The Incredible String Band (ISB) の名盤・特徴・影響を解説– サイケデリック・フォークの境界を拓く音楽世界
イントロダクション — 不思議で多彩な音楽世界
The Incredible String Band(以下ISB)は、1960年代後半に英国で生まれたサイケデリック・フォークの代名詞的グループです。民謡的な素朴さと世界各地の民族音楽的要素、詩的で神秘的な歌詞、そして芸術的な実験性を兼ね備えた独自のサウンドで、当時のポップ/ロック/フォークの風景に新しい地平を切り開きました。本稿では彼らのプロフィール、音楽的特徴、名盤と代表曲、ライブ表現や影響といったポイントを深掘りして解説します。
簡単なプロフィールと歴史
- 結成と初期:ISBは1966年にスコットランド(エジンバラ)を拠点に結成されました。初期にはClive Palmer、Robin Williamson、Mike Heronらが中心でしたが、Cliveは早期に離脱し、最終的にはRobin WilliamsonとMike Heronの双頭体制がバンドの中核となりました。
- 活動期:1960年代後半から1970年代初頭にかけて最盛期を迎えます。1967年の『The 5000 Spirits or the Layers of the Onion』、1968年の傑作『The Hangman's Beautiful Daughter』などで国際的な評価を得ました。
- メンバーの広がり:後期にはRose Simpson、Licorice McKechnieら女性メンバーや多彩なゲストが参加し、コーラスや追加楽器で音像を豊かにしました。
- その後:70年代には音楽傾向の変化やメンバーの脱退もあり、活動形態は変化しましたが、その独創性は後年のフォーク再評価や“freak-folk / neo-folk”ムーブメントにも影響を与え続けています。
主要メンバー(概略)
- Robin Williamson — 多数の民族楽器(フィドル、ハープ、リコーダーなど)を操り、詩的で神秘的な楽曲を提供することが多かった。
- Mike Heron — ギター/ボーカルを中心に、よりソングライター的な曲を多く持ち込んだ。長尺で叙事的な楽曲も作る。
- Licorice McKechnie、Rose Simpsonほか — コーラス、パフォーマンス、追加楽器でグループの音像/舞台表現を拡張。
音楽的特徴と魅力の核
ISBの音楽は一言で言えば「境界を横断するフォーク」です。以下の要素が彼らの独自性を作っています。
- 多彩な民族楽器の導入:ギターやマンドリンに加え、シタール、ウード、ガンバ、ドゥルシマーや各種ハープなど、ケルト/中東/アフリカ/北米民謡の楽器を自在に取り入れ、曲ごとに異なる音色世界を作ります。
- 歌詞の詩性と神秘主義:自然、錬金術、民話、ユーモアとエロスが混ざり合う歌詞で、聴き手を寓話的な旅へ誘います。しばしば抽象的で象徴に富み、繰り返し聴くほどに新たな意味が開けます。
- 編曲の実験性:変拍子やモーダルな旋律、即興的なセクション、長尺曲の構成(例:"A Very Cellular Song" のような大曲)など、ポップの枠に収まらない挑戦を続けました。
- 温度感の幅:牧歌的で親密な小品から、サイケデリックで遠近感のある音響、劇的で儀式的な曲まで、その振幅の大きさが魅力です。
- 舞台とパフォーマンス:衣装や舞台演出、詩の朗読、即興を交えたセットで観客を取り込み、単なる「演奏」以上の経験を作りました。
代表作と聴きどころ(名盤の紹介)
- The Incredible String Band(1966)
デビュー作。フォークのルーツに根ざしつつ、既に多彩な音色の萌芽が見える。初期ISBの素朴さと手作り感が味わえる作品。
- The 5000 Spirits or the Layers of the Onion(1967)
世界観の広がりを示した重要作。民謡的アプローチとサイケデリックな感覚が融合し、ISBサウンドの基盤を固めました。
- The Hangman's Beautiful Daughter(1968)
多くのリスナーや批評家に傑作と見なされるアルバム。長尺曲やコーラスを取り入れたスケール感のある作品で、"A Very Cellular Song"(生命や愛についての大曲)などを収録。ISBの創造性が最も結実した一枚と評されます。
- Wee Tam and the Big Huge(1968)
2枚組でリリースされたこともあるこの作品は、実験的かつ情緒的な側面をさらに追求。民族的要素と私的な詩情が同居します。
- その他:
1970年前後のアルバム群も個性豊かで、ソロ活動や変遷を経た後期作品にも独自の味わいが残ります。初期~中期の作品群をまずは押さえるのがおすすめです。
代表曲(例)
- "A Very Cellular Song" — 緻密な構成と長さを持つ叙事詩的作品。ISBの実験性と詩性が凝縮されています。
- "Painting Box" — メロディアスでポップ寄りな側面も見せる曲(シングル的な魅力)。
- "The Minotaur's Song"、"The Hedgehog's Song" など — 民話的、寓話的世界を描く短中編の佳曲。いずれも歌詞世界と音色の面白さが光ります。
ライブとパフォーマンスの特徴
ISBのライブは、アルバム以上に“瞬間性”や“儀式性”が強く出る場でした。即興で楽器を交換したり、詩の朗読やジャムが入ったりすることで、毎回違う空気を作ります。衣装や舞台演出も含めて、観客にとっては単なる音楽鑑賞を超えた経験となったのです。
影響とレガシー
ISBは当時の商業ポップとは一線を画する美意識と実験性を示し、後年の“freak-folk”やニューフォーク系のアーティスト(2000年代以降のネオ・フォーク/サイケデリック・フォークの潮流)に影響を与えました。具体的には、伝統音楽の再解釈や多楽器主義、詩的な歌詞世界を志向するアーティストたちがISBの仕事を参照点としています。また、フォークやワールド・ミュージックの境界を拡げた点も重要です。
聴き方と楽しみ方(ガイド)
- 初めてなら『The Hangman's Beautiful Daughter』を起点に、そこから前後のアルバムへ遡ると彼らの進化がよく理解できます。
- 長尺曲は通して聴くことで構成美や物語性が見えてくるため、集中して一曲一曲を味わうのがおすすめです。
- 歌詞は直喩よりも象徴や寓話が多いので、解釈は柔軟に。何度も聴き返すことで、新たなフレーズが心に残ります。
- ライブ映像やライヴ音源に触れると、アルバムとは違う即興の妙やパフォーマンスが楽しめます。
魅力の総括 — なぜ今聴く価値があるのか
ISBの魅力は、単に“昔懐かしいフォーク”という枠を超え、時代を越えて響く「異文化間の対話」と「詩的想像力」の両立にあります。民俗音楽的な根っこを大切にしつつも、既成のジャンルにとらわれない自由な実験を行った点で、現代のリスナーにも新鮮な驚きを与えます。音楽的な探求心や、言葉と音が作る物語性を求める人には特に刺さるでしょう。
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参考文献
- The Incredible String Band — Wikipedia
- The Incredible String Band — AllMusic(Biography)
- The Incredible String Band — Encyclopaedia Britannica
- The Incredible String Band — Discogs(ディスコグラフィ)


