The Soulful Strings:シカゴ発の都会的ソウル・インストゥルメンタルとリチャード・エヴァンスの編曲術

プロフィール — The Soulful Stringsとは

The Soulful Strings(ザ・ソウルフル・ストリングス)は、1960年代後半にシカゴを拠点に活動したインストゥルメンタル・ユニット/スタジオ・プロジェクトです。リード・アレンジャーおよびプロデューサーであるリチャード・エヴァンス(Richard Evans)を中心に、ストリングス(ヴァイオリン等)を前面に据えつつ、フルート、ヴィブラフォン、ギター、土台となるリズム・セクションを組み合わせた“オーケストラ的”な編成でソウル/ジャズを再解釈したサウンドが特徴です。

結成と活動の背景

  • 結成背景:シカゴ・ブルース/ソウルのレーベルであるCadet(Chessの姉妹レーベル)の元で、リチャード・エヴァンスが企画・編曲を手がける形で制作が始まりました。スタジオ・ミュージシャンを起用したプロジェクト型のグループで、固定のメンバーというよりはその都度集められるプレイヤー群によって音が作られました。
  • 時代性:1960年代中〜後期、ロック/ポップとブラック・ミュージックの垣根が揺らぎ、カヴァー文化やオーケストレーションを取り入れた実験が盛んだった時代背景の下で、彼らのサウンドは“都会的でモダンなソウル・インストゥルメンタル”として注目を集めました。

音楽性と編曲の特徴

  • ストリングスを中心に据えたアンサンブル:通常のジャズ弦楽とは異なり、ソウル/R&Bのグルーヴを支えるために弦楽器をリズムやメロディの一部として機能させる編曲が多く、甘くもダイナミックな“歌う弦”が大きな魅力です。
  • 多様な音色のミックス:フルートやヴィブラフォン、エレクトリック・ギター(時にワウやエフェクトを効かせる)、ホーン、しっかりとしたリズム・セクションを組み合わせ、オーケストラ的な豪華さとアンサンブルの柔軟さを共存させます。
  • ポップ/ロック曲の再解釈:当時のヒット曲(ロック、ポップ、ソウル)を取り上げ、ジャズ的・映画音楽的な視点から再構築することで、原曲のキャッチーさを残しつつ新たなテクスチャーを付与します。
  • サイケデリック〜シネマティックな香り:1960年代後半の音響実験やサウンド・デザインの影響を受け、時にサイケ風の色合い、時に映画音楽のようなスケール感が現れます。

代表曲・名盤(聴きどころ)

代表作として最も知られているのは1966年リリースのアルバム『Paint It Black』のタイトル・トラック(ローリング・ストーンズのカヴァー)です。この作品は、原曲のダークな表情を保持しつつ、ストリングスとヴィブラフォンやフルートのレイヤーで映画的かつ都会的な解釈を加え、彼らのサウンド・イメージを決定づけました。

その他にもCadet/Chess周辺から発表されたアルバム群には、当時のポップ・ソウルの名曲を独自に編曲したトラックが多数収録されています。詳しいディスコグラフィーや各アルバムのトラックリストは参考リンク(下記)を参照してください。

魅力の深掘り—何が聴き手を惹きつけるか

  • 普遍的な“歌心”と洗練されたアレンジの両立:ボーカルが入らないインストでも、弦楽器や木管のフレーズがまるで歌っているかのようにメロディを歌い上げ、聴き手の感情に直接訴えかけます。
  • ジャンルをまたぐ親和性:ソウル、ジャズ、映画音楽、そして当時のポップ/ロックを横断するため、幅広い音楽ファンが入りやすい懐の深さがあります。BGM的に聴いても楽しめ、細部に耳を傾ければ編曲の妙を発見できます。
  • スタジオ・サウンドの魅力:シカゴの熟練セッション・ミュージシャンと優れたプロダクションによるクオリティの高さ。アナログ期特有の温かみと空間表現は、現在でも根強い人気の理由です。
  • 現代との接点(サンプリング/リイシュー文化):近年のクレート・ディギングやサンプリング文化の中で再評価され、ヒップホップのプロデューサーやライブラリー系リスナーからの注目が高まっています。

影響とレガシー

  • 同時代のインスト・プロジェクトやアレンジ志向のアーティストに影響を与えたほか、リスナーやコレクターの間で“都会的なインスト・ソウル”の代表的存在として認知されています。
  • リチャード・エヴァンス自身の活動(プロデュース、編曲、ソロ作など)を通じてシカゴの音楽シーンに影響を与え、彼の作風は以後のソウルフルで映画的なアレンジ手法に少なからぬ足跡を残しました。
  • 近年は再発/コンピレーションにより新しい世代に届いており、映画やCM、サンプルの素材としても活用される例が増えています。

聴きどころとおすすめの聴き方

  • 初めて聴くなら:まずは『Paint It Black』(タイトル曲)を一聴。オリジナルの持つメランコリーと彼らの編曲による色づけの違いが分かりやすいです。
  • 音のディテールを楽しむ:ヘッドフォンで弦楽器のマイク配置やヴィブラフォン、フルートの定位を追ってみると、アレンジの層構造が明確になります。
  • 編曲に注目する聴き方:原曲と比較してどのフレーズを強調し、どの要素を削ぎ落としているかを追うと、編曲者リチャード・エヴァンスの手法が見えてきます。
  • プレイリスト作り:同時代のインスト・ソウルやボサノヴァ〜モダンジャズのインスト曲と組み合わせると、部屋の雰囲気作りに最適です。

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参考文献