様性

True Coloursの成功を受け、より洗練されたポップ/ニューウェーブ感が進行した作品。アレンジの幅も広がり、シングル志向とアルバムとしての作り込みが両立しています。

  • 聴きどころ:メロディの充実、スタジオ表現の多彩さ、曲ごとに異なる色合い。
  • 盤の選び方:海外盤(タイトル表記が異なる場合あり)と国内初版ジャケットの違いに注目するとコレクションとしても面白いです。

Time and Tide(1982) — バンド成熟期の到達点

80年代初頭の制作技術やサウンドが反映された作品で、バンドの成熟を感じさせます。メンバー間のバランスが整い、楽曲のクオリティも安定しています。

  • 聴きどころ:洗練されたアンサンブル、落ち着いた曲構成、時代を感じさせるプロダクション。
  • 盤の選び方:CDやデジタルでのリマスターも聴きやすいですが、当時のアナログ・マスターで聴くと独特の温度感が味わえます。

See Ya 'Round(1984) — 解散前の総括的作品

活動の一段落を示す作品で、各メンバーの個性が色濃く反映された楽曲が並びます。Split Enzの一連の流れを締めくくる意味で興味深いアルバムです。

  • 聴きどころ:メンバー別の個性、解散前の落ち着きと余韻。
  • 盤の選び方:コレクター的には最終期のプレスや特典付属の盤を探す価値があります。

おすすめの聴き方・順序(アルバムでバンドの変遷を追う)

  • 1. Mental Notes → Second Thoughts:初期の実験性を比較。
  • 2. Dizrythmia → Frenzy:アート性からロック、ポップへの過程を確認。
  • 3. True Colours → Waiata → Time and Tide:商業的成功とサウンドの洗練を体感。
  • 4. See Ya 'Round:締めとして余韻を味わう。

この順序で聴くと、メンバー交代や楽曲作風の変化、録音技術の進化が時系列に感じられ、Split Enzの「物語」を音で追うことができます。

盤選びの実用アドバイス(音質とコレクション性のバランス)

  • オリジナル・プレス(特にNZ/UK初版)は独特の空気感が魅力。コレクター価値も高い。
  • リマスター/再発は音がクリアで扱いやすいが、原盤の温度感や定位感が変わることがある。
  • ジャケットやインナー歌詞カードの違い(輸入盤の表記差など)にも注目するとコレクションの楽しさが増す。
  • アルバム毎の制作意図や曲順の美しさを味わいたいならLPでのアルバム一気聴きがおすすめ。

まとめ

Split Enzは、アート志向からポップ志向へと変貌する過程が明確に音に表れている稀有なバンドです。LPで追うとその変化が視覚的(ジャケット)にも聴覚的にも立体的に体験できます。本稿で挙げたアルバムは、それぞれ時代の特徴とバンドの側面を示す代表例です。初めてならTrue Coloursから入るのが取り付きやすく、より深く掘るならMental Notes〜Second Thoughtsの初期二作、成熟期ならTime and Tide をおすすめします。

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参考文献