This Heat 入門ガイド:デビュー作からDeceitまでの聴き方とおすすめレコード/購入ポイント

イントロダクション

イギリスの実験ロック/ポストパンク・バンド This Heat(チャールズ・バレン=ブレン、チャールズ・ヘイワード、ガレス・ウィリアムズ)は、1970年代末から80年代初頭にかけて、録音技法やコラージュ的な構成、政治的な視座を持ち込んだ独自の音世界で強い影響を残しました。本コラムでは“これから聴く人”や“レコードで揃えたい人”のために、入門〜深堀り向けのおすすめレコードを中心に、各作品の聴きどころや背景、購入時の選び方のポイントを解説します。

This Heat を理解するための基本コンセプト

  • 録音技法とコラージュ:テープループやフィールド録音、編集での“切り貼り”が音楽的装置として常に用いられています。

  • 長短曲の併存:叙事的に展開する長尺の組曲的トラックと、即興性やノイズ志向の短い断片が混在します。

  • 政治性と不安の表現:冷戦期や社会不安を反映した歌詞/ムードが特に2作目以降に強く出ています。

必携レコード(おすすめ)

This Heat(セルフタイトル) — 入門の第一歩

概要:1979年リリースのデビュー作。スタジオでの実験精神が最も濃く出た作品で、テープ操作、ノイズ、ジャム的即興が同居します。ロックの枠を超えてサウンド操作そのものを楽曲化している点が特徴。

  • 聴きどころ:曲間の編集、ループの変化、突発的なノイズや静寂の使い方。バンドの“実験性”を丸ごと体験できる作品です。

  • 誰に向くか:従来のポップ/ロック構造に飽きたリスナー、実験音楽や現代音楽の影響を感じたい人。

  • 購入のヒント:オリジナル盤はコレクターズ・アイテムですが、リマスター再発やボックスセット収録盤で音質・解説が充実していることが多く、まずはそうした再発で聴くのが現実的です。

Deceit — バンドの到達点(名盤)

概要:1981年リリースのセカンドにして代表作。実験的手法をさらに洗練させ、政治的・社会的主題(戦争、プロパガンダ、不安)をより明確に描き出したアルバムです。メロディや構成が強まり、作品としての統一感・完成度が高いのが特徴。

  • 聴きどころ:長尺曲の構築美と緊張感、抒情的なフレーズと不穏な間(ま)の取り方、政治的メッセージの凝縮された表現。

  • 誰に向くか:ポストパンク/アヴァンギャルドの接点を探るリスナー、コンセプトアルバム的体験を好む人。

  • 購入のヒント:このアルバムは批評的評価も高く、再発も複数あります。ライナーノーツや未発表音源の有無で盤を選ぶと良いでしょう。

コンピレーション/ライブ類(深堀り向け)

概要:シングル曲、アウトテイク、ラジオ・セッション、ライブ録音などをまとめたリリースは、バンドの制作過程や即興性を知るうえで非常に有益です。スタジオアルバムだけでは見えない“実験の現場”が感じられます。

  • 聴きどころ:シングル曲の別ミックス、セッションの未編集パート、ライブでの即興的展開。アルバムとは違う生々しさや自由度を楽しめます。

  • 誰に向くか:コアなファン、音楽制作や編集技巧に興味がある人。

代表曲・注目トラック(入門ガイド)

代表曲は作品ごとに性格が異なりますが、下記のようなトラックはThis Heatの多面性を示すものとしてよく挙げられます。

  • 初期の実験性を示す短いパーツやループ・作品群 — テープ操作やサンプル的感覚を強く感じさせます。

  • デビュー〜中期のポストパンク的トラック — ノイズとビートが同居し、緊張感のある構成が印象的です。

  • 「Deceit」に代表される長尺の叙事性のある曲 — 徐々にビルドアップし、政治的モチーフや不安感を音に変換します。

音楽的背景と影響を受けた/与えたもの

背景:クラシックの現代音楽、コンクレート音楽、初期アンビエントやアヴァンポップの要素と、当時のパンク/ポストパンク運動のエネルギーが混ざり合っています。後続の実験バンドやエレクトロニカ系、ポストロック、ノイズ/アンビエントのシーンに大きな影響を与えました。

購入・選び方のポイント(盤そのもののメンテナンス以外)

  • オリジナル盤 vs 再発:オリジナル盤はコレクション価値が高い一方、近年の再発はマスターやライナーノーツが整っている場合が多く“音と情報”の面で実用的です。

  • ボックスセットの有無:包括的なボックスセット(スタジオ2作+コンピレーションやセッション音源をまとめたもの)が出ている場合、解説や未発表音源を一度に楽しめるため入門〜深堀りまで広く対応します。

  • 盤のバリエーション:シングルやEPの別テイク、ラジオセッション等が収録されている盤は“違う顔”のThis Heatに触れられるのでおすすめです。

  • 音質重視なら:リマスターやアナログ寄りのカッティングを謳う再発をチェック。リリース情報やレビューで使用ソース(オリジナルマスターか、テープのリストアが行われているか)を確認すると良いでしょう。

聴き方の提案(初めてのためのガイド)

  • まずは代表的なスタジオ盤(デビュー→Deceit)を順に聴く。十全に理解するには数回の反復が有効です。

  • 曲ごとに分けて聴くというより、アルバムを通して“流れ”を味わうとThis Heatの編集/構成感覚が見えてきます。

  • 慌てずに部分的なノイズや間(ま)にも耳を向ける。静寂や細部の処理が重要な意味を持つことが多いです。

コレクションとしての価値観

This Heatのレコードは音楽史的にも評価が高く、コレクションとしての価値も上がっています。作品自体の希少性に加え、評論的再評価により再発やボックスセットが出ることが多く、初心者はまず再発で内容を確認してからオリジナル盤を探すのが現実的で賢いアプローチです。

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参考文献