パウリーニョ・ダ・コスタ|ブラジル打楽器の色彩で世界を彩るセッション・ミュージシャンの軌跡
イントロダクション — ブラジルのリズムを世界へ
ポウリーニョ・ダ・コスタ(Paulinho da Costa)は、ブラジル出身のパーカッショニストとして世界的に活躍してきた「第一線のセッション・ミュージシャン」です。ジャズ、ポップス、R&B、ロック、映画音楽などジャンルを問わず数多くの録音に参加し、その多彩な音色と確かなグルーヴ感で数十年間にわたりプロの現場から厚い信頼を得てきました。本コラムでは彼のプロフィール、演奏スタイル、スタジオでの働き方、代表的な参加作と聴きどころ、そして彼の魅力の本質を深掘りします。
経歴・プロフィール(概観)
出身:ブラジル(リオ・デ・ジャネイロ)
生年:1948年(以降に活動のピークを迎え、1970〜80年代にロサンゼルスを拠点に活躍)
活動の特徴:ブラジルの伝統的打楽器から西アフリカ由来の打楽器、ラテン系のパーカッションまで幅広く演奏。レコーディング・セッションにおける「顔の見える色付け役」として世界中の名だたるアーティストに起用される。
楽器とサウンドの特徴
ポウリーニョは単に「手癖の良いコンガ奏者」ではありません。彼のレパートリーには次のような多様な打楽器が含まれ、各楽器を楽曲の文脈に合わせて細かく使い分けます。
パンデイロ、タンボリン、タンボリム:ブラジルのリズムの軽やかなアクセント。繊細な指使いと手の位置で高域の粒立ちを調整。
コンガ、ボンゴ:低域〜中域のグルーヴを支える。ハイハットやスネアと掛け合わせてドライヴ感を作る。
シェイカー、マラカス、スクレイパー類:空間を満たす揺らぎや推進力を与えるために絶妙なタイミングで用いる。
クイーカ、レコレコ(スクレーパー)などの民族楽器:曲に「ブラジルの色」を直接付与するための音色的なアクセント。
彼のサウンドの核は「タイミング(マイクロ・タイミング)の精度」と「ダイナミクスの幅」にあります。小さな音量の中でも存在感を残す技術、強いビートの中で混ざり合っても埋もれない音作りが特徴です。
スタジオでの役割とアプローチ
ポウリーニョが最も評価されるのは、「的確に色を足す」能力です。ドラマーやプロデューサーと連携して、楽曲の骨格を崩さずにリズムのニュアンスを豊かにします。スタジオワークのポイントを整理すると:
最初に楽曲のスケッチを聴き、どの周波数帯にパーカッションを置くかを決める(高域でキラリと光らせるか、中低域でグルーヴを支えるか)。
過剰にならないように「間」を生かす。余白を残して音がぶつからないよう配慮する。
ワンテイクの即興性も尊重しつつ、複数テイクから最適な瞬間を編集する柔軟さ。
ジャンルに合わせた音色選択(R&Bではタイトなシェイカー、ラテンでは生楽器のむらを活かす等)。
代表的な参加作(抜粋)とその聴きどころ
彼は膨大なセッションワークを行っているためここでは「比較的広く知られている」参加作を挙げ、その中で彼の演奏がどのように楽曲に貢献しているかを紹介します。
Michael Jackson — Off the Wall / Thriller(参加クレジットのある代表的ポップ作品):
ポップな楽曲の中で、ポウリーニョのパーカッションは曲のスイング感や空気感を強化します。イントロやブレイクの周辺、サビの裏でのグルーヴ作りを注意して聴くとよいでしょう。Quincy Jones 関連作品(プロデュース/アレンジ系):
プロデューサー中心の大編成ポップ/ジャズ・ファンクでは、細かな色付けとして頻繁に起用されています。タイトだが音楽的に豊かな「隙間の埋め方」が学べます。ジャズ/フュージョン系のレコーディング(George Benson 等の作品にも参加):
コンガやパーカッションでハーモニックな余韻を邪魔せず、ソロの呼吸を支える役割が光ります。
※参加作は非常に多数あるため、各曲での「聴きどころ」はイントロ、間奏、ブレイク、ヴォーカル裏での細かなパーカッションに注目すると発見が多いです。
ポウリーニョの魅力 — なぜ特別なのか
多様な音色の使い分け:一人で複数のパーカッションを駆使し、曲ごとに最適なテクスチャーを提供する能力。
ジャンルの垣根を超える適応力:ブラジル音楽の身体性を基盤にしつつ、ポップ/ジャズ/R&B に自然に溶け込む。
感覚的なタイミング:メトロノーム通りの正確さだけでなく、スイングやルーズさを音楽的に制御することで「生きたグルーヴ」を生む。
プロの現場での信頼感:プロデューサーやアーティストが「これが欲しい」と思ったときに即応できる引き出しの多さ。
聴き方のコツ(実践)
ヘッドホンで中高域を丁寧に聴く:シェイカーやタンボリン、パンデイロのニュアンスが見つけやすい。
スピーカーで低中域のバランスを確認:コンガやボンゴがグルーヴをどう支えているか分かる。
セクションごとにループして比較する:Aメロ、Bメロ、サビでの手の入れ方の違いに注目すると作曲的な役割が見えてくる。
まとめ — 世界の音楽を縁取る「色彩の達人」
ポウリーニョ・ダ・コスタは、単なる「良いリズムを刻む人」ではなく、楽曲の色調を決める「音の画家」です。彼の手にかかれば、同じドラム・パターンでもまったく異なる表情になります。プロの録音を聴くとき、ヴォーカルやドラムばかりに注目しがちですが、彼のようなパーカッショニストの微妙な選択が楽曲の雰囲気を決めていることを感じ取れると、聴取体験はより豊かになります。
エバープレイの中古レコード通販ショップ
エバープレイでは中古レコードのオンライン販売を行っております。
是非一度ご覧ください。

また、レコードの宅配買取も行っております。
ダンボールにレコードを詰めて宅配業者を待つだけで簡単にレコードが売れちゃいます。
是非ご利用ください。
https://everplay.jp/delivery


