ハンク・モブレー徹底解説:名盤おすすめと聴き方・聴き順ガイド

はじめに:ハンク・モブレーとは

ハンク・モブレー(Hank Mobley、1930–1986)は、ハード・バップ期を代表するテナー・サクソフォニストの一人です。ソニー・ロリンズやジョン・コルトレーンとは異なる「円熟した旋律志向のフレーズ」と「軽やかなスイング感」を併せ持ち、ブルー・ノートを中心に数多くのリーダー作/サイドマン作を残しました。燃え立つような熱情よりも「歌うような語り口」で聴き手を引き込むスタイルが特徴で、モブレー作品はメロディ/アンサンブルの美しさと、ソロの構築力が光ります。

選考基準:なぜこれらのレコードを勧めるか

  • 演奏の完成度:モブレーの代表的なコンセプト(メロディ構築、モチーフの発展)が明確に表れていること。
  • 歴史的重要性:ハード・バップ期の典型例、またはモブレーのキャリア上の「到達点」を示す作品であること。
  • 録音の質・聴きどころ:アンサンブル/ソロの優れたバランスや、個々のトラックに強い印象が残ること。

おすすめレコード(詳細解説)

Soul Station(1960)

「ソウル・ステーション」はモブレーの代表作にして、多くのジャズ批評家・ファンが“彼の最高傑作”と評する1枚です。ブルー・ノート期の円熟が凝縮されており、楽曲の良さ、グループの相互作用、モブレーの語り口の完成度が極めて高い。

  • ポイント:メロディが強く印象に残る自作曲が並び、ソロは過剰な技巧に走らず「テーマを展開する」ことに徹している。
  • 代表曲(聴き所):「This I Dig of You」「Soul Station」など。これらはモブレーの作曲センスとバランス感覚をよく示す。
  • 音楽的特色:温かく丸みのあるトーン、緩急を付けたフレージング、リズム隊との緊密なスイング。
  • なぜ名盤か:モブレーの「歌うテナー」が最もストレートに伝わる作品で、ハード・バップの理想形とも言える。

Roll Call(1960)

精力的な息遣いとセクステットの躍動感を楽しめるアルバムです。硬質なハード・バップが前面に出ており、モブレーはグループを牽引しつつ、フレーズの組み立てに重点を置いたソロを展開します。

  • ポイント:テンポ感のある曲ではリズム隊との対話が冴え、バラードではモブレーの抒情性が際立つ。
  • 代表曲(聴き所):アルバムを通じてアンサンブルの切れ味と即興の構築力を堪能できる。
  • なぜ注目か:モブレーのリーダー像(コンポーザー/アレンジャー/即興家)が明確に出た時期の録音で、同時代のトランぺッターやピアニストとの相互作用が聴きどころ。

Workout(1961)

タイトルが示すように“演奏の運動量”が感じられるアルバム。モブレーのスウィング感とテクスチャーの幅が広がった時期の作品で、ソロの展開力・リズム感の巧みさがより明確になっています。

  • ポイント:アグレッシブなテンポ曲と落ち着いたナンバーの対比が効いており、アルバム全体の起伏が心地よい。
  • 代表曲(聴き所):アップテンポ・ナンバーでの応酬や、ミディアムでの主題展開に注目。
  • なぜ聴くべきか:モブレーの表現力が成熟期に入った証拠で、演奏の密度と緩急のセンスが光る。

No Room for Squares(1963)

実験的なアレンジや複雑なハーモニーを取り入れつつ、モブレーの本領である「メロディ主体の即興」がしっかりと保たれている作品です。バラエティに富んだ編成があり、聴き飽きない構成になっています。

  • ポイント:伝統的なハード・バップの枠組みを保ちつつ、よりモダンな響きや異なる作曲手法が試みられている。
  • 代表曲(聴き所):モブレーの作・編曲センスと、ソロでのテーマ処理の巧みさが際立つトラックが多い。
  • なぜ注目か:同時代のジャズ潮流を取り入れながらも“モブレーらしさ”を失わない柔軟性が魅力。

A Caddy for Daddy / The Turnaround(中期〜後期)

これらはモブレーの中期〜後期の仕事を代表する録音で、より伸びやかで落ち着いた演奏が増えます。トランペットやピアノの個性ある共演者との化学反応が生まれる作品が多く、アンサンブルの厚みや色彩感が楽しめます。

  • ポイント:個々のトラックで表情を変えるアレンジメント、モブレーの語り口の円熟が感じられる。
  • 代表曲(聴き所):ブルースやバラードでの深み、ミディアム・テンポの曲での緊張感の構築。
  • なぜ聞くか:若手時代の直球勝負的な魅力とは異なる、円熟した音楽家としての側面を味わえる。

初めての聴き方・聴きどころのガイド

  • 「メロディを追う」:モブレーはリフやモチーフを巧みに展開します。まずはテーマ(主題)を追い、ソロがどう発展していくかを意識して聴くと理解が深まります。
  • 「対話に注目」:モブレーのソロはリズム隊やトランぺット等との対話で育つことが多い。ベースやドラムのレスポンス、ピアノの和音付けに耳を傾けましょう。
  • 「録音時期を意識する」:60年代のブルー・ノート録音群は音質も良く、演奏の密度が高い。年代順に聴くとスタイルの変化がより分かりやすいです。
  • 「コンポジションに注目」:モブレーは優れた作曲家でもあります。各アルバムのオリジナル曲を追い、テーマの個性を味わってください。

おすすめの聴き順(入門〜深掘り)

  • Step 1:Soul Station — モブレーの“核”を最短で把握するならまずこれ。
  • Step 2:Roll Call / Workout — 表情の幅、アンサンブルの切れ味を体感。
  • Step 3:No Room for Squares / A Caddy for Daddy — 中期・後期の円熟を深掘り。
  • Step 4:サイドマン時代の録音(Art Blakey's Jazz Messengers等) — モブレーが他のリーダーとどう絡んだかを聴くと理解が深まります。

まとめ:モブレーの魅力をどう享受するか

ハンク・モブレーは、テクニックを誇示するよりも「物語を語る」サックス奏者でした。名旋律、確かな構築力、バンドとの緊密なインタープレイが彼の核です。まずは「Soul Station」を起点に、演奏の流れとテーマ展開を追い、そこから編年的に聴き進めると彼の変化と深みが見えてきます。

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参考文献