ポリーニョ・ダ・コスタ:世界を彩るセッション・パーカッショニストの音色設計とレコーディング術
プロフィール:ポリーニョ・ダ・コスタとは
ポリーニョ・ダ・コスタ(Paulinho da Costa)は、ブラジル出身のパーカッショニストで、世界中のレコーディング/ライブで最も重宝されてきたセッション・プレイヤーの一人です。リオデジャネイロで生まれ(1948年生まれ)、幼少期からブラジルのリズムに親しみ、やがて豊富なパーカッション類の知識と卓越したグルーヴ感で、ボサノヴァやサンバの現場から国際的なポップ/ジャズのスタジオへと活動の場を広げていきました。
キャリアのハイライト
ブラジルでの基礎:幼少期からローカルのバンドや舞台で多様なブラジル打楽器を演奏。サンバやボサノヴァなどのリズムに根ざした感性を培う。
アメリカでのセッションワーク:1970年代以降、ロサンゼルスを拠点に多数のレコーディングに参加。ジャズ、ポップ、R&B、ロック、映画音楽などジャンルを横断する活躍で、世界のトップ・プロデューサーやアーティストから引っ張りだこになった。
ソロ/リーダー作:セッション活動と並行して、自身のソロアルバムやブラジル色の強い作品も発表し、演奏家としてだけでなく音楽性を表現するアーティストとしての顔も持つ。
演奏スタイルと魅力の深掘り
ポリーニョの魅力は単に「多彩な楽器を演奏できる」点に留まりません。以下の要素が彼の演奏を特別なものにしています。
音色(ティンバー)への徹底したこだわり:単一のリズムでも、使う楽器やスティック/ハンドの当て方、打つ位置で音色を細かく変え、曲の色味に合わせて最適な層を作り出します。
スペースの使い方(間の美学):埋め尽くすように叩くのではなく、必要なところで“そっと入れる”感覚。結果的に曲全体のグルーヴが引き立ちます。
ジャンル適応力:ブラジル伝統リズムのグルーヴをベースにしつつ、ジャズのスウィング感、ポップのシンプルさ、R&Bのスリル感などを自然に融合させる能力があるため、どんな編成にも溶け込みます。
サウンドデザインのセンス:単なるリズム補完ではなく、楽器の配置や音量差、アクセントで「フレーズの装飾」としての仕事をするため、同じ楽器でも曲ごとに役割が変わります。
膨大な楽器レパートリー:コンガ、ボンゴ、パンデイロ、ショーカー/シェイカー、タンボリン、クイーカ、サウンドスケープ的な小物(スクレイパーやベル系)まで、広い語彙を持っています。
レコーディングでの貢献とセッション術
セッションにおけるポリーニョの仕事ぶりは、多くのエンジニアやプロデューサーにとって理想的でした。その特徴と学べるポイントを挙げます。
プリプロダクションよりも「即興×的確さ」:譜面に頼らず、曲を聴いて瞬時に最適なパーカッションを選び、セッション内でアイデアを出して形にしていく力。
ダイナミクスのコントロール:アレンジの中での強弱を正確に読み取り、ボーカルやソロを潰さないライン作りをする。
音色選択とマイクへの配慮:小物系の音をどう前に出すか、どう奥へ入れるかを意識して演奏するため、エンジニアと意図が合いやすい。
アンサンブル志向:ドラマーやベーシストと密にリンクし、リズム・セクション全体のスイング感を増幅させる役割を果たす。
代表的な参加作(名盤・代表曲)
ポリーニョは非常に多くの名盤に参加しています。ここでは特に影響力の大きい、あるいは広く知られている例を挙げます(参加クレジットは作品によって異なるため詳細は参考文献でご確認ください)。
Michael Jackson — Thriller(マイケル・ジャクソンの代表作群): ポップ史に残る作品群での細かなパーカッションは、楽曲の質感を高めています。
Quincy Jones — 複数のプロジェクト(プロデューサー/アレンジャーとしてのクインシー作品): ジャズ/ポップを繋ぐサウンドでの重要なサポート。
George Benson — Breezin' など(ジャズ・フュージョン系): ギターを中心としたサウンドに溶け込む繊細なパーカッション。
その他:多数のR&B/ポップ/ロックの名盤に参加。幅広いアーティストとの共演歴が彼の多才さを証明しています。
現代のミュージシャンへの示唆
ポリーニョの仕事から学べることは多く、演奏者・プロデューサー双方に有益です。
「少ない音で最大の効果を出す」ことの重要性:音数を減らしてもティンバーとタイミングで曲を豊かにできる。
音色のアレンジ能力:同じリズムでも違う楽器で変化を付けることで曲のセクションを演出できる。
ジャンルをまたぐ柔軟性:基礎的なリズム感を持ちつつ、各ジャンルの「空気」を理解することでセッションの価値が高まる。
スタジオでのコミュニケーション:技術だけでなく、プロデューサー/エンジニアと意思疎通できることが重宝される。
まとめ
ポリーニョ・ダ・コスタは、単なる「優れた手数の多いパーカッショニスト」ではなく、音色設計、空間の使い方、アンサンブル感覚に優れた総合的なミュージシャンです。彼が参加した楽曲やアルバムを聴くと、パーカッションが曲全体にどれだけ大きな影響を与えるかがよく分かります。演奏者であればそのアプローチを分析し取り入れる価値があり、プロデューサーであれば「どの音を足す/引くか」で楽曲の質が変わることを学べます。
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